次の記述について解答せよ。
【設問1】
差止訴訟における「重大な損害」と非申請型義務付け訴訟における「重大な損害」は,その内容を同じくするか。理由と共に答えよ。
【解答】
➀内容を同じくするものではない。
②非申請型義務付け訴訟の場合,原告が被告に求める「処分」が適切に行われないことにより,原告に生ずるおそれのある損害を内容とする(重大性の判断要素については,行政事件訴訟法37条の2第2項が規定する)。非申請型義務付け訴訟の原告にとって,「処分」は,適法であり,かつ行われるべきものである。
これに対して,差止訴訟の場合,「処分」がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができず,当該「処分」がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難な損害を内容とする(重大性の判断要素については,行政事件訴訟法37条の4第2項が規定する)。
差止訴訟の原告にとって,「処分」は取消訴訟の対象になるような違法性をもち,かつ行われるべきではないものである。すなわち差止訴訟は,いわば「前倒しの取消訴訟」としての機能をもつため,上記のような内容となる。
⇒両訴訟の異同について,きちんと整理しておこう。短答式試験はもちろん,論文式試験においても両訴訟の異同を正確に理解しているかを問う問題が出題されている(例:平成26年度[設問3],平成27年度[設問1]等)。
【設問2】
執行停止の申立てを行うためには,本案訴訟について訴訟要件を充足する必要があるか。理由と共に答えよ。
【解答】
➀本案の訴訟要件を充足する必要はない。
②訴訟要件の有無は,事実審の口頭弁論終結時に決せられるものである。訴訟要件の有無の判断を待っていたら,処分の効力を暫定的に停止する執行停止の申立の趣旨を没却する。必要なのは,本案訴訟が適法に係属していることである(行政事件訴訟法25条2項本文「処分の取消しの訴えの提起があった場合」)。
【設問3】
ある教職員Aが,職務命令(以下,「本件職務命令」)に従わないことを根拠に,懲戒処分の対象となった。Aは,懲戒処分を受けるおそれを除去するために,どのような訴えを提起すべきか。実効的な訴えを,二つ挙げよ。仮の救済は,考慮しなくてよい。
【解答】
➀懲戒処分に対する差止訴訟(懲戒処分の差止めを求める訴え)
②本件職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟)
なお,本問は司法試験論文式試験平成23年度公法系第2問[設問2]小問(1)を改変し,さらに大幅に簡易化したものだが,問題を解く視点においては共通する。
【設問4】
建築基準法第6条第1項の定める建築確認及び同法第9条第1項の定める違反是正命令に関し,次の問いに解答せよ。
(参照条文)建築基準法
第6条 建築主は,(中略)建築物を建築しようとする場合(中略)においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。
2~13(略)
第9条 特定行政庁は,建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件 に違反した建築物又は建築物の敷地については,当該建築物の建築主(中略)に対して, 当該工事の施工の停止を命じ,又は,相当の猶予期限を付けて,当該建築物の除却,移転, 改築,増築,修繕,模様替,使用禁止,使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
2~15 (略)
[問]
建築主事は,建築主と建築に反対する近隣住民とが一定期間協議することを停止条件として建築確認を行うことができるか。
【解答】
➀停止条件として建築確認を行うことはできない。
②附款である条件は,処分本体に従たる定めとして附されるものである。附款は,例えば停止条件のように一定の条件が成就するまで処分本体の効果の発生を制限するものである。そのため,附款は,当該処分本体の根拠法令の目的に沿うものでなければならない。
本問における処分本体は建築確認である。建築確認の目的は,建築基準法6条1項にあるように,建築計画が建築基準関係規定等の法令(条例含む)に適合的かどうかを判断する点にある。
本問における反対住民との一定期間の協議は,あくまで近隣住民との間に生じうる将来の紛争防止のために行われる。これは,建築基準法6条にあるような,建築計画の建築基準関係規定等の法令等に適合するかどうかと関係がない。
したがって,建築主事は,建築主と建築に反対する近隣住民とが一定期間協議することを停止条件として建築確認を行うことができない。
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