行政法

行政法ドリルNo.17[問題編]


【設問】
水道事業者による給水拒否に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例に照らし,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。
ア. 水道事業者である地方公共団体が,同地方公共団体が定めた建築指導要綱に基づく行政指導に従わないことを理由に建築中のマンションにつき給水契約の締結を拒否した場合 それが当該建築指導要綱を順守させる目的によるときは,水道法第15条にいう「正当な理由」があり,違法な拒否には当たらない。
イ. 建築基準法に違反して建築確認を取得せずになされた増築部分について,水道事業者である地方公共団体の職員が給水装置新設工事の申込書を返戻した場合,その趣旨が,建築基準法違反の状態を是正して建築確認を受けた上で再度,当該工事の申込みをするよう一応の勧告をするにとどまるものと認められるときであっても,それは申込みに対する違法な拒否に当たる。
ウ. 水道事業者である地方公共団体が,建築予定のマンションについての給水契約締結の申込みを拒否した場合,それが,専ら慢性的な水不足の状況の下で水道水の需要の増加を抑制する目的によるときは,水道法第15条にいう「正当な理由」がないため,違法な拒否に当たる。

水道法(参照条文) 第15条第1項水道事業者は,事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは,正当な理由がなければ,これを拒んではならない。 1. ア○ イ○ ウ○ 2. ア○ イ○ ウ× 3. ア○ イ× ウ○
4. ア○ イ× ウ× 5. ア× イ○ ウ○ 6. ア× イ○ ウ×
7. ア× イ× ウ○ 8. ア× イ× ウ×

[分析のためのdialogue]

S東先生「水道事業者である地方公共団体による給水を巡る問題ですが,複数のテーマや概念が混在している問題です。あくまで私個人の印象ですが,とりわけアが難しいと思います。アを解く上で必要な知識は,あくまで基本的な知識です。ただ,その基本的な知識は複数存在し,それらを的確に組み合わせて解くことが求められています。さらにそれら基本的な概念をどう組み合わせるのか,そもそも使うべき概念を即座に見つけ出すことかができるかどうかが難しさを醸し出している要因なのでしょう。これに対し,ウは簡単です。いわゆる“社会通念”で瞬時に判断できます。イもやや応用的ではありますが,さほど迷うことはないでしょう。イにおける『建築基準法違反の状態を是正して建築確認を受けた上で再度,当該工事の申込みをするよう一応の勧告』とありますが,行政にしてみれば公益保護の観点から私人に対して違法行為の是正を求めることは当然です。そのため,違法行為の是正を趣旨とする勧告を『違法』とすることは原則としてできないでしょう。
以上から,今回は,アを中心に検討して行きたいと思います。」
花子さん「私も,アはどのように解けばいいのか一見しただけでは分かりませんでした。ベースとなる判例があるのでしょうか。」
S東先生「地方公共団体による給水拒否の理由が,『建築指導要綱を順守させる目的』にあることから,行政指導分野の著名判例である品川マンション事件における判例の考え方を援用して解くことは可能かも知れません。ただ,この判例の考え方を援用せずとも,先ほど言ったように基本的な知識を使って解くことが可能です。では,その基本的な知識として,アではどのようなものが想起されるでしょうか。」 
花子さん「えーっと・・。『建築指導要綱に基づく行政指導』『建築指導要綱の順守』や『給水契約』という文言に着目したんですが,そこからどう考えて行けばいいか分からなくて・・。」
S東先生「そうですか。着目した点はその通りだと思います。花子さんが指摘した文言を基礎知識に結びつけることが大切です。その上で,これらの基礎知識をどう組み合わせて行くかが重要ですね。」

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