行政法

行政法ドリルNo.22[問題編]

【設問】
次の記述の正誤を,理由と共に答えなさい。
課税関係においては,租税法律主義の厳格な適用を貫かねばならないので,納税者は常に課税当局側の判断に従った納税をしなければならない。

【分析の視点】
(1)原則論の確認及び修正の要否・理論構成
本問は,問題文こそ短いが,短答式論文式いずれにおいても出題可能性の高い論点を含む。
解答に際しては,「原則・修正(例外)」の流れを充分に意識しよう。原則論を確認し,その原則論を維持すべきかどうか。背後にある対立利益を明らかにしつつ理論構成をすることが大切だ。具体的には,「法律による行政の原理」が常に貫かれるべきか,例外はないのか,あるとすればどのような場合に許されるのか等といった議論の流れをイメージしてみよう。その際,具体的な事案を想定することも有用だ。
(2)本問に関連する(ベースとなる)判例
本問のベースとなる判例は,最判昭62・10・30である。「原則・修正(例外)の流れを意識しよう」と先述したが,その際に意識すべきは,原則論の重要性をしっかり確認しておく(換言すれば,原則論は容易に修正されるものではない)ことだ。
本問における原則論は,租税法律主義の原則である。憲法でも学ぶように,租税法律主義の原則は,国家(行政権)の恣意的な権力行使を防止するために厳格に維持されなければならない。この点,最高裁は,昭和62年判例においてあくまで租税法律主義という「法律による行政」の原理が厳格に貫かれるべき立場を堅持しており,明確性・安定性が求められる租税関係における信義則の適用(=個別・具体的対応)について,きわめて慎重な姿勢を取っている。このように,「法律による行政の原理」と「納税者の信頼保護の要請」の対立を慎重に調整することが大切だ
(3)判例の判断枠組みを利活用して解く
最判昭62・10・30の判断枠組みは,予備試験論文式試験平成27年度行政法[設問2]において参考にすることができる。ただ,この予備27年度[設問2]は,租税関係ではなく,河川法が適用の有無が議論されたケースである。そのため,同問において問題となる利益(原告側と対立する利益)は「人の生命身体の安全」である。それゆえ,同問では,課税の場面において問題となる対立利益とは異なった性質をもつ利益が対立利益としてクローズアップされる点に注意が必要だ。この点を踏まえ,予備27年度[設問2]において昭和62年判例の射程が及ぶかどうかを検討してみよう(具体的には,予備27年度の事案において,原告側の「信頼」を保護することの要請が,「人の生命身体安全」を上回るかどうか)。なお,下記③に示す「行政行為と信義則」に代表される「行政行為と一般原則」も,短答式はもちろん論文式試験においてしばしば出題される重要事項である(予備試験論文式試験平成28年度等を参照)。

【確認すべき知識】
租税法律主義(憲法84条)・納税者間の公平・平等の原則(憲法14条1項参照)
(→憲法の関連問題も併せて参照)
最判昭62・10・30の判断枠組み
行政行為と信義則(行政行為と一般原則の法理の関係)
(→短答式では,「行政上の法律関係における一般的な法原理」として,しばしば登場する。)

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