【設問】
次の記述の正誤を,理由と共に答えなさい。
課税関係においては,租税法律主義の厳格な適用を貫かねばならないので,納税者は常に課税当局側の判断に従った納税をしなければならない。
【解答】
1 誤っている(納税者は,常に課税当局側の判断に従った納税をしなければならないわけではない)。
2 租税法律主義の原則(憲法84条)や納税者間の平等・公平の要請(憲法14条1項参照)からすれば,法律の根拠もなく個別の納税者を特別扱いすることは許されない。そのため,納税者は,原則として課税当局側の判断に従った納税をしなければならない。
これに対し,課税の場面においても,課税当局は信義誠実の原則(民法1条2項)を守らねばならない。納税者の信頼を不当に害することは許されないし,信義則の法理は,法の一般原則ゆえ租税法規に適合する課税処分についても適用されるからだ。もっとも,上述のように,租税法律主義の原則・納税者間の平等・公平の要請が厳格に維持されるべき点からすれば,租税法律関係における信義則の適用については慎重であるべきだ。
そこで,納税者間の平等・公平の要請を犠牲にしてもなお,納税者の信頼を保護しなければ正義に反するような特別の事情が存在する場合に初めて納税者の信頼保護の見地から,納税者は例外的に課税当局の判断に従った納税をしなくともよい。ここでいう特別の事情とは,税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる➀公的見解を表示したことにより,②納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ,のちにその表示に反する課税処分が行われ,そのために③納税者が経済的不利益を受けることになったものかどうか,また,納税者が税務官庁の表示を信頼し,その信頼に基づいていこうどうしたことについて④納税者に責めに帰すべき事由がないかどうかによって判断する。
以上
【注】
最判昭和62・10・30の規範(「特別の事情」の具体的内容)は,上述のように長い。
これを一言一句正確に覚え,それを再現できれば理想だが,なかなか難しい。そこで,原則論と対立利益(原則論とその修正の要否及び原則論を崩壊させないための線引き)を意識しつつ,規範のもつ考慮要素を抽出・分解(上述の➀~④のようにして区分)し,それぞれの要素がいかなる利益に関わるかをピックアップする形で押さえるとよいだろう。
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