行政法

行政法テストNo.4[解答編]/ネルーの言葉(2)


・人の顔は、ウソをつけない。インド独立運動の指導者、ジャワハルラール・ネルーは、すがすがしい顔をしている。

勇ましい言葉も、残している。

<ネルーの言葉(2)>
「戦いにおいては、一人が千人に打ち勝つこともある。しかし、自己に打ち勝つ者こそ、最も偉大な勝利者である」

・「答えは、自分」なのである。予備試験・司法試験の受験生も、「敵は、自分」なのだ。

試験なんかは、ほんの小さなこと。自分に勝てば、“アッ”という間に解決できる。

では、昨日の答えを示します。


行政法テストNo.4[解答編]

参考文献等
中原茂樹・「基本行政法(第2版)」(日本評論社・2013年)
磯部力・「新訂 行政法」(財団法人 放送大学振興会・2012年)
スク東先生・「スク東先生ブログ」(スク東先生・2016年~)

次の記述について解答せよ。
①「違法性の承継」の定義
【解答】行政過程が複数の処分によって構成され,先行処分を前提として後行処分が行われる場合に,後行処分の取消訴訟において,先行処分に存在する違法性(瑕疵)を後行処分において主張できるかという問題をいう。
②「違法性の承継」という概念を検討する実益はどこにあるか。
【解答】仮に後行行為の取消訴訟で先行行為の違法性(瑕疵)を主張できるとすると,行政処分をめぐる法律関係の早期安定を図る出訴期間制度(行訴法14条)の趣旨を没却する恐れがある一方,先行処分の違法性(瑕疵)を主張する者の手続保障(=実効的な権利救済の手段確保)にも配慮する必要がある。そこで,両利益を調整するために「違法性の承継」を検討する実益がある。
③「違法性の承継」における先行行為に「処分」性は認められるか。
【解答】認められる。①の定義及び②の実益からも分かるように,先行行為に「処分」性が認められないとすれば,あえて(条文にない)「違法性の承継」という概念を創出して議論する必要はない。なぜなら,先行行為に対する取消訴訟の出訴期間を問題にする必要はなく,「処分」性が認められる後行行為の違法性(瑕疵)を主張し,後行行為に対する取消訴訟を提起すれば足りるからだ。
④「処分」概念を構成する要素である「公権力」性の定義
【解答】法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に相手方の法律関係を規律(形成)する行為をいう。「公権力」性については,「契約」と対比する形で押さえよう。「契約」のような私法上の行為は,当事者同士が対等の立場で双方の合意によって相互の法律関係を規律する行為である。「公権力」性は,これとは対照的に,行政庁等の行政機関が「上から,一方的に,相手方の意思を介在させることなく」相手方の法律関係を規律するのである。
また,「公権力」性の有無は,行訴法における「抗告訴訟」と「当事者訴訟」を区分する判断基準にもなるので押さえておこう。
⑤(1)一般的に「通達」に上記「公権力」性は認められるか。(2)「通達」は国民の権利義務に影響を及ぼすことがあるか。あるとすれば,どのような場合か。
【解答】(1)認められない。一般的に「通達」とは,上級行政機関が関係下級行政機関(及
び職員)に対してその職務権限の行使を指揮し,職務に関して命令するために発するもの
あり,行政組織内部における命令である。行政組織内部における命令なのだから,外部性を
もたない。そのため,「通達」は,相手方の法律関係を一方的に規律(形成)する作用をも
たない。「公権力」性の定義(上記④参照)に照らすと,「通達」は,法を根拠とする優越的
地位に基づいて一方的に相手方の法律関係を規律(形成)する行為にあたらない。したがっ
て,一般的に「通達」に「公権力」性は認められない。
(2)影響を及ぼすことがある。例えば,法令の解釈を変更する場合である。法令は国民の
権利義務に関わる規範である。そのため,法令の解釈が変更されれば,国民の権利義務に影
響が生じる。
⑥「差止訴訟」の訴訟要件である「重大な損害」性の意義
【解答】処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止を受けることなどにより容易に
救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるの
でなければ救済を受けることが困難なものであることが認められる場合をいう。
⇒最高裁平成24年2月9日判例参照。差止訴訟は,「前倒し的な取消訴訟」といわれることがある。抗告訴訟の原則形態である取消訴訟によって既に行われた「処分」を攻撃することで権利救済の目的が達せられるのであれば,未だ行われていない「処分」をあえて「前倒し的」な形で攻撃する必要はないということになる。
⑦「差止訴訟」の訴訟要件である補充性の意義
【解答】個別法に特別の規定が存在する場合をいう。法令により,差止め訴訟の対象となっている処分の前提処分について取消訴訟を提起すれば,かかる前提処分に後続する処分たる差止めの対象処分もすることができないと規定されている場合である(ここでも「差止め訴訟は,前倒し的な取消訴訟」との視点が参考になる。)
⑧「法定外抗告訴訟」が適法であるための要件
行政事件訴訟法が明文により規定した手段によって目的が達成できないことが必要となる。

