・「人の一生は、人間関係の歴史でもある」。こう言ってもいい。だから、どういう人に会えるかというラッキー性や相手との付き合い方などが大切になる。文学を好み、左派から右派へ渡り「財界四天王」の異名があった元産経新聞社長、水野成夫は、こう言った。
<水野成夫の言葉(2)> |
「どういう人に師事するか、どういう友人を持つかということで、その人の一生が決まるともいえる」 |
・人との付き合いを大切にしてもらいたい。若い時は、もちろんのこと、いつの年代でも、お金よりずっと気をつかってもらいたいものです。
では、昨日の答えを示します。
民事訴訟法テストNo.4[解答編]
民事訴訟の法名は省略する。
参考文献等
岡伸浩・「民事訴訟法の基礎 第2版」(法学書院・2008年)
スク東先生・「スク東先生ブログ 6月17日版」(スク東先生・2016年夏~)
➀訴えの取下げ後に,敗訴の危険を感じた被告が,はったりをかまして原告を騙し,訴えの取下げを決意させた事実が判明した。この場合について,以下の(1)(2)につき答えよ。
(1)原告が採り得る法的手段を2つ挙げよ。法的手段の内容・問題点まで検討する必要はない。
(2)上記(1)で挙げた2つの法的手段のうち,原告の合理的意思に合致する手段はどちらか。簡潔な理由と共に解答せよ。
【解答】(1)ア別訴提起イ訴えの取下げにつき,詐欺取消(民法96条1項)または錯誤無効(民法95条本文)を主張する。
(2)上記イの手段である。原告は勝訴が期待できたため,従前の訴訟資料を利用したいはずだ。そのため,訴えの取下げをなかったことにして従来の訴訟を維持したいと考えるだろう。したがって,原告の合理的意思に合致する手段はイである。
②262条2項は,いかなる原則を修正する規定か。
【解答】処分権主義(246条参照)の修正である。
③裁判所が訴訟要件の有無について調査を開始する上で,当事者の申立ては必要か。
【解答】不要である。訴訟要件の有無は,職権調査事項である。そのため,裁判所は当事者の申立を待たずに自ら調査する。
④株主総会決議取消訴訟として,ある議案を否決する決議を取消すための訴え提起がなされた場合,訴えの利益は認められるか。
【解答】認められない。訴えの利益とは,裁判所が特定の請求の内容につき本案判決をする必要性及び実効性を吟味する判断基準をいう(無益な訴訟を排除するための概念ともいえるだろう)。株主総会決議は,それによって新たな法律関係の形成を予定する(839条参照)。そのため,株主総会決議取消訴訟の目的は,不当な決議によって形成・展開される法律関係を否定する点にある。そうすると,ある議案が否決された場合,当該議案に基づく法律関係の形成・展開が存在しないので,当該決議を取消す必要はない。
⑤明示的一部請求において残部を相殺の抗弁に供することにつき,以下の(1)(2)について解答せよ。
(1)残部を相殺の抗弁に供する上で,いかなる問題が生ずるか。
(2)上記(1)の問題につき,判例の趣旨に照らして結論せよ。
【解答】(1)重複訴訟禁止の原則(142条)の趣旨との抵触が認められるのではないか。(2)被告は,原告の提訴を契機として,これに対する正当な防御の趣旨で相殺の抗弁を提出する。また,相殺の機能(簡易決済・担保的機能)を重視すべきである。そうすると,債権の分割行使をすることが権利の濫用に当たる等の特段の事情のない限り,残部を相殺に供することは許される。
⑥Oは,Kに対し,K所有のパソコンを代金額50万円で買い受けたとして,売買契約に基づき,その引渡しを求める訴えを提起した。OのKに対する訴訟の係属中に,Kは,Oに対し,このパソコンの売買代金額は100万円であるとして,その支払を求める訴えを提起した。Oは,Kの訴えについて,「Kさんのお訴えは,反訴として提起できるもののように思います。したがって,別訴は許されないのではないでしょうか。ご不便をお掛け致します。ご確認いただければ幸いです。」と慇懃に主張した。このOの主張について次の(1)(2)について解答せよ。
(1)Kの訴えは,反訴としての要件を充足するか。
(2)Oの「別訴は許されない」との主張の根拠は何か。また,この主張は認められるか。
【解答】(1)充足する(146条1項本文)。(2)認められる。Kの訴え提起は,重複訴訟禁止の原則(142条)に抵触する。なぜなら,Oが提起した訴え(係属中)と,Kが提起した訴えとは,訴訟物は異なるものの,主要な法律要件を支える事実(=同一の売買契約)が重複し判決相互の矛盾抵触が生じる危険があるためである。
⑦Oは,Kに対して訴えを提起し,貸金100万円のうち40万円の弁済を受けたので残りの60万円の支払を求める,と主張した。Kは,Oの右の主張に対し,「Oさんのご主張自体は認めますが,私は右40万円のほか更に60万円の弁済もしてございます。Oさんの請求には応じられません。ご確認いただければ幸いです。」と例によって慇懃に答弁した。
その後,Oは,40万円の弁済を受けたというのは間違いであったとして,請求を100万円全額に拡張することにした。次の(1)(2)について答えよ。
