行政法

行政法ドリルNo.14[解答編]


【設問➀】
Track1.「鉄板焼きのrock ‘n’ roll」
次の文章は,調理師をしながら法律の勉強に勤しむ花子さんとその相談を受けているベテラン講師S東先生との会話である。次のアからウまでの下線部の各記述の正誤を解答せよ。
花子さん「私は,調理師法に基づく調理師の免許(以下「免許」という。)をM都知事から受けて,「あいつの鉄板焼き」というレストランでシェフをしていますが,そのレストランで生じた食中毒事故を理由に,M都知事によって免許を取り消されそうになって,困っています。数日前に,知事からこの件についての書類が来ていますので,見てください。」
S東先生 「これは,行政手続法(以下「法」という。)による聴聞の通知ですね。免許の取消しを阻止するため,聴聞でどのような主張をすべきか検討しましょう。その前提として情報収集が必要ですが,いい方法があります。花子さんの免許の取消しについて,法による聴聞の通知があったわけですから,(ア)花子さんには,法に基づく文書等の閲覧の権利が生じており,M都知事に対し, 本件に関する調査結果などの資料の閲覧を求めることができます。」 花子さん「そのようなことができるとは知りませんでした。ところで,聴聞に出ていくことができるのは私だけでしょうか。」
S東先生 「(イ)法によれば,不利益処分の名宛人となるべき者やその代理人は,聴聞の期日に出頭して意見を述べたりすることができますが,それ以外の利害関係者が聴聞手続に参加することは認められていません。
花子さん 「分かりました。それから,少し先の話になりますが,聴聞でいろいろ意見を述べても,結局免許取消処分がされてしまった場合,どうしたらいいでしょうか。」
S東先生「調理師法は,不服申立前置主義を採っていませんので,免許取消処分に対して直ちに訴訟を起こすことができます。そのほか,行政不服審査法により,M都知事への異議申立てをすることも考えられるのですが,(ウ)法は,聴聞を経てされた処分については,事前手続の保障が手厚いことから,不服申立てを制限していますので,甲さんが異議申立てをすることはできません。ところで「『あいつの鉄板焼き』の看板メニューや特徴は何ですか。」
花子さん「看板メニューは和牛の鉄板焼きですね。特徴は,私共シェフがお客様の目の前で肉や野菜を激しくじゅらじゅら焼いて,焼き立てを召し上がっていただける点です。迫力満点です。」
S東先生「そうですか。この問題がひと段落したら,ぜひ食べに行ってみたいですね。」
花子さん「ぜひいらしてください。お待ちしております。」

