・世の中のことは、自分だけのためにやるものではない。周囲の人のおかげについても、考慮しなければならない。
スポーツ選手なら、監督・コーチほかの関係者や、ファンがいてこそ、運動ができる訳である。受験生なら、先生など関係者がいてこそ、勉強ができるのである。
2018年(平成30年)、日本選手として男女を通じて初の世界ランキング1位になった山口茜(あかね)は、まだ20才。それでも、ポイントをついたことを言います。
<山口茜の言葉(2)> |
「初めて、バドミントンを見に来た人に、『応援したい』と思ってもらえるような選手になりたい」 |
・ファンがいないと、バドミントンなどの競技は、成り立たない。そこで、応援してくれる人のためにも、いい試合をしなければならない。
予備試験や司法試験も同じです。周囲の人がサポートしてくれるから、受験できるのである。
では、昨日の答えを示します。
商法テストNo.4[解答編]
参考文献等
酒井太郎「会社法を学ぶ」(有斐閣・2016年)
スク東先生「スク東先生ブログ」(スク東先生・2016年夏~)
法名の「会社法」については省略する。
➀甲株式会社(以下,「甲」とする。)は,同社の従業員Kに,「株式会社甲代表取締役副社長」といった真実と異なる肩書を与えて取引行為等を行わせていた。
(1)甲はKの行った取引行為について責任を負うことがあるか。
(2)甲が,上記(1)で責任を負うとした場合,どのような法律構成によるか。
【解答】(1)責任を負うことがある。(2)354条類推適用による。下記②とも関連するが,本問で甲によって代表者として取引行為を行うことを許諾されたKは,従業員(=354条はあくまで「取締役」を主体と規定する)とはいえ甲内部の者である事実が重要(下記②(2)参照)である。この事実があるからこそ,354条類推適用の基礎が認められるのである。ただ,真実の代表者が登記されている場合,908条1項後段の「正当な事由」の意義さらに908条1項後段と354条の関係を検討する必要がある。
②乙株式会社(以下,「乙」とする。)は,同社の近所で同種の事業を営む会社の取締役Oに,「株式会社乙代表取締役社長」といった真実と異なる肩書を与えて取引行為等を行わせていた。
(1)乙はOの行った取引行為について責任を負うことがあるか。
(2)乙が(1)で責任を負うとした場合,どのような法律構成によるか。
【解答】(1)責任を負うことがある。(2)9条類推適用(又は商法14条類推適用)による。上記➀(2)との違いに注意。本問の場合,Oは取締役という地位にあるとはいえ,あくまで乙社外部の者である。354条が予定する取引の主体とは,その取引遂行において当該会社の指揮監督を受ける立場(雇用関係を含む)にある者というべきである。そのため,会社外部(外様)の者が行った行為についてまで同条の類推適用を及ぼして表見責任を拡大すべきではない。外様の者に肩書を付与して取引を行わせて生じた際のトラブルは,9条(又は商法14条)が規定する名板貸人の責任として解決することになる。また,354条は908条1項後段の例外とされる。例外の適用範囲は限局化すべきことも根拠となるだろう。
③356条1項1号の趣旨は何か。
【解答】会社の機密や顧客情報に精通している取締役が,これらを利用して会社に損害を発生させることを防止する点にある。
④356条1項1号の(1)「自己又は第三者のために」の意義(2)「会社と同一の事業の部類に属する取引」の意義
(1)自己又は第三者の計算のためにという意義である。(2)会社の行う事業と市場において競合し,会社と取締役との間に利益の衝突を来す可能性のある取引を指す。
※解答に際しては,上記③の趣旨を活かすことが大切だ。本問で趣旨を活かす際に有用な視点としては,「取締役等が自己又は第三者の利益を図る目的でその権限(地位)を濫用的に利用して行われた取引実態に着目する(名義のいかんにかかわらない)」が挙げられるだろう。また,423条2項は,当該取締役等の得た「利益」を会社にとっての「損害の額」と推定する。423条2項は,当該取締役等の得た「利益」という実質に着目していることから,356条1項1号の「ために」を「名義のいかんにかかわらない」と解する根拠になる。
