民法

志のその魂 / 飛田穂洲(学生野球の父)の言葉(2)

司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! “コツコツ”勉強をすると、難解な論点も少しずつ分かってくる。そうすると、ちょっと楽しくなり、さらに進んで行く。ますます、分かるようになる。勉強が楽しくなり、面白くなる。その結果が、合格だ。
要は、一つ一つ、心を込めて、“コツコツ”やることだ。このことを、学生野球の父・飛田穂洲(とびたすいしゅう)は、言う。
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<学生野球の父・飛田穂洲(とびたすいしゅう)の言葉(2)>
「一球入魂」
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▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 論点1つにしても、魂を入れて考えると、分かってくる。このことこそが、生物の中で、人間しかもっていない、“考える楽しさ”である。
では、昨日の答えを示します。
【解答】民法No.35
 事理弁識能力を巡る諸問題
 第1. 小問1について
 1. (1)ア. Kが、Oに対して200万円の返還を請求することができるためには、KO間の売買契約(555条)の効力が遡及的に否定され、Oの200万円の「利得」につき、「法律上の原因」がないと認められる必要がある(703条)。当該「利得」につき、「法律上の原因」がないと認められるためには、703条の趣旨である実質的公平の原理から、当該「利得」について、実質的正当性を欠くことが必要である。
     イ. そこで、Kは、売買契約の効力を否定する根拠として、Kが売買契約時、事理弁識能力を欠いていたとして、売買契約は遡及的に無効であるため、Oの200万円の「利得」は実質的正当性を欠き、「法律上の原因」がないと主張する。表意者は、法律行為の際に事理弁識能力を欠いていた場合、法律行為を無効と主張できるのか。表意者が事理弁識能力を欠いていた場合の法律行為の効果につき、明文規定がなく問題となる。
   (2)法律行為が有効であるためには、法律行為から発生する効果について認識できるだけの適切な判断能力に基づく意思表示が必要となる。ところが、事理弁識能力を欠く状態とは、法律行為から発生する効果について認識するために必要な判断能力を欠き、適切に意思表示できない(意思無能力)状態である。私的自治の原則の下では、法律効果の発生の獲得に向けられた適切な意思表示が必要となる。そのため、事理弁識能力を欠く状態でなされた法律行為は、適切な意思表示の欠缺が認められるため、無効である。他方、事理弁識能力を欠く者の意思表示を無効とする趣旨は、その者が取引社会の犠牲になることを防ぐことにある。そのため、事理弁識能力を欠く者の意思表示を無効とする場合、当該法律行為は、遡及的に無効となる。したがって、事理弁識能力を欠く者が意思表示の無効を主張した場合、表意者の相手方の「利得」は、実質的正当性を欠き、「法律上の原因」がないと認められる。
   (3)本件の場合、Kは、Oとの売買契約の時点で事理弁識能力を欠いていた。したがって、KO間の売買契約は、遡及的に無効となる。Oの200万円の「利得」は、実質的正当性を欠くため「法律上の原因」がないと認められる。
   (4)よって、Kは、OとのA原稿売買契約が遡及的に無効となり、巻き戻されるべきだと主張し、不当利得返還請求権(703条)に基づき、Oに対して200万円の返還を請求することができる。
 2. (1)Kの主張に対し、Oは、A原稿を戻さなければ、200万円の返還請求に応ずることはできないとして、同時履行の抗弁権(533条)を主張する。
   (2)同時履行の抗弁権を規定する533条が適用されるのは、「双務契約」の「履行」の場面である。そのため、本件のように契約の無効主張に伴う契約の巻き戻しは、「双務契約」の「履行」ではないので、533条は直接適用されない。もっとも、533条の趣旨は双務契約の履行上の牽連性を維持することで、もって当事者間の公平を図ることにある。契約の巻き戻しは、相手方から得た財貨を相手に戻す債務を相互に履行する点で、双務契約の履行と類似する。そのため、双務契約の履行上の牽連性を維持することで、当事者の公平を図る必要がある。
