商法

商法ドリルNo.9[問題編]


次の記述について解答せよ。

【設問➀】
甲株式会社の資産総額は200億円であり、甲会社の内規によれば、10億円以上の借入れには取締役会の決議が必要である。甲会社の代表取締役Aが、甲会社の名において乙銀行と次の取引をした。
(一) Aは、取締役会の決議を経ることなく、20億円を借り入れた。
(二) Aは、自己の住宅購入資金にあてるため、2億円を借り入れた。
以上につき,次の小問(1)(2)について解答せよ。
(1)(一)について,Aが乙銀行から20億円を借り入れた行為に対しては,取締役会決議が必要とされるか。
(2)(一)について,仮にAが乙銀行から20億円を借り入れた行為につき取締役会決議が必要だとする。Aの借入れの効力はどう考えるべきか。
(3)(二)について,Aが乙銀行から自己の住宅購入資金にあてるために2億円を借り入れる際,取締役会の承認を受ける必要はあるか。
(4)(二)について,仮にAが乙銀行から自己の住宅購入資金にあてるために2億円を借り入れる際,取締役会の承認を受ける必要があるとする。Aの借入れの効力はどう考えるべきか。
【設問②】
取締役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は,事業として甲県内にお
いてトラックによる陸上貨物運送を行っている。A社の取締役であるBの行為について
述べた以下の記述について解答せよ。
営業として甲県内においてトラックによる陸上貨物運送を行っているBが,A社の取締役
会において,当該運送に係る取引につき重要な事実を開示することも,その承認を受ける
こともしていない場合には,A社は,当該運送に係る取引によってBが得た利益を自己の利
益とみなすことができるか。
【設問③】
次の記述の正誤について解答せよ。
同一の不動産について,その差押えと吸収分割による権利義務の承継との間の優劣は,不動
不動産の差押えの登記の時と吸収分割承継会社が吸収分割の登記をした時の先後で決する。
【出典】
設問➀は,旧司法試験昭和63年度第1問を簡易アレンジしたものである。類似の問題は,短答式過去問18-45に出題されている。設問②は,予備29-22を簡易アレンジした。設問③は,26-50である。
【分析の視点】
設問➀については,「原則・例外思考」はもちろん,相手方の主観的事情(相手方は,取引の際に何を重視するのか,あるいは重視すべきなのか等)を意識することが大切だ。
設問②は,問題文と条文の文言を的確に結び付けられるかどうかがポイントである。
設問③は,登記が公示する対象をしっかり特定した上で,それぞれの登記の先後で優劣関係を決することが妥当かどうかを明らかにする必要がある。
【押さえておくべき知識】
それぞれの設問で登場する条文・判例である。

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