⑤親会社であるA株式会社(以下,「A社」という。)が,親会社としての影響力を背景に,子会社であるB株式会社(以下,「B社」という。)から不当に低い価格で製品を買い入れ,K社に損害を与えた。この場合,A社は,B社の債権者Oに対し429条1項に基づく損害賠償責任を負うか。
【解答】負わない。429条1項は,責任主体を「役員等」と規定する。A社はB社の「役員」として選任されていない。そのため,A社は429条1項「役員等」にあたらない。また,A社は法人ゆえ取締役に就任することができない(331条1項1号)。したがって,A社を事実上(外形上)の取締役として責任追及することもできない。よって,A社は429条1項に基づく損害賠償責任を負わない。
⑥OGKは,キレ芸漫談で人気を博したテレヴィ・タレントである。テレヴィ・タレントであるOGKは,「商人」か。
【解答】テレヴィタレントであるOGKは,「商人」ではない。商法502条本文各号参照。
⑦譲渡制限が付された株式が当該株式を発行している株式会社の承認手続きなく譲渡された場合,かかる株式譲渡は,当事者間では有効だが当該株式を発行している株式会社との関係では効力を生じないとされている。このケースについて以下の問いに答えよ。
(1)その理由は何か。
(2)当該株式を発行している株式会社の代表取締役が,譲受人を株主として承認した場合,かかる譲受人は株主としての地位を得るか。
【解答】(1)株式会社による譲渡承認の充足は,「株式の譲渡に係る承認手続」(136条以下)の厳格な手続規定に鑑みて,会社との関係では効力発生要件とすべきことが理由である。また,136条以下が規定する厳格な手続きは,非公開会社の閉鎖性維持という利益重視の顕現ともいえる。
(2)株主としての地位を得ない。この場合,譲受人が株主としての地位を得るためには,原則として所定の手続(139条1項)を経ることが必要だ。会社から,「譲受人のあなたが株主です」とすることも原則として認められないだろう。「名義書換の不当拒絶」の議論と混同しないように注意しよう。
⑧取締役が在任中に取締役会の承諾を得て会社から金銭を借り入れたが,弁済期に返済しないまま退任してしまった。この場合,株主がとる措置として考えられるものに以下の(1)⑵がある。(1)⑵それぞれの措置を検討する際に解決すべき問題点を指摘せよ。
(1)847条1項・2項に基づく代表訴訟
(2)退任した当該取締役に対する429条1項に基づく損害賠償責任の追及
(1)(2)それぞれの措置を検討する際に解決すべき問題点を指摘せよ。
【解答】(1)取締役が行った取引によって生じた責任は,847条1項「責任」に含まれるか。
(2)株主は,間接損害を被った場合も429条1項に基づいて責任追及することができるか。※以上(1)⑵いずれも短答式・論文式問わず出題される重要論点である。
【スク東先生の情熱教室】
そうだ,スク東先生である。
スク東先生(以下,「先生」という。)は,「要約力」を鍛えることの重要性を説く。
先生のブログ冒頭部をご覧頂きたい。「<前回までのあらすじ>」とある。注目すべきは,前回「の」ではなくして,前回「までの」となっている点だ。これは,当該回の記事を読むに際して前日(前回)「の」記事内容を想起するだけでは足りないということである。すなわち,前日(前回)「まで」に至るまで掲載された記事すべて(=同ブログがスタートした2年前のあの夏の日から現在に至るまでの記事すべて・・なのだろうか。特段の区分が示されていないので,たぶんそうなのだろう。)を間断なく総合的に想起せよというものだ。
