民法

【事例式演習②】[解答編]/升田幸三の言葉(2)


 司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!いつの世も、道をきわめる人もいれば、そうでない人もいる。君は、道をきわめる方の人間になってもらいたい。この点について、将棋界のスーパー・スターだった升田幸三九段は、少し嘆いている。

<升田幸三の言葉(2)>
「時代は変わっても、人間を磨くのは目的に挑戦する苦労だということは変わりません。いまの人も苦労はしてるが、それは物欲を満たす苦労で、自分独特、独創の苦労ではない」

▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!物欲も大切だが、その上の領域まで、達してほしい。それでは、昨日の答えを出します。


民法【解答】No.56
 Bは、Dに対し、所有権(206条)に基づく返還請求権としての本件機械の引渡請求(202条1項・200条1項)をする。
 AB間では、本件機械を客体とする売買契約が締結された(555条)。これにより、本件客体の「物権」としての所有権は、Bに「移転」し帰属する(176条)。
 しかし、上述のように「動産」である本件機械(86条2項)に係る「物権」である所有権が、売買契約によりAからBに「譲渡」されたとしても、Bは、本件機械の「引渡し」をAから受けていない。そのため、Bに当該「引渡し」が欠缺することにつき、本件機械の売買契約に基づく譲受人としての正当な利益をもつ「第三者」Dに、Bは、所有権が有効に帰属することを「対抗することができない」(178条)。
 他方、Bに嫌がらせをする背信的な悪意をもって、Bの利益を阻害することを目論んだCは、「信義」に反し「誠実」を欠く態様で、Aから本件機械の引渡しを受け(1条2項)、取引秩序を乱す者なので、Bの上記「引渡し」を欠缺することにつき正当な利益をもつ「第三者」たりえない。
 しかし、Cが「第三者」に当たらないことをもって、Cから本件機械を買い受けたDもまた「第三者」であることが当然に否定されるものではない。売買契約で買主が承継するのは、あくまで「財産権」としての目的物所有権である。背信的悪意という主観的要素の強い一身専属的・個人的な固有事情を買主が承継することはない。そのため、CD間の本件機械売買契約締結の効果として、Dは、Cと同様のBにとって背信的な悪意をもつ者になるのではない。
 さらに、Dは、AB間で本件機械の売買契約が締結された事実を知らず、またCがBに嫌がらせをする意図も知らなかった。ゆえに、Cとの売買契約時点で、DがBの利益を殊更に害する背信的悪意をもっていたとする事情はない。
 そのため、Cと異なり、Dに「第三者」性を否定する事情は存在しない。したがって、178条により、Bは本件機械の所有権が有効に帰属することをDに「対抗することができない」。
 よって、BのDに対する請求は認められない。
[留意点等]
 検討順序でやや迷うところがあるかもしれないが、本問が問うのはあくまでBD間の問題なので、BD間の問題点を中心に議論する。「Cが背信的悪意者だから」ということで、Cとの関係を先に検討してしまうと、議論に混乱が生ずる危険がある。
 また、有名な論点である178条の「第三者」の意義が関わる問題だが、だからといってその議論をいきなり展開するのではなく、あくまで条文の適用過程を丁寧に示すことを意識すべきであろう。なお、本問では、不完全物権変動の議論も関係するが、難しい議論も含まれるので、(試験問題を解く限りでは)深入りしないことも大切である。
 なお、仮に本問が、「BC間の法律関係を論ぜよ」という問題であれば、何を検討すべきか。ここでは「請求できるか」ではなく「法律関係」という所に一つのポイントがある。該当する条文を意識しつつ考えてみよう。
【合格の道標No.26】
 「条文を使いこなす力を身に付ける」
 論文式試験問題を解くために重要な力の一つとして、「条文を使いこなす力」が挙げられる。本試験問題では、判例の知識を使う(=射程を意識する)力が試されているが、その判例の出発点となるのは条文である。いわゆる「論点」も、条文が出発点となって展開される議論である。そのため、条文を使いこなす力を意識的に身に付けなければ、論文式試験問題を解く力の養成に繋がらない。
 この「条文を使いこなす」とは、必ずしも「趣旨からの論証を心がける」を意味しない。事例問題においては、当該事実と関連する条文の適用過程を、丁寧に示すことが大切だ。条文の趣旨そのものを示すことが大切なのではない。極端な例としては、特定の解釈(=趣旨から解釈)のみに囚われて、事実と条文の適用関係を捨象してしまい、何のための議論なのか判然としなくなる危険がある。該当条文の趣旨に戻る場面は、事例と条文を比較対照した上で決せられる必要があるのだ。
 また、いわゆる「原則・例外(修正)パターン」を意味するものでもない。このパターンは、思考を示す点では有用ではあるのだが、やはりこのパターン自体を示すことが目的化してしまい、事例における条文の適用過程を示すという肝心な点がおざなりになってしまう弊害がありうる。
 これらの危険・弊害を生じさせないために、必ず条文と当該事例中の関連する箇所とを比較対照させる意識をもつことが大切だ。当該事例で当事者が関心を寄せるのは、法的な効果なのだから、その効果を発生させるために必要な条文の要件が充足されるかを、事例を分析しつつ丁寧に検討する。もちろん、当該事例において議論を展開する必要がない箇所については、条文の番号のみ引用して済ますことも必要である。また、どう議論を展開すればいいのか、その筋道を意識することも必要だ。論述の強弱のつけ方や展開の仕方は、具体的な事例との関係で決まる。したがって、この方法に関しては、実際に問題演習を通じた試行錯誤をひたすら繰り返し、技術として身に付けるほかないが、「まずは条文から出発する」「条文を使いこなす」という意識はつねに持っておくべきだろう。


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