   (3)したがって、契約の巻き戻しの場面では、契約の履行における規定である533条の趣旨が相当し、同条を類推適用する基礎がある。
   (4)よって、Oは、533条類推適用により同時履行の抗弁権を主張し、A原稿を戻さなければ、200万円の返還請求に応ずることができないとして、Kに対抗することができる。
 3. 以上によって、Kは、A原稿を戻して、Oに対して200万円の返還を請求することができる。
 第2. 小問2について
 1. (1)Kは、OとA原稿について売買契約を締結した時点で意思無能力であったことを根拠に、売買契約は無効であるとして、200万円の返還を請求する。
   (2)これに対し、Oは、533条類推適用により同時履行の抗弁権を主張し、A原稿を戻すまで、200万円を返還する必要はないと反論する。そのため、A原稿が滅失した場合、KはA原稿を戻すことができないので、200万円の返還を請求することができない。
 2. (1)A原稿をOに引き渡すKの債務が、履行不能になっている。では、もう一方の債務であるOのKに対する200万円返還債務もまた消滅するか。
   (2)双務契約の巻き戻しの場面は、双務契約の「債務を履行する」場面ではないので、536条1項は直接適用されない。しかし、536条1項の趣旨である双務契約の存続上の牽連性の維持による公平の実現は、双務契約の巻き戻しの場面でも相当し、536条1項類推の基礎が存在する。したがって、本件のような双務契約の巻き戻しにおいて、当事者双方の責めに帰する事由なく、一方の債務が履行不能となった場合、536条1項の類推適用により他方の債務は消滅する。
   (3)以上から、KはOに対して、A原稿を戻すことができず、200万円の返還を請求することができない。もっとも、かかる結論では、Kの200万円返還請求が否定され、Oの言うままに本件売買契約を締結した意思無能力者のKの保護を図ることができない。かかる結論を維持することは、意思無能力者を取引社会の犠牲にする状況を放置することになるからである。そこで、A原稿滅失の危険を、Oに負担させることはできないか。534条1項の類推適用を認めることはできないか。534条1項の趣旨は、当該契約の目的物について確実に支配することが予定される債権者に、目的物滅失の危険を負担させることで、もって債務者の負担を軽減し、公平を図ることにある。事理弁識能力を欠く者(意思無能力者)による契約の無効主張に伴う契約の巻き戻しの場面では、表意者である意思無能力者を契約から解放し、取引社会の犠牲になることを防ぐことが公平の実現に資する。そこで、事理弁識能力を欠く者(意思無能力者)による契約の無効主張に伴う契約の巻き戻しの場面で当事者の責めに帰すことなく目的物が滅失した場合、かかる滅失の危険は相手方が負担すべきである。また、意思無能力者を保護するため、意思無能力者が返還すべき範囲は「現に利益を受けている限度」である(121条ただし書類推)。しかし、目的物が滅失した場合、意思無能力者は「現に利益を受けて」いない。したがって、本件の場合、A原稿はKO両者の責めに帰することなく滅失している。そのため、Kは「現に利益を受けて」おらず、A原稿返還の義務を負わない。そのため、A原稿滅失の危険は、Oが負担すべきである。  
   (4)以上によって、KはOに対して、200万円の返還を請求することができる。

以上

【注】
 (1)小問1では、事理弁識能力を欠く者による法律行為の効果が問われている。この効果は民法上、条文では明言されていない。そのため、「事理弁識能力とは」「事理弁識能力を欠く状態とは」から説き起こし、この能力を欠く者の法律行為の効果を論証する必要がある。小問1の論証をしっかり行うことで、小問2を解く視点を示すことができると思う。
 (2)小問2の結論としては、Kの主張を認める結論と認めない結論のいずれもありうると思う。しかし、いずれの結論を出すにしても、単なる形式論理だけで終わらせず「なぜ、その結論が相当と考えるのか」を、事実関係に注目しながら理論的に根拠づけることが大切だ。

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