【解答】
➀(ア)について
S東先生「では早速ですね,やって行きたいと思います。まず(ア),行きましょうか。」
花子さん「(ア)は正しいですね。行政手続法18条に規定されています。免許の取消しは,そのまんま許認可等を取消す不利益処分に該当しますから,被処分者に対する意見陳述の機会すなわち「聴聞」手続の機会を設けなければなりません(行政手続法13条1項1号イ)。その意見陳述のための資料収集として,(ア)に書かれているような権利が認められるべきだというのは見やすいところでしょう。」
S東先生「そうですね。行政手続法18条を押さえておく必要がありますが,仮にこの規定を知らなかったとしても,(ア)に書かれていることに違和感を覚えることはないでしょうから,正しいと判断することは容易でしょう。では,場面を変えて質問致します。先程指摘された意見陳述の機会として,聴聞以外に何がありますか。」
花子さん「弁明の機会の付与です。行政手続法13条1項2号,29条~31条です。」
S東先生「聴聞手続と比較すると,どのような手続きですか。簡潔に表現してください。」
花子さん「聴聞手続は口頭による意見陳述が原則ですが,弁明の場合は書面主義が原則です(行政手続法29条1項)。つまり弁明の機会は聴聞手続に比べて略式的な意見陳述と表現できます。」
S東先生「そうすると,弁明の機会の場合,先の文書閲覧請求権は認められるのでしょうか。」
花子さん「認められません。行政手続法18条1項は,あくまで聴聞手続の場合のみを予定しています。また,弁明の機会は聴聞手続に比べて略式的な手続きですから,文書閲覧請求権まで認めていないのでしょう。」
S東先生「そうでしょうね。弁明の機会において文書閲覧請求権が認められていないことについては,行政手続法18条1項の適用範囲を確認することが必要です。さすがに条文の知識がないまま『考え』て,『弁明の場合には文書閲覧請求権がないはずだ』などと確信をもって判断することは難しいでしょう。『考えれば分かる』というのは一面では素晴らしいかも知れませんが,反面『考える』という甘美な(?)言葉に囚われて必要な知識を習得することを疎かにしてはいけません。試験において求められる『考える』とは,『条文や基本概念等の操作』であることを忘れないで頂きたいと思います。」
②(イ)について
S東先生「では,次(イ)行きましょうか・・。(イ)はどうですか。」
花子さん「誤っています。」
S東先生「そうですね。具体的にはどこが誤っていますか。誤っている箇所を指摘し,その箇所を正しく直して下さい。」
花子さん「誤っているのは『それ以外の利害関係者が聴聞手続に参加することは認められていません。』という箇所です。正しく直すと『それ以外の利害関係者も聴聞手続に参加することが認められています。』となります。」
S東先生「その通りです。では,別の角度から質問致します。『それ以外の利害関係者』に対して聴聞手続を行う旨通知する必要はありますか。」
花子さん「『それ以外の利害関係者』に対して通知することは必要ではありません。」
S東先生「正解です。『それ以外の利害関係者』については,被処分者と異なり聴聞の通知は不要です。行政手続法15条1項は,聴聞の通知を「不利益処分の名あて人となるべき者」と規定しています。他方,同法17条1項は「当事者以外の~当該不利益処分につき利害関係を有すると認められる者」が聴聞に参加できる旨規定しています。
当該不利益処分の名宛人と異なり,『それ以外の利害関係人』を特定することは現実的には困難ないしは不可能です。そのため,彼らに対して聴聞手続の『通知』まで行う必要はありません。もっとも,『それ以外の利害関係者』は,当該不利益処分によって間接的に不利益を受けることから,参加することは可能であるとされているのでしょう。以上のように,『それ以外の利害関係者』については,「聴聞の通知の要否」と「聴聞への参加の可否」をしっかり峻別して押さえておくことが大切ですね。また『不利益処分の名あて人』と『それ以外の利害関係人』が,それぞれ聴聞手続に際してできることも押さえておくべきでしょうね。更に『それ以外の利害関係人』に該当する者とは具体的にどういう者を指すのかまで押さえておきたいところです。」
花子さん「分かりました。」
S東先生「では(ウ)に行きましょう。(ウ)はいかがですか。」
花子さん「正しいです。行政手続法27条です。」
S東先生「そうですね。では(ウ)に書かれているような制限が置かれている理由はどこにありますか。」
花子さん「聴聞を行う理由は,当事者等の意見を聴取等の慎重な手続きを経ることを通じて当該不利益処分が本当に正しかったのかどうか,処分を行った行政庁に処分について再考あるいは場合によっては是正を促す機会を設けるためです。行政手続法26条が規定するように,行政庁は不利益処分の決定をするに当たり主宰者の意見を十分に参酌しなければならないわけですから,聴聞手続における当事者の意見陳述は行政庁の判断に影響を及ぼす者でしょう。そうすると,聴聞等の手続を経たのであれば,当該処分について不服申立てとしての審査請求を行う必要はないことになります。」
S東先生「その通りです。行政手続における聴聞は,行政不服審査の前倒し的な機能ももっているともいえそうですね。おそらく記述(ウ)で試されているのは,行政手続法26条及び27条をその意義(すなわち当事者の言い分を聞いて『とりあえずあなたの意見は聞きました。』で終わらせてはならない。意見を酌んだ最終判断が求められる。)まで含めて習得していることなのでしょう。条文学習の重要性を教えてくれる問題とも言えますね。」
花子さん「でも,そんな条文知らないよ・・,と思ってしまうこともあります。」
S東先生「もちろん,条文の全てを正確に押さえるのは不可能ですが,条文から議論を始め条文に立ち返る姿勢を忘れてはいけません。細かい条文まで押さえることはできないのはやむを得ないにしても,だからといって条文(判例・定義等)の習得を疎かにしていいことにはなりません。先程も言いましたが,本試験問題で求められている力とは条文(判例・定義等)の習得力及び習得した条文(判例・定義等)を頭の中で瞬時に操作して的確な解答を導くことができる力であるからです。実践力を重視にするならば,『習得した知識を場面に応じて操作できる力あるいは複数の角度から問われても対応できる力を身に付ける』こそ第一にすべきでしょう。」

【設問②】
Track.2 「不利益処分の様相」
M都知事は,介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者Bについて,介護報酬の不正請求が行われているとの内部通報を受けたため,調査の上,不利益処分をすることにした。次のアからウまでの各記述について,行政手続法に照らし,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。
ア.M都知事がBに対し,指定の効力の一部停止処分をしようとする場合には,原則として聴聞手続を執らなければならない。
イ.Bに対する不利益処分の発動に強い関心を持っているライバル事業者Cは,聴聞手続において,M都知事に対し,当該処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
ウ.Bからサービスを受けている高齢者Dは,サービスを受けられなくなると日常生活に困難を来すことから,Bに対する不利益処分の発動に反対するため,主宰者の許可を得て聴聞手続に参加し,口頭で意見を述べることができる。

