刑法

事後強盗罪の既遂/孔子の言葉(2)


 司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!「勉強していたら、そのうち合格する」と、思っている人がいる。とんでもない。自分の頭で考え、苦しんで、初めて、知識・学力は習得できるものである。かの孔子師は、悟している。


<孔子の言葉(2)>
「子(し)日(いわ)く、之(これ)を如何(いかん)、之(これ)を如何(いかん)と日(い)わざる者(もの)は、吾(わ)れ之(これ)を如何(いかん)ともする末(な)きのみ。」


▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!孔子先生も、「どうしたらよいか、と自分からもがき、考える人でないと、私はどうしようもできない」と言われている。
 では、昨日の答えを出します。


【解答】刑法No.21
 ① Xは店で、高級バッグを万引きし、店外に出た。Xは、これに気づいた店員Yに追いかけられて呼び止められたので、通報されて捕まることを避けるために、Yに反抗を抑圧する程度の暴行を加え、逃走を図ったが、結局Yに捕まってしまった。
→Xはバッグを窃取した上で、逮捕を免れる目的をもってYに暴行を加えていることから、事後強盗罪(財物を得て…逮捕を免れ)に該当する。暴行の程度も、「強盗として論ずる」ことから、事後強盗罪における暴行・脅迫は、強盗罪と同様、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要する。
→また、Xは結果的に逃走に失敗しているが、本罪の要件は「逮捕を免れる目的」を持っていれば充足されるのであり、実際に逃走が成功したかは犯罪の成立に影響しない。
→事後強盗罪の既遂となる。
 ② Xは店で、高級バッグを万引きし、店外に出た。その際、Xは、たまたま掃除のために店員Yが店先に出てきたのを見て、バッグを取り返されるのを避けるために、Yに反抗を抑圧する程度の暴行を加え、逃走した。Yは万引きには気づいていなかった。
→①同様、バッグの窃取をしたXは、取り返しを防ぐ目的をもってYに暴行を加えていることから、事後強盗罪(財物を得て…取り返されることを防ぎ)に該当する。
→この点、Yはそもそも万引きに気づいていなかったのであるから、Yは取り返し行為をしたとはいえない。しかし、本罪の要件は「取り返しを防ぐ目的」を持っていれば充足されるのであり、実際に被害者が取り返し行為をしたか否かは、犯罪の成立に影響しない。
→また、窃盗をした場所と暴行をした場所とは時間的場所的接着性があるものの、窃盗の機会になされたものといえるか問題となる。しかし、本罪の特徴から考えれば、事後強盗罪における「窃盗の機会」とは、「被害者等から容易に発見され、財物を取り返され、逮捕されうる状況」と解するべきである(最決平14・2・14)。したがって、かかる状況は存在するといえるので、当該暴行は窃盗の機会になされたものといえる。
→事後強盗罪の既遂となる。
 ③ XはY宅に侵入し、現金を盗もうとして金庫に手を掛けた。Xは、これに気づいたYに追いかけられて呼び止められたので、通報されて捕まることを避けるために、Yに反抗を抑圧する程度の暴行を加え、逃走を図ったが、結局Yに捕まってしまった。
→金庫に手をかける行為は、財物への現実的危険性を有する行為であるから、窃盗罪の実行の着手にあたる。
→Xは事後強盗罪の構成要件に該当する行為をしているものの、実際に現金をとらずにYに対し暴行を加えている。この点、そもそも強盗罪は、財物の取得によって既遂になるのであるから、事後強盗罪も、同様に財物の取得をもって既遂と解すべきである。
→したがって、事後強盗罪の未遂となる。
 ④ XはY宅に侵入し、現金を窃取し、Y宅から出た。Xは、これに見ていたZに追いかけられて呼び止められたので、現金を取り返されるのを避けるために、Zに反抗を抑圧する程度の暴行を加え、逃走した。しかし、Zは、Y宅とは何の関係もない通行人だった。
→Xは事後強盗罪の構成要件に該当する行為をしているものの、暴行を加えた相手のZは、被害者ではなかった。この点、本罪の要件は「取り返しを防ぐ目的」を持っていれば充足されるのであり、取り返し行為をしてきた者が被害者本人であったか否かは犯罪の成立に影響しない。
→したがって、事後強盗罪の既遂となる。
 ⑤ XはY宅に侵入し、現金を窃取し、Y宅から出た。Xは、これに見ていたZに追いかけられて呼び止められたので、通報されて捕まることを避けるために、Zに反抗を抑圧する程度に至らない暴行を加え、逃走した。
→ ④ 同様、窃盗の既遂は前提となるものの、「反抗を抑圧する程度に至らない暴行」をしたXの行為は事後強盗罪とならない。なぜなら、事後強盗罪における暴行・脅迫は、強盗罪と同様、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要するからである。
→したがって、事後強盗罪は成立しない。
 解答は ① ・既遂、 ② ・既遂、 ③ ・未遂、 ④ ・既遂、である。
  【注】
 ① 大判昭19・2・8
 ② 最判昭22・11・29
 ③ 最決昭24・7・9
 ④ 大判明8・6・5
 事後強盗罪を巡る論点は多い上に複雑である。しかし、基本に立ち戻ることで、その検討を比較的容易に行えるようになる。事後強盗罪は財産犯である。財産犯の保護法益は、財物である。したがって、財物の移転が既遂・未遂を分けることになるということが自ずと分かるのである。これを前提に、実行行為・目的を検討するのである。
 また、⑤のように、何らかの要件が欠けることによって、事後強盗罪が成立しない場合もあることに注意すべきである。⑤の場合は、傷害がなければ、窃盗罪+暴行罪の併合罪となることに留意したい。
 時間的制約の多い短答試験にいては、原則(≒保護法益)に立ち戻って思考することが重要である。


▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!学習には、熱意と意欲が必要なのだ。よく考えて、鋭く質問することこそが、本筋であるということである。“サッ”と暗記して、“ラッキー合格”しようなどと考えていては、孔子先生に、こっぴどく叱られるだろう。
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 さあ!今日も、苦しんで一歩一歩進もう!さあ!行け!絶対合格!!
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