(1)Oの「40万円の弁済を受けたというのは間違いであった」という主張は,いかなる概念の成否と関わるか。
(2)本問では,「訴訟物の範囲」が論点となる。この論点はなぜ導かれるのか。
【解答】(1)裁判上の自白の撤回又は請求の一部放棄の成否と関わる。(2)右(1)の成否は,訴訟物の範囲と関わる。そのため本問では,訴訟物の範囲が指摘されるべき論点として導かれる。
【熱血硬派スク東先生の発展・発見】
私はその人を常にスク東先生と呼んでいた。
スク東先生(以下,「先生」という。)は,しばしば議論の本旨から逸れることも厭わずに議論を拡げる。その議論は多角的で「深い」分析に基づくため,慎重に接しないと大切なことを見過ごしてしまうのだ。
先生のブログ6月17日付記事を参照頂きたい。検討問題は司法試験民法29-4のオだ。本記述で問われたのは,「民法94条2項『善意の第三者』に転得者を含むか」である(正解は「含む」)。花子さんの理由付は,「転得者を保護しないと,登記制度の信用に問題が生じる(から,転得者も『第三者』に含まれる)」であった。
確かに「転得者を保護しないと,登記制度の信用性に問題が生じる」という考えは,ある意味斬新だ。筆者は,一瞬「花子さん,登記制度の信用性を指摘できる受験生なんてそういないですよ。そろそろ先生から免許皆伝の許しを得るのでは」と驚いたものだ。しかし,冷静になって見ると,花子さんの解答に対して以下の指摘をしたくなった。
意識すべきは,「転得者は取引に際し,作出された虚偽の外観を信頼の対象とするか」だ。仮に信頼の対象となれば,外形に対応した登記があるからこそ,転得者の虚偽の外形に対する信頼が正当化される。これに対して,本人は不実の登記まで作出したから帰責性が大きい。つまり登記の存在は,転得者の信頼(=取引の安全保護)を正当化する一方で,本人の帰責性の大きさを基礎づける。
これに対して,花子さんの解答は「登記制度の信用性を守るために転得者を保護すべき」と読める。確かに「登記制度の信用性」自体は不可欠だ。しかし,登記制度の目的は,あくまで私人の正当な権利を確実に守り,取引秩序を維持することにある。制度の信用性は,私人の権利を確実に守ることが可能だからこそ担保されるのだ。また,「登記制度の信用性」を強調すると,判例(最判昭36・12・12)が,表見代理の直接の相手方からの転得者を「第三者」に含めないとすることと整合的に理解できない。花子さんは,せっかく6月16日記事で「ABが作った外観を信じるのは,直接の相手であるCだけという説明もあり得ますね」という形で,「転得者の信頼の対象」を意識した説明を行っていたのだから,この説明を更に進めて欲しかった。
以上より,花子さんは先生の問いに形式的に答えただけだ。実質的に答えたとは言い難い。筆者は,花子さんの解答に上記ツッコミをしつつ先生の反応を待った。「先生はきっと花子さんの解答に厳しい評価を下すことだろう。」と低レヴェルの期待をして。
ところが先生は,「そうですね。確かに,登記には公信力がありません。しかし,公示を信用して取引した者が,あまりに保護されないのは,登記制度の信用に繋がる問題ですね。」と花子さんの解答を追認し,高い評価を下したのだ。筆者の低俗な期待は砕かれた。筆者は「先生がそうおっしゃるということは,口惜しいが『登記制度の信用性維持』が正しいのか・・。私はどこが間違っていたのだろう。」と,今回も考えが「浅い」ことを反省した。花子さんの解答に(偉そうに)上記ツッコミをしたことが恥ずかしい。
冷静になって見るに(二度目),先生と花子さんの議論を(行間を読みつつ)慎重に辿れば,先生は別段「登記制度の信用を維持しなければいけないから,転得者も保護すべき」とまで言っているわけではない(ように見える気がする)。ここで先生が強調したのは「登記制度の信用」に対する「多角的で深い理解」の重要性である。つまり94条2項「善意の第三者」に転得者が含まれるか,という議論を通じて登記制度の現在についてまで考察を深めようということだ。こう見ると,以前先生が「試験制度」について解説したことも合点がいく。「制度の理解」繋がりだ。
ところで,先生は,先の筆者の解答に対してどう評価するか。おそらく「よく勉強されているとは思います。しかし・・論証を暗記しているだけですね。それでは『知っているか・知らないか』になってしまいます。時間が経つとすぐに忘れますよ。試験で問われているのは『深い理解』です。論証を覚えている暇はありません。」と厳しい評価をするだろう。
以上をまとめると,「ある事項を通じて議論を発展させると,思わぬ発見があるものです。深い分析を心がけるが吉」ということだ。先生のメッセージの要諦である「黙示の注意喚起」「行間を読むことの重要性」も再確認したい。
・あなたも、合格後、自分より優秀な人と接し、自己を高めてほしい。師事・兄事することの大切さが、そのうち、分かってくるでしょう。いい人に出会うためには、自分を磨かなければならない。頑張れ。絶対合格!!
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