刑事実務基礎

刑事実務基礎No.4[解答編]/吉川英治の言葉(2)

 


・吉川英治は、小説「宮本武蔵」の中で、若い人のあり方を投影している。

次のような言葉を込めて、剣豪の若き日を語っている。

<吉川英治の言葉(2)>
「生きていること、それはすでに、世間の恩であった」

・吉川小説のセリフの中には、今、世に出る寸前の予備試験・司法試験の受験生に役立つ心構えが数多く、書かれている。

では、昨日の答えを示します。


刑事実務基礎No.4[解答編]

参考文献等
今村核・「冤罪と裁判」(講談社現代新書・2012)
佐々木健一・「雪ぐ人 えん罪弁護士 今村核」(NHK出版・2018)
山本悠揮・「刑事実務基礎の定石」(弘文堂・2016)
渡辺咲子・「刑事訴訟法講義[第6版]」(不磨書房・2012)
スク東先生・「スク東先生ブログ・同ツイッター」(スク東先生・2016~)

次の記述について解答せよ。刑事訴訟法名は略す。

【問➀】自白法則における任意性説に立った場合,任意性に疑いのある自白に証拠能力が認められないのはなぜか。
【解答】任意性に疑いのある自白は,虚偽である蓋然性が類型的に高く,誤判の危険を誘発する恐れがある。また,任意性に疑いのある自白は,強制された自白である可能性があり供述の自由を侵害する。
【問②】公判前整理手続において,弁護人に認められた証拠開示請求にはどのような類型があるか。
【解答】弁護人に認められた証拠開示請求は,以下の(1)(2)の2つである。(1)類型証拠開示請求権(316条の15)と(2)主張関連証拠開示請求権(316条の20)である。
【問③】公判前整理手続において,弁護人Iが検察官に対し,参考人OGKに対する取調べに関する取調べ状況記録書面の開示を求める場合,弁護人Iはどのような手続によるべきか。条文上の根拠規定を挙げよ。
【解答】316条の20(主張関連証拠開示請求)を根拠として検察官に対して開示請求を行う。「取調べ状況記録書面」という点から,316条の15第1項8号を根拠とすべきかに見えるが,この8号は被告人及び共犯者(身体拘束又は控訴提起された共犯者であって,検察官が証人尋問請求をした者又は証人尋問を予定している者)に対する取調べに関するものに限られる。なお,被告人の取調べ時間等を知りたい場合は,316条の15第1項8号に基づき被告人の取調べ状況記録書面の開示請求を行うことになる。
【問④】ある痴漢事件の公判において,手続は裁判所による証拠調べ段階に入っていた。このまま結審すると弁護側は打つ手がなくなる。そこで,弁護人Iは,痴漢が行われたとされる車両の車載カメラの映像の鑑定を専門家に依頼し,その鑑定結果を新たな証拠として提出することが必要だと考えた。この場合,弁護人Iは鑑定結果を証拠として提出するために,どのような手段を行うことができるか。
【解答】裁判所に期日間整理手続の請求(316条の28第1項)を行うことができる。これにより,第1回公判期日後であっても当事者は新たな証拠を提出することができる。
【問⑤】以下に示すのは架空の「スク東先生と花子さんの問答」である。仮に以下のやり取りが刑事裁判における尋問で行われた場合,「スク東先生」の第二発言には問題点があるか。

スク東先生:「花子さん,正解です。よく分かりましたね。」
花子さん:「ええ,昨日基本書の該当箇所をじっくり読み込んだ成果です。」
スク東先生:「なるほど。基本書の該当箇所を暗記してきたということですね。それでは理解して解答したことにはなりませんよ。」

