行政法

行政法ドリルNo.13[解答編]


【設問➀】

行政指導に関する次のアからエまでの各記述について,法令又は最高裁判所の判例に照らし,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

ア.法令に違反する行為の是正を求める行政指導を受けた者は,原則として,当該行政指導をした行政機関に対して,当該行政指導の中止等の措置を求めることができる。
イ.上記アの求めがあった場合,当該行政機関は,必要な調査を行い,当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないことが客観的に明白である場合に限り,当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。
ウ.同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは,行政機関はその基準として行政指導指針を定めるよう努めなければならない。

【解答】
アは,1である(正しい)。
行政手続法36条の2第1項本文に規定されている。同条は本文とただし書きという構造を取る。本文が原則,ただし書きがその修正である。本問のアは同条本文が規定する原則を問うものであったが,同条ただし書きが適用される場面について出題されてた場合も解答できるようにしておこう。
なお,行政指導を受けた者は,当該行政指導が行政指導の根拠となった法律(行政手続法36条の2第1項本文かっこ書きにあるように,中止等の求めの対象となる行政指導は,その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)に規定する要件に適合しないと「思料するとき」に中止等の申出をすることができる。法律が規定する要件に適合しないことが客観的な事実として存在することや,当該行政機関が「法律が規定する要件に適合しないと認める」ことが,中止等の申出の要件となるのではない。
イは,2である(誤っている)。
行政手続法36条の2第3項が規定するように,当該行政機関が当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない場合とは,「当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるとき」であって,当該法律に規定する要件に適合しないことが「客観的に明白である場合に限るとき」ではない。行政指導を行った行政機関が,(手持ちの資料等を基に)当該行政指導の中止等の措置を講ずるかどうか自ら判断するのだから,法律規定の要件に適合するかどうか判断することは困難ではないといえそうだ。あるいは,行政訴訟事件のように司法権が行政機関の判断に異を唱える場面ではないから,司法権による行政権への介入の危険がなく要件を厳格にする必要がないとも言い得るだろう。
以上から,「認めるとき」という行政機関の裁量的判断を尊重する規定ぶりになっているのだと考える。
行政手続法に限らずこうした条文の規定ぶりには意を払っておきたいものだ。本試験問題では,しばしばこのような条文の規定ぶり等について問う問題が出題される。出題の趣旨は,決して文言を暗記しているかどうか(だけ)を試すことにあるのではなく,条文の背後にある考え方や利益調整の視点を理解しているかを試すことにあるのだろう。条文を参照する際は,ぜひ「なぜこのような規定ぶりなのだろうか」まで考えを巡らせておきたい。
ウは,2である(誤っている)。
行政指導指針については,行政手続法36条に規定されている。行政指導指針について押さえるべきは下記➀②である。さらに条文の規定として抽象的に押さえるに留まらず,25-27イに代表されるように具体的なケースにおいて使えるようにしておくことが大切だ。例えば,ある市においては,建築紛争が発生した場合は常に建築確認を留保して建築主に話合いを通じた紛争の解決を図るよう建築課職員において指導する運用を続けてきたようなケースでは,行政指導指針の定立及びその公表が義務付けられる。
➀行政指導指針が定立されるべき場合とは「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をするとき」である。
②定立された行政指導指針は,原則として「公表しなければならない」ことの2点である。
なお,行政指導指針は,行政機関が独自に定立する規範であることや意見公募手続の対象である「命令等」に当たる(行政手続法2条8号ニ)点で,審査基準や処分基準等と共通するが,相違点もいくつかある。これら規範それぞれの特徴につき,相互に比較しながら押さえておこう。

【設問②】
次の文章は,食品衛生行政を意欲的に学ぶ受験生花子さんと,食品衛生行政を専門とするベテラン講師S東先生との対話である。➀から④までの下線部の各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

