【令和7年予備試験 短答式試験日】
令和7年7月20日(日)
【令和7年司法試験 本試験日】
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令和7年7月16日(水)、17日(木)、19日(土)、20日(日)
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令和7年の本試験まで,あと2週間ほどに迫ってきました。大変,暑い日が続いております。
熱中症など,体調に十分,気を付ける必要があります(サイト:日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト)。
今日は,予備試験短答一般教養対策,経済学について。ミクロ経済学のゲーム理論の中でも,「ナッシュ均衡」について,勉強しましょう。平成27年,28年に連続で出題されました。平成27年第17問は,むつかしい問題でした。何の前振りもなく応用的になってしまい,選択数や正答率が悪かったのでしょう。平成28年第15問は,ミクロ経済学の教科書通りで,簡単に解けます。平成27年で,作問者が周りから(思い切り)ダメ出しされ,一生懸命,調整している姿がイメージできます。
ちなみに,「ナッシュ均衡」は,論理の発見者であるアメリカの経済学,ジョン・ナッシュの名からとられました。1994年、非協力ゲームの理論における均衡分析という功労から、ノーベル経済学賞を受賞しました。映画「ビューティフル・マインド」(2001年)では,精神障害を患いながら研究を続ける半生が描かれています。部屋の壁という壁を,モデル計算の式の紙で埋め尽くし,うろうろする姿が印象的でした。では,始めましょう。
【平成28年第15問】
企業Aと企業Bが,各々独立に設備投資を計画している。設備投資に要する費用はそれぞれ 5 億円である。2つの企業のうち,どちらか一方が設備投資を行うとその企業の収入は 10 億円となるが,設備投資を行わない企業の収入はゼロとなる。両企業が共に設備投資を行うと,収入はそれぞれ 6 億円だが,行わない場合には収入は 4 億円となる。企業A,Bはそれぞれ相手企業が設備投資を行うか否かが分からない中で,自らの利潤(つまり収入から設備投資に要する費用を除いたもの)を最大にするように,設備投資を行うかどうかの判断をする。この場合のナッシュ均衡に関する記述として最も適切なものを,次の1から5までの中から選びなさい。
1.ナッシュ均衡は両企業が共に設備投資を行うことである。
2.ナッシュ均衡は存在しない。
3.ナッシュ均衡は両企業が共に設備投資を行わないことである。
4.ナッシュ均衡は2つある。
5.1から4はいずれも誤りである。
正解:1
【総論】
ナッシュ均衡とは,ミクロ経済分野のゲーム理論の一つである。同時手番のゲームにおいて,自分一人だけが戦略を変えても得をしないので,お互いに戦略を変えない状態をいう。著名なものに,「囚人のジレンマ」がある。2人の囚人が,別々に取調べを受けている。各人は,黙秘するか自白するか,どちらか選択できる。互いの黙秘・自白の組み合わせにより,各人の点数が,次のように決められる。
①二人とも黙秘した場合は,両者に-2点。
②どちらか一方が自白し,もう一方が黙秘した場合,自白した方は±0点,黙秘した方は,-6点(自白した囚人と比べて,反省してないから)。
③二人とも自白すれば,-4点。
以上を,図表にすると,下記のようになる。
たとえば,囚人Aは,互いに黙秘するのが楽でいいが(注a),Bに寝返られ自白されると,損害が大きい(注b)。自白した方が,黙秘するより損害が小さくなる(注d)。かりに自分が自白し,Bが黙秘すれば損害はゼロである(注c)。このシナリオは,囚人Bも同様である。したがって,互いに,自白という戦略を変えない方が損害は少なく,(注d)の場所に落ち着く。これが,ナッシュ均衡である。なお,(注a)が均衡点といえないのは,自白すれば,得をするので,戦略を変える可能性が残されるからである。
以上は,ナッシュ均衡が一か所に決まるゲームであるが,均衡点が2か所になるものもある。「男女のデート」ゲームである。
たとえば,男女が一緒に出かける約束をし,行先は「野球観戦」か「喫茶店」である。男性の趣味である「野球観戦」を選んだ場合,効用は(注α)となる(男性の効用が高い)。また,女性の趣味である「喫茶店」を選んだ場合,効用は(注δ)となる(女性の効用が高い)。一方,どちらかが約束を破って,バラバラに目的地に行った場合,デートとして成立せず効用はゼロ,つまり(注β)か(注γ)になる。「同じ目的地に行くパターン」から,動かない方が利益になるので,均衡点は(注α)と(注δ)の2か所である。
以上を前提に,本問の企業の設備投資も,図表化する。(単位:億円)
肢1 正しい。
企業A・Bとも,設備投資しない方が楽であるが(注1),相手が投資した場合は,相手の収益が上がり,自身は全く収益が得られず,市場の競争に負けてしまう(注3)(注2)。したがって,互いに設備投資するという(注4)に落ち着く。したがって,「ナッシュ均衡は両企業が共に設備投資を行うことである。」が正しい。
肢2 誤り。
企業が「設備投資する」という選択から,費用の削減するため「設備投資しない」に選択を変えると,相手企業に市場の利益を全部奪われるおそれがある。つまり,企業は(注4)から動くことができない。利益の獲得や損失の削減を目指して戦略を変え動き続けることはできないので,均衡点は存在する。したがって,「ナッシュ均衡は存在しない。」は誤りである。
肢3 誤り。
企業は,互いに設備投資しない方が,費用がかからず楽であるが,もう一方の企業が設備投資すれば,市場の利益を全部奪われるおそれがある。したがって,「設備投資しない」戦略を変える可能性があるので,均衡点ではない。「ナッシュ均衡は両企業が共に設備投資を行わないことである。」は誤りである。
肢4 誤り。
均衡点が2つある場合は存在する(総論:「男女のデート」参照)。一方,本問の企業の設備投資は,「囚人のジレンマ」のパターンであり,均衡点が1か所になる場合である。
肢5 誤り。
肢1~4の検討により,1が正解となり,「1から4はいずれも誤りである。」は,適切ではない。
いかがでしょうか。ナッシュ均衡を数式化すると,
絶対合格!!
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