民法

民法No.72【事例式演習②】解答編・推定等の効果/黒田官兵衛の言葉(2)


 司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!試験に合格した後、社会人として、大きく成長してください。そして、日本国を豊かにしてもらいたい。実務における心構えを先人から学ぼう。戦国末期の超1流の軍師、黒田官兵衛の言を聞こう。

<黒田官兵衛の言葉(2)>
「人に媚びず、富貴を望まず」

▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!わが身の保身だけにヘラヘラしてはいけない。そして、財産や地位を気にしすぎても、まずい。わしのいう“小リッチ”程度でいいと思う。そのかわり、社会には大きく貢献してもらいたい。
 では、昨日の答えを示します。


民法No.72【事例式演習②】解答編
①この問題も(No.71と同様)長めの問題だが、基礎知識から容易に判断できる記述がある。まずは、容易に判断できる記述から正誤を確定する。
1、2及び5は、基礎知識から容易に判断できる。また、判断できなければならない。
具体的には、1については民法186条1項を、2については不動産登記の所有権帰属の推定機能(事実上の推定)について想起できれば充分だろう。いずれも「新問題研究 要件事実」等で学ぶ基礎知識である。5についても、民事訴訟法228条4項に係る頻出事項だ。1及び5が正しく、2が誤りである。
②残りの3と4のいずれが誤りか(あるいは正しいか)を確定させる必要がある。しかし、3及び4は、1、2及び5に比べると、あまり馴染みのない難しい記述である。ここでもやはり(No.71で述べたように)、記述3及び4を単体で「考える」ことは避けた方がよい。
そこで、比較的容易な1や5をヒントにすべきだろう。
では、1や5を「正しい」と容易に判断できるのはなぜだろうか。「分かる記述」につき、「なぜ分かるのか」を分析してみることも、解答のヒントを得るうえで大切となる。
1や5が「正しい」と容易に判断できるのは、1における「占有」や5における「印章と印影の一致」という事実が、「善意」(=1における原告の主観的事情)や「作成者(=5における被告)の意思」を「推定」する機能をもつことを基礎知識として既に習得しており、活用できたからである。そして、これら「推定」の基礎となる事実については、「推定」の利益を享受する者が主張立証しなければならない。具体的には、1では「善意」の「推定」を受ける原告が、「推定」の基礎となる事実である「占有」を主張立証する必要がある。他方、5では「被告の意思」の「推定」による利益を享受する原告が、「推定」の基礎となる事実である「被告の印章による印影がある」ことを主張立証する必要がある。一方、「推定」を覆す事実については、1及び5では、被告が主張立証する責任を負う。
こうして見ると、本問では、問題文の冒頭にある「推定等の効果」による利益を受ける者や、その利益を受ける者が、いかなる事実を主張立証する必要があるかを明らかにすることが求められている。換言すれば、1及び5から、「推定」の基礎となる事実(あるいは「推定」を覆すべき事実)を確定し、それぞれの事実について主張立証責任を負う者を決するための構造(=判断基準)をつかむことが必要となる。1及び5という典型的なケースを通じ、基礎知識の使い方を確認し、難しい問題を解くための判断基準を「教えてもらう」のだ。
③では、3はどうか。1や5でつかんだ構造に沿って検討する。3で「推定」による利益を受ける者は、被告である賃借人である。そして、「推定」の基礎となる事実は、「賃貸借契約終了後の使用継続を知りながら賃貸人が異議を述べなかったこと」である。そうすると、上記1及び5を通じてつかんだ構造からすれば、「推定」について述べる3について、誰がいかなる事実を主張立証する必要があるかが見えてくる。