【スク東先生の実践教室】
ここで,スク東先生である。
スク東先生(以下,「先生」という。)執筆の人気ブログ「スク東先生ブログ」では,短答式試験の過去問(主に民法)を題材に,先生と生徒の花子さんが議論を繰り広げている。先生が問いを立て,花子さんがそれに解答し,解答に対して先生が評価を加える形式で進んで行く。多くの場合,先生の花子さんに対する評価は厳しく,そして辛口だ。
受験指導の経験が豊富な先生は,これまで多くの受験生と議論し,その中で受験生が間違えやすい箇所を熟知しているに違いない。そのため,先生は,受験生が間違えやすい事項を類型化した上で「花子さん」というフィクションの生徒に解答させ,あえて辛口のツッコミをすることを通じて受験生に注意を喚起しているのだろう。そればかりではない。後ほど詳しく述べるように,先生は受験生に対し「ブログの議論を読むだけでなく,気づきを得る」ことも望む。先生のブログには,そのための工夫が随所に見られる。例えば,先生のブログ5月31日付記事を見てみよう。同記事から先生が凝らした工夫(意図)を窺い知ることができる。なお,同記事の検討題材は民法29-2記述ウである。
同記事で花子さんは,先生の「どうしてでしょうか。」という問いに対し,「条文があります(20条1項)。」と解答しているが,この花子さんの解答はどうだろうか。先生が「どうしてそういえるのか,理由を説明してください。」と問うたのに,花子さんは「条文があります(20条1項)。」という解答で済ましている。この花子さんの解答は,完全に間違っているとまでは言い切れないにしても,先生の問いに対応した解答とは言い難い。花子さんの「条文があります(20条1項)。」という解答は,「20条1項という規定があることを知っていますよ。」という知識のアッピイルに過ぎない。以下で詳述するが,先生はこうした花子さんの解答に対し「確かに29-2ウについては20条1項が規定する通りです。しかし,私が尋ねたのは同記述の理由です。理由を問うたのに,知識があることをそのまんまアッピイルしても問いに答えたとは言い難いです。」という黙示的な注意を喚起している。あるいは先生は,花子さんのいささか充分でない解答の仕方をあえて示すことで,「仮に問いの内容が完全に分からなくとも,せめて形式的には問いに答える姿勢を見せるが吉」ということを暗に示しているともいえるだろう。
ところで,筆者は上記で「黙示的な注意」「暗に示した」という表現をした。つまり先生の喚起した注意は「明示的」ではないのだ。では,なぜ先生は,花子さんに上記のような注意を明示的に行わなかったのか。「理由が問われているのに,条文の存在を指摘するのみでは解答として不充分ですよ。」といった厳しいツッコミをしてもよさそうなはずである。
先生が明示的な注意をしなかったことには理由がある。その理由とは,既に上述したように「黙示的な注意喚起」にあることは間違いないだろう。以下では「黙示的な注意喚起」を考察し,先生の意図を探求してみたい。
「黙示的な注意喚起」の目的とは,読者に気づきを得てもらうことにある。先生の意図は,読者に「この花子さんの解答の仕方っていいのかな。確かに条文はあるけど,先生の問い掛けにちゃんと答えていないような・・」といった気づきを得てもらうことにあるのだ。あるいは先生は,読者に向けて「皆さんも,花子さんと一緒に私の問い掛けに正確に答えてみてください。まず,花子さんの解答が問い掛けにきちんと対応しているかをチェックしましょう。ここを見過ごしてはいけません。私がわざわざ明示せずとも,解答については,内容の正しさばかりでなく形式的な対応関係も意識するが吉」というメッセージを投げかけたともいえよう。
こうした黙示的な注意喚起によって得た気づきは,「行間を読む力の養成」に通じる。今回紹介した例で言えば,花子さんの解答が正しいかどうか読者自身が積極的に「行間を読む」ことで検証する力を養成することが先生の意図であった。前回(5月31日付本欄記事)も書いたように,先生のブログでは読者の学習効果を高めるために様々な工夫がなされている。先生のブログを読む際は,先生が凝らした“工夫”を充分に意識し,それに応答する気概をもつことが大切だ。


・すがすがしい顔をした人と、一緒に仕事をし、同じ時代を生きたいものだ。

あなたも、ネルー元首相の顔を見られて、“何か”を感じてもらいたい。

絶対合格!!

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