あらすじを漢字で表記すると「粗筋」。文字通り,「粗」い(=大体の)「筋」ということを意味する。つまり先生は,前回「まで」に累積された記事すべてに関する「大体の筋」を踏まえねば,最新記事の内容も身に付かないと注意しているのだ。これを先生風に表現すれば,「毎回の記事を読む際には,それまでの議論の流れの要点を総動員するが吉」となる。受験生にとって厳しく強硬な要求だが,(「までの」の意味する所について先生に求釈明などせず,そのまんま素直に受け取って)議論の流れを想起する力を付ける教材として何とか食らいつきたい。もっとも,「までの」となっているのはあくまで本稿脱稿時(6月17日)においてである。今後,先生の対受験生方針が宥和路線に変更せられ,「の」になることもあり得る。なお,かつて人気者により「からの~」なる言い回しが一世を風靡したことがあったが,先生の「までの」は,この「からの~」に対抗して創られたものではない。
閑話休題。しばしば先生は,花子さんとのやり取りの中で「大枠を押さえよう」「意味を取ろう」と言うことがあるが,これらは「大体の筋を追う力=『要約力』を養成しよう」と同義だ。ちなみに「意味を取る」とは,先生独特の表現である。定義風にいえば「物事や概念の意味するところを正確に把握することをいう。」となろう。注意すべきは,この「(意味を)取る」とは,「うどんの出前を取る」「OGKの握手会の予約を取る」あるいは「領地を取る」といった際の「取る」と同義ではない点だ。前二者の「取る」は「客体を注文する,サーヴィスの提供を求める」を意味し,後者は「客体を奪い取る,簒奪する」を意味する。ただ,厳しい先生のことだ。先生が「意味を取る」に込めた想いは,そのまんま「戦国武将よろしく勇猛果敢に隣国の領土を奪い取る気概をもって,意味内容を把握する」ほどに激烈なものかもしれない。もしそうであれば,筆者の説明は,単に「教科書的な説明すなわち先生が蛇蝎のごとく嫌う暗記麵麭(パン)的説明」に過ぎず,先生の主張内容の「意味」を正しく「取」ったものと言い難い。先生に言わせれば,「受験生は既製の麵麭(パン)を食べるだけでは足りませんよ。きちんと麵麭(パン)の製造工程の意味を取るが吉」ということか。筆者は,向後も「意味を取る」力を身に付けるべく日々先生のブログを一層高尚な視点で熟読玩味して勉強せねば・・と思うのだ。
ところでこの「要約力」である。条文の趣旨や規範といった概念はもちろん,当該事案と関連判例との距離を測る上でも必須となる力だ。さらに日常生活における会話でも,要約力が不足していると「相手の言いたいこと」を正確に捉えることができず,コミュニケーションがブレイクダウンする。要約力は,日常生活における様々なシーンで求められる力なのだ。
では要約力を鍛えるにはどうすればいいか。要約力を鍛える目的は,ポイントをつかみ,当該問題を解決するために必要な知識を確実なものとし,自在に利活用できる力を身に付けることにある。例えば基本書やテキストのある項目を読み終えた際も,「要するに何が書いてあったのか。ポイントは何か。自分は何を学んだのか」を思い返すことにより,要点に意識が向くようになり,知識等の定着度が格段に上がるのではないだろうか。他の方法としては,学んだ事項を自分の手で問題形式としてまとめる方法も,知識の定着を図る上でたいへん有効だろう。先生のブログも(様々な角度から)参考にしつつ,重要事項に関する知識・理解を確かなものとするための工夫を貪欲に行いたいものだ。
・なにごとも、自分の相手に好感をもたれることが、社会的な人間としては、必要である。自分一人で、何もできない。このことを、銘じてほしい。
絶対合格!!
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▼本日午前4時更新の「合格ブログ(成川豊彦日記)」は、司法試験・予備試験の受験生にも参考になるので、ぜひ、ご覧ください。
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