民法

民法No.5[解答編]/三原脩の言葉(2)

 


・運というものを、評価しなければいけない。実力だけで、受験界を悟ろうとしていては、甘いと思います。運や“合格の神様”の存在を無視しないように。

これと関連して。昔、プロ野球の名将をといわれた三原脩(おさむ)は、深く言葉を述べている。

<三原脩の言葉(2)>
「すべてが実力通りに、結果が出るわけではない。運や調子といった不確定要素を軽んじてはならない」

・受験生も、同じである。時の運やバイブレーションを十分に考慮しなければいけない。

では、昨日の問題の答えを、示します。


民法テストNo.5[解答編]

次の➀から③までの事例問題について解答せよ。

【問➀】Oは,Gに対し工場用の中古織機(以下,「本件機械」という。)を売ることを決め,GO間で本件機械の売買契約(以下,「本件契約」という。)を締結した。本件機械は,実はGではなくKの所有であり,Gは「Kが本件機械を使うつもりはないだろう」と判断し,Kに無断で本件契約を締結した。本件契約の際,Gは,Oに対し「Kは本件機械を使うつもりがないから大丈夫だ。Kの承諾は,後日必ず得ておくので心配はいらない。私に任せておき給え。ガハハ。」と告げ,Oもこれを了承した。ところが,Gが,本件契約について承諾を得ようとKに会ったところ,Kは「そんな契約,認めるはずないだろう。勝手なことをするな。」と言って本件契約を承諾せず,さらにGに対し本件機械の返還を請求した。そのため,Gは,別の者から本件機械よりも高額の機械を購入せざるを得なくなり,増加費用を支払うこととなった。この事例につき以下の(1)(2)に答えよ。
(1)Gは,Oに対し,本件契約の解除を主張することができるか。
(2)Gは,Oに対し,増加費用分の支払いを請求することができるか。
【解答】
(1)本件契約は,他人物売買契約(560条)である。Oは,Kの承諾を得ることができず,KのGに対する本件機械返還請求により,本件契約は履行不能になった。そこで,Gは,本件契約について解除権を取得し(561条前段),これを行使する(540条1項)。したがって,Gは,Oに対し本件契約の解除を主張することができる。
(2)まず,Gは,Oに対し損害賠償として増加費用分を請求することが考えられる。しかし,Gは,Oから「本件機械は,Kの所有に属する」旨を本件契約時に告げられていた。そのため,561条後段が適用され,Gは,Oに対し損害賠償請求をすることができない。とはいえ,本件契約が履行不能となった原因は,そもそもOが誘発したものだ。そうすると,公平の見地から,Oに損害賠償責任を負わせるべきではないか。
そこで次にGは,Oに対し415条後段に基づき損害賠償を請求する。ここで解決しておくべき問題が,「561条後段と415条後段の関係」である。なぜなら,561条後段を根拠とする損害賠償請求が否定されたにもかかわらず,415条後段に基づく損害賠償請求が認められるかどうかが問題となるためだ。
561条後段は,他人物売買契約における売主の担保責任としての損害賠償責任(=有償契約の均衡維持を趣旨とするものであり,相手方に対する非難という要素は弱い)を規定したものであり,415条後段は債務不履行責任としての損害賠償責任(=債務者に落ち度がなければ,負担することが避けられた費用について償還を求める。あるいは,債務者の落ち度がなければ,得られるはずであった利益を回収する。これらは,相手方に対する非難も要素とする)を規定したものだからである。以上から,561条後段により損害賠償請求権が否定されたとしても,別途415条後段に基づく損害賠償請求権が肯定される余地がある。なお,債務不履行責任の有無を検討する際には,当該債務の内容を事案に照らして分析することが大切だ。本問であれば,本件契約の内容として,「OがKから承諾を得て,本件機械の所有権をGに確実に移転すること」が構成されることを指摘することだ。
【問②】➀の事例で,本件機械は,修理をしなければ稼働不能であったとする。本件契約の際,Oは,Gに本件機械の故障箇所を示した上で,Gが自らの費用を投じて本件機械を修理し,稼働可能な状態にすることが合意された。その後,Gは,本件機械を修理し,工場において稼働させた。この事例につき以下の問に答えよ。
(1)Gは,Oに対し修理費用の償還を請求することができるか。
(2)Oは,Gに対し本件機械の使用利益の返還を請求することができるか。
【解答】
(1)【問➀】で検討したように,Gは,Oに対し,415条後段に基づいて損害賠償を請求することができる。Oが「必ずKの承諾を得る。私に任せておき給え。ガハハ。ウヒヒ。」などと約束しなければ,Gが増加費用を負担せざるを得ない状況に陥ることはなかった。そうすると,Gが投じた右費用は,Oの責めに帰すべき事由によって誘発された本件契約の履行不能を原因として生じたものといえる。したがって,Gは,Oに対し,415条後段を根拠として損害賠償請求としての費用償還請求をすることができる。
(2)ここでは,OからGに対する請求(反撃)を検討する。本件売買契約によって,本件機械は,いったんはGの手元に置かれ,Gが修理したことにより稼働した。すなわちGは,本件機械を工場において使用したのである。そのため,Oは,Gに対して原状回復の一内容としての本件機械の使用利益の返還を求める。根拠規定は,545条1項本文である。一見すると,Oの右請求は問題なく認められそうである。他人物売買契約において,たとえ売主の落ち度が原因で契約が履行不能になったとしても,契約解除に伴う原状回復義務を否定することはできないものだ。原状回復義務とは,契約当事者に該契約に基づく給付がなかったと同一の財産状態を回復する義務をいい,一方当事者の落ち度の有無によって左右されるものではない。また,Oは他人物売主ゆえ究極的には本件機械の使用利益を保持する権利をもつものではないが,このこと自体をもってGのOに対する本件機械の使用利益返還義務を否定することはできない。
