商法

商法ドリルNo.8[解答編]


【設問1】
次の➀~③の決議のうち,省略不可能なものはどれか。
➀株主総会決議
②取締役会決議
③監査役会決議
【解答】
省略不可能な決議は,③である。監査役会の職務(会社法390条2項各号)の性質上,構成員同士が実際に顔を合わせて情報交換・共有を行うべきなのであろう。
なお,②の取締役会決議については,省略自体は可能であるが,省略に必要な要件及び手続きについて予め定款で定めておく必要がある(会社法370条)。また,決議の省略につき同意の意思表示をすることのできる取締役は,当該決議事項について議決に加わることができるものに限る(同条括弧書)ことに注意。例えば,当該決議事項につき特別の利害関係をもつ取締役は,同意の意思表示ができないのである。
株主総会決議の省略に必要な要件及び手続きについては,会社法319条1項に規定されている。

【設問2】
次の➀~③の報告のうち,省略不可能なものはどれか。
➀取締役が,報告すべき事項を株主総会へ報告すること
取締役会設置会社における業務執行取締役が,取締役会に三か月に一回以上,自己の職務の状況を報告すること
③会計参与が,報告すべき事項を監査役会へ報告すること
【解答】
省略不可能な報告は,②である。業務執行取締役(代表取締役も)は,会社法363条2項に基づき,3か月に1回以上,自己の職務の執行の状況を取締役会に報告すべき義務を負う。当該取締役の職務執行の監督(会社法362条2項2号)を十全化させるためであろう。

【設問3】
次の➀の正誤及び②③について解答せよ。
➀業務執行取締役等は,定款の有無にかかわらず,株式会社と423条1項の責任について限定する契約を締結することができる。
支配人は,必要な手続きを経れば,株式会社と責任限定契約を締結することができるか。
③株式会社と責任限定契約を適法に締結した非業務執行取締役が,当該株式会社の業務執行取締役に就任した場合,当該契約はどうなるか。
【解答】
➀誤っている。定款による定めが必要である(会社法427条1項)。
②できる。支配人は,会社法427条1項における「業務執行取締役等」にあたる(会社法2条15号イ)。
③当該契約は,将来的に効力を失う(会社法427条2項)。
なお,本問で登場した「業務執行取締役」「非業務執行取締役」の区別も押さえておこう。会社法2条15号イや363条1項も参照。

【設問4】
取締役が,取締役会設置会社に対して訴えを提起する場合,当該会社を代表するのは誰か。なお,当該会社は非公開会社であり,会計参与や監査等委員会,指名委員会等は設置されていないものとする。
【解答】
代表するのは監査役である。本問の会社は,取締役会設置会社(非公開会社であり,会計参与や監査等委員会,指名委員会等は設置されていない)なので監査役が置かれている(会社法327条2項本文)。そのため,会社法386条1項1号後段によって,監査役が代表する。

【設問5】
次の記述の正誤を解答せよ。
株式会社の成立後,債権者は,株式会社の成立後であれば,いつでも,当該株式会社の書面をもって作成されている定款の書面の抄本の交付を無償で請求することができる。
【解答】
誤っている。会社法31条2項ただし書2号により,当該株式会社の定めた費用を支払う必要がある。

【設問6】
株式会社A(以下,「A社」という。)の取締役甲が,A社の事業と競合する取引を開始したとする。この場合にA社は,甲に対し会社法上どのような措置をとることができるか。
【解答】
➀取引の差止請求
②損害賠償請求
⇒➀は,②に比べると忘れやすいかもしれないが,甲の不穏な動きを知ったA社としては,最初にとりたい措置である。根拠は,株式会社と取締役の関係を規律する委任契約(会社法330条,民法643条)であろう。会社は,取締役に対し負担する委任契約の内容としての善管注意義務(民法644条)を根拠として,同義務を履行させるべく会社の利益と衝突する行為を止めるよう請求できるといえる。

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