【解答】上記「スク東先生」の第二発言は,刑事裁判における尋問であれば「要約不適切な尋問」にあたり,許されない(刑事訴訟規則199条の3第3項,第5項)。「花子さん」は,単に「基本書の該当箇所を読み込んだ」としか発言しておらず,「該当箇所を暗記してきた」とは言っていないのである。スク東先生の第二発言は,今回は(も)少々勇み足だったようだ。ただ,スク東先生,「理解」を第一義とするその姿勢には敬服すべきものがある。なお,他に許されない誘導尋問として「誤導尋問」がある。
【問⑥】以下の「」内の事実は,犯人性を推認させる事実(犯人と被告人の特徴の一致)を推認させる事実として意味をもつか。
「被告人は身長155センチメートル程度,体格は小太り,黒の長袖シャツを着て,カーキ色の半ズボンを穿いていた」
【解答】意味をもたない。間接事実は,単独で犯人と被告人をつなぐもの(犯人側の事情と被告人側の事情の双方を含むもの)でなければならない。一方のみでは犯人性を推認させる事実とはいえないからである。本問の場合,「」内の事実は被告人側の事情しか含まれていないため犯人性を推認させる間接事実としての意味をもたない。意味をもたせるためには,犯人もまた犯行時に上記「」内で示した被告人と同じ特徴を備えていた事実を示さなければならない。
【問⑦】勾留の必要性(207条1項本文・87条1項)の有無を検討する際,比較衡量の対象となる事項は何か。
【解答】捜査の必要性(勾留による捜査機関側の利益)と被疑者が勾留によって受ける不利益である。例えば,軽微な事案であれば勾留という(逮捕に比べ)長期に及ぶ身体拘束を行ってまで捜査をする必要性は高くない方向に向かう。被疑者においては,軽微事案であれば,これまで築き上げてきた私生活・社会的生活を打ち捨ててまで(逃亡により失う利益を覚悟し,生じるリスクを取ってまで)逃亡に及ぶ動機に乏しいといえるだろう。そのため,勾留によって被疑者の生活上の利益を害してまで身体拘束をするべきではない。このように,軽微な事案であれば,捜査としての被疑者の身体拘束の必要性はさほど高くなく,一方で勾留によって被疑者が被る不利益は大きいので勾留の必要性に欠ける。
【問⑧】(1)証拠物の取調べはどのように行われるか。(2)証拠物たる書面の場合はどうか。
【解答】(1)証拠物(凶器,犯行状況が写っている防犯カメラ等)の取調べ方法は,展示(306条)である。被告人に証拠物を示して確認する方法である。証拠物たる書面(文書偽造罪における偽造文書等)の場合,朗読と展示による(307条)。(2)証拠書類(目撃者の供述証拠,捜査報告書等)との違いに注意。証拠書類については,朗読によるのが原則である(305条)。
【問⑨】刑事訴訟規則205条1項ただし書の趣旨はどこにあるか。
【解答】証拠決定に際しては,既に当事者の意見を聴いているため(刑事訴訟規則190条2項)、改めて相当性について異議を認める必要はない点にある。
【問⑩】321条3項「真正に作成されたものであることを供述」(真正作成供述)の意味するところは何か。
【解答】次の(1)(2)の両方を意味する。(1)「間違いなく自分が作成した」という作成名義の真正と(2)「検証したところを正しく記載した」という記載内容の真正を意味する。条文の文言が「真正」とあることから,「(検証又は実況見分)調書の記載内容が真実であること」(を公判廷で証言しなければならない)と勘違いしないよう注意。
【問⑪】私人が作成した燃焼実験報告書は,321条3項は準用されるか。
【解答】準用されない。321条3項が作成主体を「検察官,検察事務官又は司法警察職員」と規定する趣旨は,作成された書面の内容を信用できるだけの制度上の保証を示す点にある。そうすると,321条3項が予定する調書は,そのような制度上の保証が具備された書面に限定されることになる。また,制度上の保証を担保する作成主体としては,公務員(税務職員,消防職員等)である。弁護士は私人なので,制度上の保証を担保する作成主体たりえないとされる。土地家屋調査士作成の書面についても同様である。
【問⑫】公判前整理手続に付された事件において,弁護人が被告人に対する警察の取調時間を知りたいと考えた場合,どのような手段によるべきか。
【解答】316条の15第1項8号に基づき,検察官に証拠開示請求を行う。【問③】も参照。