では,本件事例ではどうか。Gにおいて,原状回復義務としての本件機械の使用利益返還義務まで認めるべきか。契約解除に伴う原状回復とは,当該契約締結時の状態に戻すことである。本件機械が稼働可能になったのは,Gが本件機械を修理したからだ。すなわち,本件売買契約時点では,本件機械は稼働不能の状態にあった。つまり,本件契約締結時点では,本件機械は稼働不能ゆえに使用利益を生み出すことができない状態であったのだ。そうすると,本件機械の使用利益は,本件契約における原状回復義務の内容を構成するものではない。したがって,Gは,Oに対し,原状回復義務としての本件機械の使用利益返還義務を負う必要はない。
【問③】Kは,Gに「私は田畑を改修して住宅を建てようと思っておるのだ。そこでキミ,居住用の建物を創ってくれ給え。キミはインパクトある作品を創る建築家として有名だそうだね。できるだけ派手な方向性で頼むよ。」と住宅の建築を依頼した。Gは,「派手な方向性と言っても色々ありますが・・・どうしたらいいっすかね。例えば,西部劇に出て来る成り上がり者のコールマン髭を生やした金持ちの悪者が住むアレですかね。」と問うと,Kは,「ああそれだ。悪者の家がイイね。」と応じ,KとGの間で住宅建築の請負契約が成立した。
Gが基礎工事に着手してしばらく経った頃,Kは,Gが行った基礎工事が不完全だとして,Gに工事の追完を求めた。実際,基礎工事には瑕疵があった。ところがGは,「基礎工事の方向性に問題はない!素人のあなたに文句を言われる筋合いはないよ!」と怒り,Kの追完請求に応じることはなかった。Kは,「だめだ,こりゃ。次の建築家行ってみよう。」と思った。Kが,Gとの契約関係を終了させるためにどのような手段を取ることができるか。考えられる手段を挙げ,その中でKの請求を実現するために最も効果的な手段を説明せよ。
【解答】本問で,KがGとの契約関係を終了させるための手段として,以下の4つが考えられる。
(1)合意による契約解除
(2)641条に基づく契約解除
(3)635条本文に基づく契約解除
(4)541条に基づく契約解除
以上のうち,(1)から(4)までのうち,Kの請求を実現する上で最も効果的な手段は(4)である。
(1)については,本問事例を見る限り期待できない。Gは,「基礎工事に問題はない」といってKの請求を拒絶しており,両者の間で解約のための合意成立は望めないからである。Gは,「プロの私が問題ないと言えば問題ない。問題は素人の頭の中で生じているんじゃない!プロの私の頭の中で生じているんだ!」というゴーマンかます態度なのである。プロを名乗るのであれば,Gには依頼主であるKの言い分に耳を傾ける鷹揚さ・余裕が欲しい気がする。困ったものだ。
(2)については,建物の基礎工事段階という途中経過すなわち仕事完成前(「仕事を完成しない間」)である本問において,妥当する条文といえそうである。また,Gの意思に関係なく,Kの自由な(一方的な)判断に基づいて可能となる手段である。
しかし,641条は,注文者が請負人に対して損害賠償を負担することを要件とする。この損害賠償負担の趣旨は,請負人に何ら落ち度がなくとも,あくまで注文者の一方的な判断で解除できるため,注文者においては請負人に生じた損害を賠償することで公平を図る点にある。しかし,本問の場合,基礎工事に問題があるため,Gに落ち度がある。そうすると,641条をそのまんま適用してKに損害賠償を負担させることは,Kにとって酷でありGとの関係において不公平である。そのため,641条を根拠とする解除によるべきではない。もっとも,瑕疵があるにもかかわらずこれを追完しようとしないGの態度が信義誠実に背くものとして,注文者において損害賠償を負担させるべきではない特段の事情があると考えることはできるだろう。
(3)についてはどうか。基礎工事段階は,未だ「建物」ではないので,635条ただし書は適用されない。そのため,不完全な基礎工事には「瑕疵」があるとして,635条本文の適用が考えられそうではある。しかし,635条本文が適用されるのは仕事の完成後である。なぜなら,「仕事の目的物」(635条本文)とは,「報酬」の支払と同時に引き渡されることが原則として予定されており(633条本文),「報酬」は,「仕事の結果」すなわち「完成」した「仕事」に対して支払われるもの(632条)だからだ。以上から,本問における基礎工事は,未だ「仕事の目的物」すなわち仕事の完成後ではないので,635条本文は適用されない。
そこで,(4)である。635条本文が債務不履行責任の特則としての位置づけであることからすれば,同条が適用されない以上一般原則である541条による解除が検討されることになる。Gにおいては,完全な基礎工事を行う義務がある。基礎工事は,建築物が安全に存立するための基礎であるから,完全に行われなければならない。そのため,不完全な基礎工事については,GがKの請求に応じて追完する義務がある。Gが,右義務をいつまで経っても(Kの追完請求を無視する形で)応じないことは,541条の解除事由になるだろう。
本問の基礎工事は,「建物」の存立のために不可欠なものであるものの,「仕事の目的物」とは言い難い。あくまで「建物」の「完成」に至る一過程に過ぎないためだ。以上のジレンマを認識した上で,どういう解決手段がKにおいて最も望ましいかを意識することが大切だ。

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・受験は、運に似た存在である“合格の神様”を無視してはいけない。むしろ、感謝すべきである。

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