具体的には、「推定」による利益を享受する(被告である)賃借人が、「賃貸借契約終了後の使用継続を知りながら賃貸人が異議を述べなかったこと」を主張立証しなければならない。したがって、当該事実の主張立証責任を「原告」に負わせると述べる3は、誤りということになる。もちろん、「賃借物は、期間終了により返還されることが原則である」ことから、推測して結論付けることも可能だが、ここでは、せっかく1あるいは5があるのだから、これらを活用しない手はない。1あるいは5は、単に「切る」ために存在しているのではなく、活用するために存在するのだ。「推定」という効果を得る目的達成のため、いかなる手段が求められているのかという視点から分析することも有効だろう。
注意すべきは、『1や5において、「推定」の利益を受ける者が、「原告」であることから、3も同じように「推定」の利益を受ける者は、「原告」である。よって3は正しい』などとしないことである。上で述べた「構造」というのは、各記述の文字面からではなく、あくまで「推定の利益を受ける者が、いかなる事実を主張立証する必要があるか」という理論的な視点(=「推定の効果」を意識した視点や規範構造をつかむ視点)から捉えなければならない。問題文を単に形式的・表面的に見てしまうと、思わぬ誤解を誘発するので注意が必要だ。問題を解く際は、ぜひ「規範をつかみ、規範を使う」ことを大切にしよう。
④以上から、3が誤りであり、(2と共に)正解記述である。
では、4についてはどうか。4は、「みなす」という表現があったり、借地借家法の場面であったりと、他の記述と少々毛色が異なるようだ。そのため、積極的に判断しなくとも構わないだろう。ただ、この記述に書かれていることとその理由(借地借家法26条の存在と趣旨)は、これを機会に押さえておこう。
【合格の道標】No.34
論述に関するアドバイスに、「悩み(問題意識)を示せ」というものがある。
いわゆる「未知の問題」では、問題文の事情が複合的になっており、いずれの結論を導くべきか分からず、どのような理論構成に基づいて利益調整をすべきなのかにつき慎重な判断が求められる。このような場合は、文字通り悩まざるをえないだろう。上記アドバイスを待つまでもなく、「悩む」し、「問題意識」をもつことが必要不可欠となる。
ところが、既に判例・通説の評価が固まり結論において争いのない論点(いわゆる「典型論点」)においても、「悩みを示す」必要があるかどうかは、問題文の事情や問いに応じて慎重に決する必要がある。とにかく形式的に「(採点者に)評価されるため、“悩むフリ”をせよ」まで行くとさすがに問題だ。なぜなら、既に決着の付いた議論でわざわざ「悩みを示す」ことは、「悩みを見せる」という形式を踏むこと自体が目的化し、「ためにする議論」を無理矢理展開しているようにしか見えないからだ。ともすれば、「とりあえず悩みを見せておけば点をくれる」といった(安易な)態度であると採点者に評価されかねず、怒りを買う危険がある(たとえば、憲法平成23年度の「採点実感等に関する意見」では、こうした「ためにする議論」に対し、厳しい批判がなされている)。あるいは、大切にすべき理論構成が軽視され、自己に都合よく事実をつまみ食いし、「ああでもない、こうでもない」と水掛け論や堂々巡りを起こす危険もある。また、理論構成が脆弱だと、どんなに事実の評価が優れていようと、法律の議論としては失敗なのである。
こうした危険を犯さないために、ありきたりだが、まずは誠実に問題文に向き合い、理論と事実に忠実な論述を展開する姿勢を涵養し続けることが大切だ。そして、そのためには、とにかく自分の目で問題文を見て、問題文から解答のヒントを教えてもらい、基礎知識を充分に活用することである。実践感覚を磨く努力を行うことや、問題文から「考えるべき」「書くべき」貴重な情報を得ることなくして、「悩む」も「問題意識」も何もないのだ。


▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!合格後、君はいろいろな経験をする。人や組織のいい面も悪い面も見るであろう。そんな時、黒田官兵衛の言葉を思い出してください。もし、何か困ったら、わしの「成川達成塾」(仮称)へどうぞ。いままで、受験生だけでなく、法曹の人たちへのアドバイスも多くしてきた。お気軽に“いらっしゃい”。
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