商法

商法ドリルNo.16[解答編]


【設問】(短答式・民事系プレテスト第53問より)
株式会社の貸借対照表に関する商法施行規則上の規律(※プレテスト出題当時)に関する次のアからオまでの記述のうち, 誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.貸借対照表の資産の部は,流動資産・固定資産・繰延資産の三つの部からなる。
イ.新製品の研究のために特別に支出した金額は,繰延資産として計上することができ,その研究が継続している期間は,償却することを要しない。
ウ.有償で譲り受けたのれんは,資産として計上することができる。
エ. 金銭債権は債務者の資産状況が悪化し回収不能となるおそれがあっても 貸借対照表上は債権額全額を資産として計上することができる。
オ.役員退職慰労金は,支払義務が発生しない段階でもその支出が合理的に予測できる場合には,引当金として負債の部に計上することができる。
1.ア,ウ 2.ア,オ 3.イ,エ 4.イ,オ 5.ウ,エ

【解答を導くdialogue】
S東先生「では,どの記述から検討しますか。」
花子さん「短い記述から検討するのがいいと思ったので,ウから検討します。後述しますが,『のれん』と『資産』との関係が何となくイメージできたためです。」
S東先生「そうですね。視覚的に『これは取り組みやすそうだ』と思った所から検討して行けばよいと思います。人によっては,それがエやオであるかもしれません。つまり,自分にとって取り組みやすい記述から検討すればよく,『どこから検討しようが構わない』のです。あるいは,取り組みやすい記述の多くは,これまでの学習の中で見慣れた用語や概念が登場する記述でしょう。しかもその記述から検討することで出題者の誘導に乗りやすくなると思います。では,花子さんはウから検討するとのことなので,ウを検討しましょう。いかがですか。」
花子さん「『のれん』というのは,『のれん分け』という言葉で聞いたことがあるので,何となく分かります。『店の看板』という感じでしょうか。例えば老舗のレストラン等に行くと,『この店は,○○年に△△からのれん分けを許され,ここ××町に誕生しました。以来,この町の皆様に支えられお世話になっております。』みたいな張り紙を見かけることがあります。商法上の『商号』という概念に近いのかも知れません。他方,『資産』の正確な定義は分かりませんが,こちらも何となくイメージはできます。経済的価値を生み出す財産といった感じでしょうか。そうすると,『店の看板』は,それ自体がブランド価値をもつものです。つまり経済的価値をもつことが分かります。したがって,経済的価値のある『のれん』を『有償で譲り受けた』のなら,それは譲受人にとって今後経済的価値を生み出す財産になるでしょうから,『資産』に計上することができると考えます。以上から,ウは正しいと言えそうです。」
S東先生「そうですね。花子さんの言うように『のれん』『資産』については,何となくイメージが付くでしょう。いずれも『財産的価値』をもつのだろう,ということが分かれば『のれん』=『資産』という推測ができると思います。やや漠然とはしていますが,花子さんの解答だって立派な『規範⇒あてはめ』の流れに則ったものです。では,ウが正しいだろうと判断して,次はどの記述を検討しますか。」
花子さん「アを検討しました。アは,『まあ正しいんだろうな』という感じです。『資産の部』の内訳について問われており,『流動資産・固定資産・繰延資産の三つの部』が存在することについては,『資産の部』に関する特別な知識がなくとも,違和感はありません。例えばレストラン等のメニュー表で,『がっつりお肉の部』という項目なのに,『こってりラーメン』が入っていたら珍妙です。
S東先生「そうでしょうね。『資産の部』の内容について問われているのだから,『資産』という抽象的な概念の具体例が,『○○資産』という名称をもつものであることは無理なく想像が付くということです。○○の内容が分からなくとも構いません。アについては,『資産の部』として掲げられている『三つの部』における内容に『~資産』と付いているので具体例として正しいのだろうと推測できます。以上については,『抽象的概念⇒具体的ケース』すなわち『規範⇒あてはめ』という流れで捉えることもできると思います。地味かも知れませんが,こうした視点は大切です。」
花子さん「アが正しいとすると,(本問は『誤っている記述の組み合わせを選ぶので』解答は3か4に絞り込めます。つまり,イを検討しなくとも済み,エとオの正誤を判断するということですね。」
S東先生「その通りです。ここで着目すべきは,エとオの文章構造や内容に見られる類似性です。エとオ,問いの形や内容に似ている点がありませんか。」
花子さん「エとオは,いずれもある財産をある項目に計上することの可否を問うている点で似ています。
S東先生「そうです。こうした類似する記述は,正答を導く上でポイントになることが多いので,ぜひ着目しておきたいところです。エオ,いずれから検討しても構わないでしょうが花子さんはどちらから検討しますか。」
花子さん「エから検討します。アやウで『資産』について検討しました。エにも『資産』が登場するので,効率的だと思います。」
S東先生「なるほど。『資産』繋がりで検討しようという視点ですね。イの検討は省略しましたが,イにも『資産』という言葉が登場します。断定はできませんが,出題者としては『資産』という言葉に反応して解答することを求めていたのかも知れません。では,エを検討しましょう。いかがですか。」
花子さん「エにおける『金銭債権』は『債務者の資産状況が悪化し回収不能となるおそれ』をもつものです。債権自体は成立していますが,実質的には経済的価値がないと思います。そうすると,エにおける『金銭債権』は『資産』として計上できないのではないでしょうか。したがって,エは誤りと判断できます。」
S東先生「そうですね。エも,アやウと同じように『資産』の意味する内容を想定しながら,『回収不能となるおそれ』をもつ『金銭債権』の『資産』計上可能性を検討することで堅実に解答を導くことが出来るでしょう。エも『規範⇒あてはめ』の流れですね。では,オはどうでしょうか。」
花子さん「オは,エと対比的に見ることができます。オにおける『役員退職慰労金』は,『支払義務が発生しない段階でもその支出が合理的に予測できる』ので,エと異なり合理的に見て実現可能性をもちます。また,オで問われているのは『負債』として計上できるかどうかです。『負債』という漢字を分解すると,『債(務)』を『負(担する)』となることは容易に分かりますので,後はオの『役員退職慰労金』の支払義務が,『債(務)』を『負(担する)』ケースとして合理的に見て実現可能性をもつかどうかを検討すればいいと思います。
オの『役員退職慰労金』は,『支払義務が発生しない段階でもその支出が合理的に予測できる』ので『役員退職慰労金』に係る『支払』債務の発生は合理的に見て実現可能性をもつものです。したがって,『役員退職慰労金は,支払義務が発生しない段階』であっても,『負債の部』に計上することができることになります。以上から,オは正しいと判断できます。」
S東先生「そうですね。オは,エとの比較で検討すると分かりやすいと思います。エとオについては,『資産』や『負債』の定義を明確に知っている必要はなく,漢字から内容を連想し合理的に推測すれば充分でしょう。本問のような,一見すると当該科目で扱う範囲を超える知識が問われているかのような問題も,オーソドックスな法的視点でもって冷静に見れば,意外と難なく正答を導くことができます。商法ドリルNo.15の『振替株式』の問題も似たような面がありました。一方で,誰でも瞬時に分かるような簡単な問題についても上記のような視点から検討し直してみるとよいでしょう。具体的には,『抽象的概念⇒具体的事例』『規範⇒あてはめ』の流れにおいて矛盾はないか,『原則⇒修正』の流れに無理はないか等の視点で分析してみるのです。新たな発見があるかも知れません。」

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