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本日は、平川先生の小論文講座第3回目をお届けします!
[設問]
*親友と最近連絡が取れません。どうやら、親友はひどく落ち込んでいるようです。何度か連絡を試みた結果、ようやく明日親友と会って話すことになりました。そこでは、どのようなやりとりが2人の間で繰り広げられるでしょう。2人のやりとりを対話形式で解答用紙のA欄に、そしてそのやりとりの中であなたが意図したことをB欄に述べなさい。(慶應義塾大学医学部平成20年度 50分 字数制限不明)
[前回のおさらい]
A君は、平川先生とのやり取りで、小論文で一番大事なのは、設問で聞かれていることにピントを合わせる、ということを学習しました。
例えば、「よい温泉旅館の要件は何か」という問いが、あるとします。その場合に、①「料理がおいしい」②「周囲の環境がよい」などを指摘しては、焦点が合っているとはいえません。
「よい温泉旅館の要件」を聞いている以上、当然、最初に、温泉の話がこなければいけません。焦点がずれていると、ただなんとなく話しているだけで、何の話か分からずに終わってしまいます。ピントを外さない、これが不可欠です。
[今回(3回目)]
前回は、ピントを合わせることの大切さが分かったところで、終わりました。
さて、ポイントを絞ることを理解した、A君、今日も張り切って平川先生の指導を受けに、スクール東京にやって来ました。
A君「こんにちは、平川先生。前回、友人が落ち込んでいる理由が、父親が病気で進学が困難になったことであるという設定にしました。事態を把握し、冷静になって論理的に問題を解決する力を試している、ということ、この点から書くことが大事だということを指摘されました」
平川先生「そうだね。その時、もう一つ忘れてならないことがあるんだ。なんだと思う」
A君「まだ、注意しなければならないことがあるんですか。書くことって大変なんですね」
平川先生「いや、難しく考えることはない。ちょっと、考えればすぐ分かることだよ」
A君「何でしょう。ピントが合ってさえいれば、もう問題はないと思うのですが」
平川先生「そうだ。焦点が合うことは、確かに大事だ。では、本問で、ピントとは具体的には何だろう。これを明らかにするのが、もう一つ忘れてはならないことだよ」
A君「でも、父が病気で苦しんでいる友人という設定だから、その友人とのやりとりを書けば具体的な話なんだから、それで焦点は合っているんじゃないですか」
平川先生「本当にそれでいいだろうか。『ひどく落ち込んでいる友人』に対するカウンセリングの仕方を、わざわざ慶応大学は聞いているの。それが平成20年度の出題意図かな。
ちょっと横道にそれるけれど、ここで慶応大学医学部の基本理念を見てみよう。私の質問の答えが、分かるかもしれないからね」
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「1917年、慶應義塾大学医学部は世界的な細菌学者として知られる北里柴三郎博士を初代学部長として発足しました。博士は若い頃から民衆のための医学を志し、かつて受けた福澤諭吉の恩顧に報いるため医学部創設に尽力しました。以来長い歴史を刻んできた医学部は、「基礎臨床一体型医学・医療の実現」を理想に掲げ、“フィジシャン・サイエンティスト”の育成に取り組んでいます。それは、研究能力を備えた医師であり、同時に豊かな人間性と深い知性を有し、確固たる倫理観に基づく総合的判断力を持ち、生涯にわたって研鑽を続け、医学・医療を通して人類の福祉に貢献する人材の育成です。 それはまさに福澤諭吉の提唱する“実学”の実現に他なりません」(同大学ホームページより)
* * *
平川先生「どうだい、なんて書いてある。慶応大学医学部の求める人材とは、『豊かな人間性と深い知性を有し、確固たる倫理観に基づく総合的判断力を持ち、生涯にわたって研鑽を続け、医学・医療を通して人類の福祉に貢献する』人とある。
『豊かな人間性と深い知性』、これがピントではないだろうか。
そこで、もう一度出題者の意図を確認しよう。落ち込んでいるのは、『親友』とある。大事な友達の苦しみに、ただ同情するだけではダメだ。君の設定に基づくなら、自分と同じ医師の道を目指そうとする者として、どう対峙するのか、人としての姿勢を聞いているんじゃないだろうか」
A君「そうか。考えてもみなかった。だから、問題文は『そのやりとりの中であなたが意図したことをB欄に述べなさい』と、書いてあるんだ。出題者はそこまで配慮しているのか。
ならば、むしろこの『苦難』をバネにやり遂げるような、困難に負けな強い人間になることを友人に伝えたいと思います。これなら、単なるカウンセリングの話にとどまらない内容になると、思います」
平川先生「なるほど、それはいい考えだ。表面的な『声かけ』だけでは、ただそれだけの話で終わってしまう。人としての生き方を頭に置いたA君の『やり取り』ならば、出題者である慶應大学医学部の基本理念に答えることになる」
A君「でも、先生、400字前後の文章に、ここまで突っ込んで考える必要があるんですね。あーなんか、気が重くなってきた」
平川先生「最初から、随分と突っ込んだ議論をして、大変だったかもしれない。しかし、過去問を検討するときには、これくらい徹底的にすべきなんだ。こんなふうに、普段から考え抜く訓練をしていて初めて、本番の限られた時間内に、出題者の意図に沿った小論文が書けるようになる。
さあ、次は、いよいよ書き上げよう。次回を、お楽しみに」
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