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<我妻榮(民法学者)の言葉(2)>
「確信をもって述べているようなことでも、著者としては、常に弱点を知り、反省を重ねている」
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▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 大学者を見習って、自分の欠点・弱点を知って、反省し、改善を重ねてくださいね。そうすれば、将来、“大きな人間”に成長しますよ。
では、昨日の答えを出します。
【解答】民法No.38
Tは、GT間の売買契約が解除されたことを根拠に、Oが8万円を保持できる理由はないとして、不当利得返還請求権(民法(以下、略)703条)に基づき、Oに対して8万円を返還するよう請求するGは、8万円をTから支払われ「利益」を得た。Tが「利益」を得た反面、Gは対応する8万円につき「損失」を被った。因果関係も認められる。
「法律上の原因」は、703条の趣旨が実質的公平の原理にあることから、当該財貨の移転が実質的に正当化できる場合に認められる。
本件の場合、Tは、Gとの売買契約が債務不履行解除されて遡及的に消滅したことを根拠に、Oが8万円を保持することは実質的に正当化されないことを主張する。
売買契約が債務不履行解除された場合の効果は、545条1項本文が「原状に復させる義務」と規定するのみだが、債務不履行解除(541条)の趣旨は、債権者を不誠実な債務者との契約の拘束力から解放することにある。そのため、Tが主張するように、GT間の売買契約は、Gの債務不履行解除によって遡及的に消滅する。
Tの主張に対し、Oは、自分は545条1項ただし書「第三者」にあたるため、Gによる債務不履行解除による売買契約の遡及的無効は制限され、8万円を実質的に正当に保持できると反論する。
545条1項ただし書の趣旨は、契約の遡及的無効を制限することにある。そのため、「第三者」とは、解除の対象となる契約から生じた法律効果を基礎として解除前に新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者をいう。
Oは、GT間の売買契約によって生じたGの代金の給付請求権を有する者である(537条1項)。Oは、Tに代金を支払うよう請求しているので、代金の給付請求権が発生している(537条2項)。そのため、OのGに対する代金の給付請求権は、GT間の売買契約から直接生じた権利であるから、OはGT間の売買契約から生じた法律効果を基礎として新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者ではない。
したがって、Oは545条1項ただし書「第三者」ではない。OのTに対する反論は認められない。
さらにOは、GT間の売買契約に基づき、Oは、538条を根拠に、自らが取得したGに対する代金給付請求権は、GのTに対する売買契約の債務不履行解除によって覆され、消滅させることはできないから、Oの代金を保持する正当な実質的な利益は失われるものではないと反論する。
かかるOの反論に対し、Gは、539条を根拠に、Tとの売買契約を債務不履行解除し契約が遡及的に消滅した事実を対抗できると再反論する。
そこで、Oの主張する538条とGの主張する539条のいずれが優先して適用されるか。
538条の趣旨は、契約を前提として発生する第三者の確定した法的地位・権利を保護することにある。かかる趣旨からすれば、第三者の法的地位発生の根拠である契約が、契約解消原因が存在するなど法的な正当性を欠く場合、第三者の法的地位・権利もまた正当性を欠く。また、契約において生ずる当事者の抗弁権の主張の機会を確保する必要がある。
そうとすれば、538条は、当事者の合意で任意に第三者の権利を消滅させることができないという意味をもつにとどまる。したがって、債務不履行解除などの契約解消原因が存在し、契約の法的正当性が欠ける場合、538条は適用されない。
一方、債務者は、539条を根拠に第三者に契約に基づく契約解消に伴って生ずる抗弁を、第三者に主張することができる。
本件の場合、GはTとの売買契約に、契約解消原因であるTの債務不履行が存在するため、GT間の売買契約は法的正当性にかける。そのため、Gは、売買契約の解除の抗弁をOに主張することができる。
したがって、Oは、GにGT間売買契約の債務不履行解除を対抗されるため、Gから支払われた8万円を保持することについて実質的に正当化されない。
よって、Oが8万円を「利益」として得ることについて「法律上の原因」を欠く。
以上から、Gは、Oに対して不当利得返還請求権を根拠に、8万円の支払いを請求することができる。
【注】
「第三者のためにする契約」は、頻出事項というわけではないが、短答式試験ではその理解が問われている。条文の構造と具体例、代表的な論点について押さえておこう。
【合格の道標】No.18
以前にも触れたように、合格答案を作成するためには、問題演習を通じてできるだけ多くの答案を作成し、自分の弱点を発見し、それを補強する作業を繰り返すことが必要となる。
問題演習・答案作成の素材としてどんな問題を扱えばよいか。もちろん、一番の素材は過去問である。いわゆる「典型論点」でも、当該具体的事案との関係や問い掛け一つに応じて、書き方や論点を導出する過程が変わることがある。過去問を通じ、こうした本試験特有のひねりや問い掛けへの対応力を身に付けることが必要だ。
こうした本試験特有のひねりや問い掛けに対応する力を身に付けるには、過去問を素材にするのが一番効果的であると同時に、実際に制限時間内に過去問の答案構成を行い、答案を作成する作業を繰り返す必要がある。一度出題された問題も、何度も繰り返す。例えば、時間制限を少し厳しく設定するなどして答案作成をするのも効果的だろう。
もちろん、答案作成の作業はそれなりの時間を費やすので、上記作業をこなすことが時間的に厳しいという人は、答案構成を繰り返すことをメインにするのでも構わない。ただ、数年分ある過去問につき各年度について一度は、制限時間内に答案作成を行う機会を設けてほしい。問い掛けに応ずるための工夫や構成の仕方、頭の中で考えていることを答案上にわかりやすく示すことの難しさや独特のリズム、そして時間の使い方を体感することなく過去問を理解することは難しいと思うのだ。
また、実際に制限時間内に答案作成をする作業を行うことで、考査委員が作成された「出題趣旨点実感」を読む際に「自分ごと」として当事者意識をもって真剣に読むことができることは前回触れた。一方で、「出題趣旨・採点実感」を、答案作成者としての当事者目線ではなく、「出題者目線」を持って読むと逆効果を招く場合もある。なぜなら、何も考えることなく「出題者目線」を持つと、「なんだ、この論点なら自分は知っているし、外すわけがない。意外と皆書けなかったみたいだな。レベル低いな。これなら答案なんて書くまでもなく余裕だ」などと、答案作成を避け、無意識のうちに出題者の立場という「高み」に立って悪い意味の安心感を得てしまい、「試験の現場で合格答案を作成するにはどうすればいいのか」という実践的な当事者意識が抜け落ちてしまうからだ。もちろん、「出題者は何をどこまで求めているのか」という真の意味での「出題者目線」を持つことは大切だ。しかし、この真の意味の「出題者目線」を持つためには、やはり実際に問題を検討し、答案を作成することが必要となる。
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▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 三が日も終え、いよいよ猛ダッシュだ。走って走って、走りまくれ。“スコーン”と“爆勉”しよう! 絶対合格だ!!
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