(参照条文)食品衛生法
第28条 厚生労働大臣,内閣総理大臣又は都道府県知事等は,必要があると認めるときは,営業者その他の関係者から必要な報告を求め,当該職員に営業の場所,事務所,倉庫その他の場所に臨検し,販売の用に供し,若しくは営業上使用する食品,添加物,器具若しくは容器包装,営業の施設,帳簿書類その他の物件を検査させ,又は試験の用に供するのに必要な限度において,販売の用に供し,若しくは営業上使用する食品,添加物,器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。
2 (略)
3 第1項の規定による権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 4 (略)
第75条 次の各号のいずれかに該当する者は,これを50万円以下の罰金に処する。
一 第28条第1項(中略)の規定による当該職員の臨検検査又は収去を拒み,妨げ, 又は忌避した者
二 第28条第1項(中略)の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者
三,四 (略)

花子「行政調査は,調査の相手方に任意の協力を求める調査(以下「任意調査」という。),刑罰等の制裁による間接的な強制力のみを伴う調査(以下「間接強制調査」という 。)及び直接的物理的な強制力を行使し得る調査(以下「直接強制調査」という。 )に分類することができるとのことですが,食品衛生法(以下「法」という )第28条による調査は,いずれに当たるのでしょうか。」
S東先生(以下,「S」という。)「➀条文見ておきますか。法第75条からすれば,間接強制調査ができるのは,間違いないところでしょうね,論理的に。
花子「間接強制調査においては,調査の相手方に対し,協力を拒んだら法第75条により刑罰が科されると警告すれば,調査に協力させることが容易になるのではないかと思いますが,このようなやり方には問題はないでしょうか 。」
S 「②そのようなやり方をすると,法第28条第3項違反になるでしょうね。
花子 「間接強制調査が認められている場合には,直接強制調査をすることはできないのでしょうか。」
S 「あ,いいご質問ですね。その点については議論の余地がありますね。仮に直接強制調査が認められるとしても,営業者等への報告の要求と,臨検検査及び食品等の収去とを,区別して考える必要があるでしょう。③臨検検査及び収去と比較すると,報告の要求は,その性質上,直接的物理的強制になじまないのであります。
花子 「直接強制調査が可能な場合があるとしたら,憲法第35条により,裁判官の発する令状が必要になるのではないでしょうか。法には,そのような手続について定めがないのが気になるのですが。」
S 「④所得税法による検査については,法律上,裁判官の発する令状が要件とされていな いませんが,このことが憲法第35条に違反するかどうかが争われた事例において,最高裁判所は, 強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の一つとして,憲法違反ではないという判断を下しているのであります。判例が,強制の程度以外にどのような点を考慮しているかも考えた上で,法第28条第1項による調査について検討する必要がありそうっすよね。」

【解答】
➀は,1である(正しい)。
法75条によれば,法28条に違反した場合,刑罰として罰金が科される。この罰金は,法28条に違反した場合に制裁として科されるものである。すなわち,法75条が規定する刑罰としての罰金は,法28条の遵守を間接的に強制する機能をもつといえる。法28条が,協力を渋る相手方に対し「オレ(法28条)のバックには法75様が付いているんだぞ。オレを軽んじたら法75様に言い付けて懲らしめてもらうからな。だからオレ(法28条)を尊重しろ。」とイキがるイメージか。
②は,2である(誤っている)。
「犯罪捜査のため」とは,刑事責任の追及を目的とすることを意味する。法28条に違反した場合に法75条によって刑罰が科されると警告する行為は,法28条が予定する行政調査に協力することを間接的に強制することを目的とするのであって,調査の相手方の刑事責任を追及することを目的とするのではない。
③は,1である(正しい)。
臨検検査や収去といった行為は,直接強制になじむ行為である。直接強制とは,直接義務者の身体や財産に実力を加えて,義務の履行があったのと同一の状態を実現するという文字通りダイレクトな手段である。臨検や収去は,いずれも対象者の意思を制圧し実力を用いる形で,これらが履行されたのと同一の状態を実現するものだ。これに対して,報告という行為は相手に必要事項に係る事実の陳述を求める行為であり,これは直接強制になじむものではない。
④は,1である(正しい)。
憲法35条が裁判官の発する令状を必要とする行為として列挙するのは,「捜索」等といった直接的物理的な強制にわたる行為である。所得税法における検査は,税の確実な賦課徴収を目的として行われる検査であって,刑事責任の追及を直接の目的とし直接的物理的強制力をもって行われるものではない。そのため,強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の一つとして,憲法違反ではないと判断されたということができる。

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