【スク東先生的教育講座】
「スク東先生に訊こう」
スク東先生(以下,「先生」という。)は,「学問的知識」ではなく「誰でも容易にアクセス可能な情報」で問題を解く手法を提唱する。「誰でも容易にアクセス可能な情報」とは,「誰にも理解可能な情報」と言い換えることができる。
「理解」こそ先生の解説の要諦であり,愛用する言葉だ。先生は,「理解」をもって「勉強」の進捗度合いが分かると口角泡を飛ばしまくって喝破する。しかし,何が「理解」なのか。それを一概に言えるのだろうか。「勉強」が進んでいるのかどうかを一義的に計測する基準があるのだろうか。先生は,価値相対主義者ではない。先生は,その基準の存在を疑っていない。先生からすれば,「テキストの類を捨つる可し。受験生は恰も創造の大気に擁せられ思考の海に浴するものと云ふ可し。かように試験勉強に於いては道具を用いず自らの頭だけで勝負する可し。之こそ勉強の神髄、理想郷と云ふ。(「スク東先生講義録大全第1巻」所収「東花子宛書簡」)」
これが,勉強の極致,受験生最高の状態である。先生は,理解に基づく思考をもってすれば試験などおそるるに足りぬ,勉強などする必要がないと喝破し,試験を相対化するのだ。
しかし,先生は,そう知った上で,あるいは知っているからこそ,まだまだ受験生の「理解」の度合いが低い現状においてなすべきことを,なすほかはない。現状でやれることをやるほかはないと自覚するのだ。先生は「シニカルな現実主義者であり,抑制の効いた理想主義者」であろう。下の囲み枠内で紹介するのは,先生のこうしたIsmが堂々開陳されたつぶやきだ。「スク東先生Twitter」2018年1月21日付のつぶやきである。

「【できる範囲で考えよう】できる範囲で考えることが大事です。その結果、間違えても問題はありません。足りなかった点を埋めれば良いからです。逆はまずいです。足りない以前の問題だからです。これだと改善が困難です。では今日も1日勉強頑張りましょう。」(原文ママ)

一見すると,何が何だか分からない文章だ。「できる範囲で考え」た「その結果,間違え」るとはどういうことなのか。「逆はまずいです。」の「逆」は,何の「逆」なのか。「まずい」は何を指しているのか。「不味い」という意味なのか。それならば「逆」は食べ物であり,さらに「美味しい」場合もあるのかどうなのか。あるいは先生は,「おいしい生活」(糸井重里氏による西武百貨店のキャッチコピー・1982年)に対抗して,「まずい勉強」というキャッチコピーを生み出そうとしたのかもしれない。
このように,上記tweetに対しては「何が何だか分からん。分かるように書くこと。」と悪態を付きたくなる・・と,思わず失礼(だが率直)な感想を抱いてしまいがちだが,ここは一つ冷静に見たい。何しろ先生のtweetなのだ。ぐっと堪えて主観的・短絡的な感想を排除し,一層高尚な視点からじっくり解析してみよう。必ず学びが見つかるはずだと思いつつ。
解析の結果,筆者の読み方が失礼&浅すぎてどうしようもないことが分かった。やはり先生だ。含蓄のある深いことを述べているのである(先生の意図は,「悪文」にしか見えない文章をあえて作成・提示し,我々の文章解析力を向上させる教育的配慮にあるのだろう)。前述の先生のtweetをより具体化すれば,次のようになる。「理想は,常に正確な解答をすることです。しかし,それを愚直に目指すと苦しくなってしまい,勉強そのものがイヤになってしまいかねません。そのため,自分に不足していること,どうすればその不足分を強化できるか。それをしっかり分析することが大切です。その分析をたゆまず継続すれば,やがてできなかったことができるようになるでしょう。できる範囲のことを着実に行い,理想を目指す姿勢が吉。本日も天気明朗にて浪は穏やかなりし候。勉学に励むが誠に宜しきにて候が候。」・・まさに理想を掲げつつも,あくまで実践すべきは現実的にできるところから確実に,ということだ。
先生の文章や解説を読む際には,表面的な感想に終始せずにその文章や解説が意図する深い所をキャッチして自分に活かす姿勢が大切だろう。


・世間の恩。これに気づけば、目前の試験は、すぐ合格できる。テストというものは、そんな風にセットされている。

つまり、静かで強い心をもてば、今、挑戦している戦いに、必ず勝てるようになっている。

この辺のことをもっと理解したい人、そして、戦いに勝利した人は、「新・成川ゼミ」の「シークレット・セミナー」で、私と語り合おう。ポイントは、次の2つである。

①社会への恩(感謝)
②速く確実に合格する黄金律

後は、静かに机に向かうだけで、結果が出ます。ジタバタして暗記しまくる日々を浪費しなくて済む。

絶対合格!!

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