刑事訴訟法

刑事訴訟法テストNo.3[解答編]/マヤ・アンジェロウの言葉(2)

 


勉強する時も、仕事(バイト)する時も、考えながらやりましょう。そうすると、いろんなことを発見し、面白いことに気づきます。アメリカ合衆国の社会政治家であり、詩人、歌手、女優でもあった、マヤ・アンジェロウは、やさしいことを、美しく述べている。

<マヤ・アンジェロウの言葉(2)>
「学んだ時は、教えなさい。
手に入れた時は、与えなさい」

・このことが出来る人は、立派です。あなたも、合格後、いろんな活動をする際、マヤの言葉を思い出してください。

では、昨日の答えを示します。


刑事訴訟法テストNo.3[解答編]

参考文献等
田宮裕・「刑事訴訟法」[新版](有斐閣・1996年)
山本悠揮・「刑事実務の定石」(弘文堂・2016年)
梓澤和幸・「リーガルマインド」(リベルタ出版・2014年)
スク東先生・「スク東先生ブログ」(スク東先生・2016年~)

➀司法警察員は,被疑者を逮捕したとき,弁解の機会を与える必要があると共にその弁解を録取するが,予め黙秘権の存在を告知する必要がある。
【解答】必要ではない。弁解録取(203条1項)の目的は,専ら被疑者を留置する必要性の有無を調査することにあり,198条の被疑者取調べではない。そのため,司法警察員は,予め供述を拒むことができる旨を告げなくともよい。
②以下のア~カの処分につき,それぞれの処分において必要となる被疑者の嫌疑の程度の小さい方から順に並べよ。
ア捜索差押
イ現行犯逮捕
ウ通常逮捕
エ緊急逮捕
オ勾留
カ有罪認定
【解答】アウオエイカ
ア「罪を犯したと思料される」(刑事訴訟規則156条)
イ「現に罪を行い,又は行い終わつた」(刑事訴訟法212条)
ウ「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(199条)
エ「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」(210条)
オ「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(60条)
カ「合理的な疑いをいれない程度の犯罪の証明」(333条,335条,336条)
イ~カの処分が身柄拘束(又は刑罰権の存否の確定)といった強力な権利制約を伴うことからすれば,アの処分において要求される嫌疑の程度が(イ~カに比べて)小さいことが分かるだろう。イの通常逮捕とオの勾留については,要求される嫌疑の程度を表す文言こそ同一である。しかし,勾留は逮捕に比べて長期の身柄拘束を伴う強烈な人権制約態様を伴う。そのため,勾留の方が要求される嫌疑の程度が大きいことが分かる。
③準現行犯逮捕の要件は,212条2項各号(1~4号)に規定されている。1~4号のうち,4号要件(「誰何されて逃走しようとするとき」)は時間的・場所的接着性の判断において他の号と比較して厳格性が要求されるべきとされる。その理由はどこにあるか。
【解答】4号要件は,1~3号までの要件に比較して,犯罪と犯人との結びつきを示す要素の程度が類型的に見て弱いといえる。「誰何」には,様々な方法があり,特段の限定もない。ゆえに,誤認逮捕の危険も誘発しやすいのだ。いささか長いかもしれないが,具体例を通じて検討してみよう。「ある男Kが,勤務先(S区)近くのコンビニエンスストアーで呑気にボサッと漫画雑誌かなんかを立ち読みしていたとする。その30分ほど前に,300メートル離れた場所で住居侵入被害事件があり,犯人を目撃した当該事件の被害者が通報により駆け付けた司法巡査Rと共に,『下手人はまだそう遠く行っちゃいねえはずだ。』というので捜し回っていた。両者が,先のコンビニエンスストアーの前を通りかかった際,被害者が漫画雑誌を一心不乱に読むKを認め,Rに「お巡りさん。あの立ち読みしている男が犯人に似ています。」というので,RがKに『おめえ,事件について知っちゃいねえか。不便を掛けるがね。』と声を掛けたが,立ち読みを中断された上に何だか疑われてるっぽいと思ったKは,Rの対応を不快に思うと同時に早く業務に戻らねばと,『あの,ワタシ,急いでるんで,ハイ。ご不便をお掛けします。』と言って足早に立ち去ろうとした。」
以上のケースで,RはKを現行犯逮捕することができるだろうか。確かにKは,Rに「誰何」されており,足早に立ち去ろうとすることは「逃走しようとするとき」にあたりうる。しかし,このケースでKを現行犯人として逮捕することは,さすがに不当ではないだろうか。Kと犯人・犯罪との結びつきがかなり弱い(時間と場所の接着性と被害者の目撃証言のみでは弱いというべきだろう。)からだ。誤認逮捕の誘発を極力防止するために,4号要件による現行犯逮捕が認められるためには,被疑者と犯人・犯罪との結びつける要素たる時間的場所的接着性について(1~3号に比べて)厳格に判断すべきである。なお,最決平成8年1月29日(和光大学事件)は,4号事案であったが,4号のほかに他の号の要件に該当する事実も認められるとされた事案である。
④裁判官(又は裁判所)が,保釈を認める際の条件として,再犯防止という条件を付すことはできるか。
【解答】できない。保釈は,身柄こそ国家権力から解放されるものの,潜在的には「勾留」が継続している。そのため,「勾留」目的と無関係な条件を付すことはできない。
⑤公判前整理手続において,弁護人は,検察官が公判で証明する予定の事実に係る証拠として取調べ請求及び開示した証拠以外の証拠で,一定の重要な類型の証拠につきいわゆる類型証拠開示請求を行う。弁護人が類型証拠開示請求を行う目的は何か。
【解答】検察官請求証拠の証明力を判断し,同証拠に関する同意・不同意の意見表明をするためである(316条の15)。なお,316条の5が規定する証拠開示の手続きは,一般的に「類型証拠開示請求」と称される(上記設問もそれに倣った)が,「検察官請求証拠の信用性に関する証拠」という呼称の方がわかりやすい。