【解答】
➀アについて
S東先生「本問も引き続き花子さんに解答していただきましょう。『あいつの鉄板焼き』はその後に行ければと思います。早速ですね,今日の本題に入りたいと思います。まず,アから行きましょうか。」
花子さん「アは誤っています。」
S東先生「そうですね。具体的にはどこが誤っていますか。理由と共に解答してください。」
花子さん「『原則として聴聞手続を執らなければならない』の箇所が誤っています。『一部停止』ですから,聴聞手続が必要とされる不利益処分としての『許認可等を取り消す』(行政手続法13条1項1号イ)や『名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する』(同ロ)に該当しません。」
S東先生「その通りです。ご指摘頂いた箇所を正しく直すとどうなりますか。」
花子さん「『執るべき手続は,弁明の機会の付与(である)』ですね。」
S東先生「いいでしょう。では,角度を変えて質問致します。アのようなケースで,聴聞手続を執ることは一切不要なのでしょうか。」
花子さん「いえ,アのようなケースでも,行政庁が相当と認めた場合は聴聞手続を執ることが必要です(行政手続法13条1項1号ニ)」
S東先生「正解です。本問アのような不利益処分としては比較的ライトなケースであっても,聴聞手続が求められる場合があるということですね。こう見ると,(ア)は『比較的ライトな不利益処分の場合は原則として弁明の機会の付与で足りる』と言い換えることもできますし,あるいは『本問アのような不利益処分としては比較的ライトなケースで聴聞手続が執られるのは,あくまで行政庁が相当と認めるときに限られる』と言い換えることだってできます。本試験問題を確実に解く上で,こうした言い換えができるかどうかも重要です。以上の視点を身に付けておけば,例えば『聴聞手続が執られるのは,当該不利益処分が重大な不利益を伴う場合に限られる』という記述の正誤を判断すること際にも迷わずに済むでしょう。」
②イについて
S東先生「ではイを検討しましょう。いかがですか。」
花子さん「誤っています。設問➀で言及した行政手続法18条1項に照らすと,『ライバル事業者』は,当事者以外の『参加人』(当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人)とは言えないからです。」
S東先生「そうですね。設問➀で『それ以外の利害関係人』の意義を押さえておいて下さいと述べましたが,このイのような問題でその理解が問われたわけです。では,なぜ『ライバル事業者』は,『それ以外の利害関係人』とは言えないのでしょうか。」
花子さん「『ライバル事業者』ですから,行政手続法18条1項にいう『自己の利益を害されることとなる』者には該当しません。むしろ,Bに対する不利益処分は,『ライバル事業者』であるCにとっては競争相手が脱落するわけですから,好都合ではないかと。」
S東先生「その通りですね。また,『ライバル事業者』は,Bに対する不利益処分によってあくまで反射的に事実上の不利益を受ける者に過ぎないということもできるでしょう。
③ウについて
S東先生「ウはいかがですか。」
花子さん「ウに書かれている内容は,イとの対比から整理できます。ウの『高齢者D』は,Bからサービス(介護サービス)を受けている立場にあり,Bの営業がストップすれば自身の健康や安全等に不利益が生じることにもなりかねません。Dのこうした利益は,法的に充分保護されるべきですからDはまさに聴聞手続に参加して意見を述べるだけの資格すなわち『それ以外の利害関係人』をもつ者といえるでしょう。イのCと比較すると,Bに対する不利益処分によって影響を受ける利益の内容や程度,法的保護の有無の点において異なると思います。」
S東先生「そうですね。ご指摘のように,イとの対比から解答することも重要ですね。
ところで,よく『理解が大切だ』と言われますが,そもそも『理解』って何を指すのでしょうかね。その定義が曖昧にされたまま『理解』という言葉だけが先行されがちですが,花子さんは『理解』をどう捉えていますか。」
花子さん「短答式であれば,記述の理由付ができることでしょうか。」
S東先生「もちろんそれも大切です。しかしあくまで一つの要素でしかありません。理由付が出来ればその記述を『理解』したことになるのかというと,必ずしもそうではないと思います。問題文を通じて出題者が求めている事項を精確にキャッチし,それに沿うように習得した条文や基礎知識を自在に操作できること,当該記述で問われた知識について角度や場面設定を変えて問われても臨機応変に解答できること等が出来て初めて,その記述の『理解』に到達できたといえるのでしょう。」

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