商法

商法ドリルNo.24[解答編]

【事例】
甲山一郎は,有名なテレビタレントであるが,同人の高校時代からの友人であるAは,書店を開業することを計画し,その商号を「ブックセンター甲山一郎」としたいと考えた。そこで,Aは,甲山に電話で,「今度,書店を始めたいが,その際に君の名前を使ってよいか。」と尋ねたところ,甲山は,「自分の名前が広まるのは大歓迎であり,どんどん使ってほしい。」と答えた。Aは,「ブックセンター甲山一郎」の商号で書店を開業したものの,その後半年もしないうちに,持病が悪化したため,営業から引退することを考え,書店の営業を知人のBに譲渡することにした。Aから営業譲渡を受けたBは,「甲山一郎ブックセンター」の商号で書店を開業した。
【設問1】
テレビタレントである甲山一郎は,「商人」か。
【解答】
「商人」とは,自己の名をもって商行為をすることを業とする者である(商法4条1項)。テレビタレントは,商行為に該当しない(商法501条,502条参照)。そのため,甲山一郎は,「商人」ではない。
【設問2】
Aには債権者Cがおり,Bには債権者Dがいるとする。C,Dは,それぞれ原則として甲山に弁済の請求をすることができるか。
【解答】
C,Dは,いずれも原則として甲山に弁済の請求をすることはできない。C,Dいずれも甲山と契約関係がないからである。
【設問3】
甲山一郎が,Aの債権者であるCに対して,弁済責任を負うとする。
(1)甲山の責任を根拠づけるために適用が問題となる条文を挙げよ。
(2)上記(1)で挙げた条文は,甲山に直接適用されるか。
【解答】
(1)商法14条
(2)直接適用されない。設問1で述べたように,甲山は「商人」ではないからである。
【設問4】
 Aの債権者Cが,Bに弁済を請求したとする。
(1)Cは,原則としてBに弁済を請求することができるか。
(2)CのBに対する請求権の存否を検討するにあたり,何条の適用が問題となるか。
(3)上記(2)で挙げた条文は,本問で直接適用されるか。
(4)「ブックセンター甲山一郎」と「甲山一郎ブックセンター」は,同一の「商号」と見ることができるか。

【解答】
(1)原則として,請求することはできない。AとBの間に契約関係がないからである。
(2)商法17条1項(前提として,商法15条,16条が適用される)の適用が問題となる。
(3)直接適用されない。Bは,Aから書店の営業を譲り受けた「商人」である(商法4条1項,同17条1項)ものの,商号が「ブックセンター甲山一郎」から「甲山一郎ブックセンター」に変更されている。そのため,形式的に見れば,Bは「ブックセンター甲山一郎」の商号を「引き続き使用する」(商法17条1項)とはいえないからである。
(4)同一と見ることができる。17条1項の趣旨は,商号の続用がある場合,債権者は営業主体の変更を知りえず,または,知っても営業債務も移転したと信頼するから,そのような債権者の信頼を保護する点にある。
  そうすると,商号が営業譲渡の前後で社会通念上同一といえる状況があれば,商法17条1項の趣旨を十全化すべく,商号の続用を認めて債権者の営業債務の信頼を保護すべきである。したがって,「商号を引き続き使用する」とは,営業譲渡の前後で社会通念上同一の商号を使用していると認められる場合をいう。
  本問の場合,「甲山一郎」と「ブックセンター」の前後が入れ替わっているだけで,新たな字句が追加されているのではない。そうすると,「ブックセンター甲山一郎」と「甲山一郎ブックセンター」は社会通念上同一の商号といえる。
  したがって,Bは,「商号を引き続き使用する」といえる。
【設問5】
甲山一郎が,Bの債権者であるDに対して,弁済責任を負うとする。
(1)甲山の責任を根拠づけるために適用が問題となる条文を挙げよ。
(2)上記(1)で挙げた条文は,甲山に直接適用されるか。
(3)上記(1)で挙げた条文が,甲山に類推適用されるとした場合,甲山の責任の存在を基礎づける事実について,【事例】から指摘せよ。
【解答】
(1)商法14条
(2)直接適用されない。前述の通り,甲山は「商人」ではないからである。
(3)Aに「今度,書店を始めたいが,その際に君の名前を使ってよいか。」と尋ねられた際,甲山は「自分の名前が広まるのは大歓迎であり,どんどん使ってほしい。」と発言し,Aに名義貸しを許諾した事実。この事実から,甲山が,経済社会において自分の名義が広範に使用されること及び使用にされたことに伴うリスクを認識していると評価できるからである。

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