⑥公判前整理手続において,検察官は,被告人又は弁護人に対し,検察官請求証拠を開示すると同時に証拠の一覧表も交付しなければならない。
【解答】誤っている。証拠の一覧表は,常に交付しなければならないわけではない。316条の14第2項が規定するように,「被告人又は弁護人からの請求があつたとき」に交付することになる。これまで過去問に出題され続けた公判前整理手続に関する知識に比べれば押さえておくべき優先度は下がるかもしれないが,検察官請求証拠の開示に付随する手続きとして押さえておいて損はないだろう。
⑦裁判所は,被告人及び証人につき,正当な理由がなく召喚に応じないとき,又は応じないおそれがあるときは,その被告人及び証人を勾引することができる。
【解答】正しい。152条が改正され,証人の勾引が許容される要件が緩和された。そのため,22-32の記述エについては,これまでは「正しい」とされていたが,改正により「誤り」となったことに注意しておこう。

【実践的方法論】
「スク東先生的司法試験・予備試験論」
そして,スク東先生である。スク東先生(以下,「先生」という。)のブログは,先週から引き続き,試験制度の概要について解説されているようだ。正直に申すと,筆者は,先生のブログの形態が,試験制度の解説にトピックが移行してからしばらく,不遜にもこんな感想を抱いてしまっていた。「一体いつまで試験制度の話をするのだろうか。ここで述べられているほとんどすべての情報は自分で調べれば済むことではないか。スク東先生ブログの持ち味たる新規(奇)性・独自性がない。これでは学習する側として刺激が足りない。早く先生ご専門の“背理消去法論”を掘り下げてほしい。」と。
しかし,やはり筆者の考えが浅いことが今回も分かってしまった。なぜか。そもそも先生が書かれたように,「目的を押さえることが,相手(試験)を知る出発点です。方向性を間違えないように把握することは大事でしょうね。 」(ブログ4月23日付記事)というわけだからだ。相手の情報を得なければそもそも対策すら立てられず,勉強が誤った方向に行くこと必定である。先生は,「第一に試験制度の概要を押さえることだ。第二に対策を具体的に講ずるのだ。」と説くことで,学習の方向を常にチェックすることの重要性を示してくれたと見るべきなのだ。先生のTwitter風に表現すれば,「【試験制度の概要を知るが吉】知ってるつもりでも,けっこう見落としがあるものですよ。見落としたものの中に勉強のヒントがあるかもしれませんよ。試験制度を満足に知らずに勉強をしても頭打ちです。今日も一日勉強頑張りましょう。」ということなのだろう。筆者は,浅はかな態度を大いに反省したところである。
それにつけても,こう見てくると,先生のブログで繰り広げられる試験制度の解説が(法務省の発表とそのまんま同じとはいえ)よく整理された利便性の高いテキストのように見えてくる気がするから不思議だ。同時に筆者は,先生に叱責される花子さんのように殊勝な気持ちになって,先生と花子さんの問答を味わったものである。


・特に、勉強したことを、友人や後輩たちに教えると、相手のためになります。それ以上、教えた本人の実力がアップするのです。あなた、一度、試してみてください。あなたは、絶対合格します。

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