行政法

行政法ブログNo.10[解答編]


【設問➀】「漁港を占用して悪いか!!」

以下の資料を参照しながら,下記小問について解答せよ。

(1)漁港の区域内の水域又は公共空地において,土地の一部の占用(法39条1項)をしようとする者は,原則として漁港管理者の占用許可を受けることができるか。
(2)Y県の漁港管理者が,「我々お上が,下々に対して漁港漁場整備法(以下,「法」という。)第39条第1項による占用許可をするか否かについてでありますが,同条第2項に従って判断すべき場合はですねぇ,法第1条の定める法の目的を促進する占用に限定されると解釈すべきなのであります。」という法律論を得々と主張している。この法律論は正しいか。なお,漁港はY県の行政財産である。
【資料】🐟漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)(抜粋)🐡
(目的)
第1条 この法律は,水産業の健全な発展及びこれによる水産物の供給の安定を図るため,環境との調和に配慮しつつ,漁港漁場整備事業を総合的かつ計画的に推進し,及び漁港の維持管理を適正にし,もつて国民生活の安定及び国民経済の発展に寄与し,あわせて豊かで住みよい漁村の振興に資することを目的とする。
(漁港の保全)
第39条 漁港の区域内の水域又は公共空地において,(中略)土地の一部の占用(中略)をしようとする者は,漁港管理者の許可を受けなければならない。(以下略)
漁港管理者は,前項の許可の申請に係る行為が特定漁港漁場整備事業の施行又は漁港の利用を著しく阻害し,その他漁港の保全に著しく支障を与えるものでない限り,同項の許可をしなければならない。
3~8 (略)
【解答】
(1)できる。法39条2項によれば,漁港管理者は申請者の申請に係る行為において漁港漁場整備事業の施行又は漁港の利用を著しく阻害し,その他漁港の保全に著しく支障を与えるといった特段の事情が認められない限り,原則として同条1項の許可をしなければならないのである。
(2)正しくない(誤っている)。
漁港管理者が主張する法律論は,法39条2項の占用許可が許される場合を「法第1条の定める法の目的を促進する占用に限定」するとして,あくまで例外的な場合と解釈している。たしかに漁港はY県の行政財産であるから,地方自治法238条の4第7項によれば,普通地方公共団体の長(本問ではY県知事)が例外的に必要と判断した場合にのみ使用が許可されることになる。しかし,法39条2項は行政財産である漁港の公共空地の占用に関する規定なので,地方自治法238条の4第7項の特別規定と位置付けるべきである。
本問では,漁港の公共空地の占用を巡って争われている。そのため,地方自治法238条の4第7項の特別規定としての法39条が適用される。
また,上記(1)で述べたように,法39条2項については,漁港管理者は原則として申請者に対して許可の処分をしなければならないと読むべきである。さらに,法1条を見ると,法の目的として「水産業の発展」や「国民経済の発展」等といった水産業の振興を通じた経済発展の実現が予定されていることが分かる。かかる法の目的実現のためには,漁港の占用による利用をできる限り広く認めるべきである。
以上から,漁港管理者の主張する法律論は正しくない。

【設問②】「お上が処分に自由に附款を付して悪いか!!」

以下の各小問について解答せよ。
(1)附款の定義
(2)最高裁判所の判例によれば,行政庁は,法律関係を形成する処分を行うに当たっては,始期又は停止条件を付すことが原則として可能か。なお,処分の効果は始期の到来又は条件の成就によって発生する。
【解答】
(1)行政処分の効果を制限し,あるいは特別の義務を課すため,処分本体に付加される従たる定めをいう。具体的には,条件や期限,負担等がある。
(2)行政庁が法律関係を形成する処分を行うに当たり,始期又は停止条件を付すことは,処分を受ける国民に新たな権利制限(義務)を課すことになる。行政庁が国民の権利を制限する処分を行うには,法律の根拠が必要である。そうすると,本問のように行政庁が法律関係を形成する処分を行うに当たり,始期又は停止条件を付すためには,原則として法律の根拠が必要となる。すなわち,問題文にあるように原則として始期又は停止条件を付すことを可能とすることは,法律の根拠なく国民の権利を制限することになるので認められない。

【設問③】「行政規則によって附款を付して悪いか!!」

行政規則によって,授益的処分の発効に停止条件を付すことはできるか。
【解答】
できない。
授益的処分(許可や認可等)の発効に停止条件を付すことは,授益的処分によって法的利益を得る国民の権利を制限し又は義務を課すことになる。そのため,かかる停止条件を付すためには法律の根拠がなければならない。行政規則は,あくまで行政内部において通用する規範であり国民の権利義務を直接規律するものではない。
したがって,行政規則によって国民の権利義務を規律することになる停止条件を付すことはできない。

【設問④】「ご近所トラブル防止を条件にして悪いか!!」

建築基準法第6条第1項の定める建築確認及び同法第9条第1項の定める違反是正命令に関し, 次の[問]について解答しなさい。
(参照条文)🏠建築基準法🏢
第6条 建築主は,(中略)建築物を建築しようとする場合(中略)においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。
(以下略)
2~13 (略)
14 第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ,同項の建築物の建築(中略)の工事 は,することができない。
15 (略)
第9条 特定行政庁は,建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については,当該建築物の建築主(中略)に対して, 当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付けて,当該建築物の除却,移転, 改築,増築,修繕,模様替,使用禁止,使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
2~15 (略)
[問]建築主事は,建築主と建築に反対する近隣住民とが一定期間協議することを停止条件として建築確認を行うことができるか。

【解答】
できない。
既に述べたように,本問のような処分に停止条件を付すためには,法令上の根拠が必要である。建築確認の発効に停止条件を付すことができる対象は,建築基準法9条1項が規定するように建築基準関係法令の規定が予定する事項(建物の設備や構造等)に関するものであって,同関係法令に根拠を求めることができなければならない。
建築基準法6条1項によれば,建築主が建築確認を受けるために必要なことは,建築しようとする建築物が建築基準関係法令に適合することである。
建築主と建築に反対する近隣住民との協議は,建築主が近隣住民の理解を得て無用な紛争を予め防止するために行うものであって,当該建築物が建築基準関係法令に適合するか否かとは直接関係はない。そのため,建築主と建築に反対する近隣住民との協議は建築基準関係法令が予定する事項ではなく,同関係法令に根拠を求めることはできない。
なお,いわゆる品川マンション事件(最判昭60・7・16)を想起できれば,建築主事は,建築主に対し近隣住民と協議するよう行政指導を行いつつ建築確認を留保する手段を講じ得ると結論することも可能だ。

【設問⑤】「自由に行政計画を立てて悪いか!!」

次の記述について解答せよ。
市街化区域と市街化調整区域の区分のように,都市計画の内容が私人の土地利用に対して建築制限をもたらす場合であっても,当該都市計画には法律の根拠は不要か。
【解答】
法律の根拠が必要である。
行政機関の行う行為が国民の権利又は義務に直接影響を及ぼす場合,法律(法令)の根拠が必要である。都市計画は行政機関が策定するものであり,その内容が私人(国民)の土地利用に対して建築制限をもたらすのであれば,行政機関が私人の自由な土地利用を直接制限することになる。そのため,当該都市計画には法律の根拠が必要となる。
ひと口に「都市計画」といっても,その内容は様々である。そのため,「都市計画」という名称に囚われるのではなく,その内容に着目することが必要だ。
本問を解答する上では,土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定に処分性を認めた最高裁判所平成20年9月10日大法廷判決も参考になるだろう。

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