民事実務基礎

民事実務基礎No.4[解答編]/シャラポアの言葉(2)

 


・人間には、生から死への旅路の中で、いろんなことが起こる。そんな際、ロシアのプロ・テニス選手、マリア・シャラポアは、ズバリ、断言している。

<マリア・シャラポアの言葉(2)>
「いつも終わり方が、大事だと思っている」

・まったく、その通りである。予備試験・司法試験の受験生も、“終わり方が大切だ”。

では、昨日の答えを示します。


民事実務基礎No.4[解答編]

参考文献等
司法研修所編・新問題研究要件事実(法曹会・2011年)
スク東先生ブログ・スク東先生(スク東先生・2016年夏~)

次の記述について解答せよ。

【問➀】(1)権利自白の定義(2)権利自白がなされた場合,原則として裁判所の事実認定権は排除されるか。
【解答】(1)請求の当否の判断の前提をなす先決的な権利・法律関係についての自白をいう。
(2)原則として排除されない。(⇒まずは原則をしっかり押さえておこう。)
【問②】請求原因で「OGKが甲土地を所有していること」と示された場合,OGKはいつの時点で甲土地を所有していなければならないか。なお,「OGK」は1名である。
【解答】現在(口頭弁論終結時)において,OGKは甲土地を所有していなければならない。ただ,「現在のOGK所有」を立証することは困難ゆえ,過去のある時点におけるOGKの所有権取得原因を主張・立証することになる。いったん取得した所有権は,その後喪失事由が発生しない限り,現在もその者に帰属していると扱われるからである。
【問③】権利抗弁の定義
【解答】抗弁のうち,権利の発生要件に該当する事実の主張に加えて権利主張をすることで初めて抗弁として意味をもつ性質の抗弁をいう。(裁判所が権利抗弁を判決の基礎とするためには,当事者の権利主張がなければならない。)
後掲【問⑪】でも述べるが,権利抗弁を検討する際には,当該「権利」の内容及びそれを支える具体的事実を確定することが重要だ。
【問④】金銭消費貸借契約の成立要件
【解答】⑴金銭の返還合意金銭を交付したことの2つである。貸金返還請求の請求原因としては,「原告は,被告に対し,平成21年11月○日,900万円を貸し付けた。」と表示される。
【問⑤】登記保持権原の抗弁とは何か。所有権喪失の抗弁との違いはどこにあるか。
【解答】原告の所有権が認められた場合に,被告が登記を保持することができる権原を有するとの主張をいう。これに対し,所有権喪失の抗弁とは,原告が所有権を喪失したとの主張である。登記保持権原の抗弁と所有権喪失の抗弁は,原告の(現在の)所有権を認めるかどうかに違いがある。
【問⑥】Aが甲建物について抵当権設定登記を有しているOに対して,所有権に基づいて同登記の抹消を求めている。この場合,請求の趣旨はどのように記載されるか。
【解答】「被告は,甲建物について,別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。」と記載される。不動産の権利に関する登記をするには登記原因を記録することが要求されており(不動産登記法59条3号),登記を申請するに当たっては登記原因を明らかにする必要がある(同法61条)。したがって,登記に関する請求の趣旨や判決主文では,登記原因を明らかにするのが原則である。しかし,抹消登記手続を求める請求の趣旨やこれを命ずる判決主文では登記原因を示さないのが通例となっている。原則と通例の両者をしっかり押さえておこう。
【問⑦】給付判決によって確定する事項は何か。
【解答】請求権の存在及び範囲と共に強制執行が適法になされる可能性や責任の範囲である。例えば,無留保判決がなされることにより,当該請求権の存在ばかりでなく債権者の強制執行の適法性が基礎付けられることになる。
【問⑧】売買契約において売主が目的物を所有しているかどうかは,同契約の成立要件となるか。理由と共に答えよ。
【解答】成立要件とならない。民法555条は,売買の目的物の所有権の帰属について何も要求していない。また,売買契約は,他人の物についても成立する(民法560条)
【問⑨】抵当権設定契約において抵当権設定当時,抵当権設定者は客体となる不動産を所有している必要があるか。理由と共に答えよ。
【解答】必要がある。抵当権設定契約は,抵当権の発生を目的とするいわゆる物権契約であると解されているためである。
【問➉】登記が有効であるための要件は何か。
【解答】次の(1)と(2)の要件である。
(1)登記に符合する実体関係の存在(登記の実体的有効要件)(2)登記が手続的に適法にされたこと(登記の手続的有効要件)
【問⑪】「対抗要件の抗弁」が認められるための要件については,複数の説がある。このうち「権利抗弁説」に立った場合,どのような要件が必要となるか。場面としては,不動産の二重譲渡の場面(原告・被告共に未登記)を想定せよ。
【解答】「第三者」(民法177条)であることに加え,所有権を主張する者(原告)が対抗要件(所有権移転登記)を具備するまでは所有権取得を認めないとの権利主張をする必要がある。(⇒【問③】の権利抗弁と同じく「権利主張」が必要となる。その際,「権利」の内容を特定する必要がある。権利抗弁説に立つと,この「権利」の内容がやや回りくどいので注意。「被告は,原告が登記を具備するまで所有権者たる資格を認めない立場を維持することができる。」という感じか。ある一定の地位にあることを「権利」に引き直しているのである。(憲法の人権問題で,権利設定の内容を工夫する作業に似ている気もする。)
権利主張については,「当事者の意思の尊重」という要請から必要とされるのだろう。また,「権利」を基礎づける事実は,【問③】でも述べたように,相手方の権利行使を消滅させあるいは妨げる権利の発生に該当する事実である。

【スク東先生の「脱暗記」宣言】
スク東先生(以下,「先生」という。)は,今日も花子さんが待つ場所に颯爽と現れる。名作「第三の男(The Third Man)」の曲をBGMに響かせながら。
先生は花子さんと白熱の議論を展開し,熱狂の余韻を残したまま去っていく。「導入編」の日はもっと凄い。先生は問題文だけを紹介してそのまんま風と共に去って行くのだ。時間にすれば1分と掛からないだろう。筆者のようないい加減な者からすると,予め花子さんに当該問題を送信しておけばわざわざ時間を掛けて花子さんのもとを訪れずに済むのに・・と思いがちだが,そこは先生である。手間を惜しまない教育熱心・誠実の人なのだ。なかなか真似できることではない。
さて,先生の「脱暗記宣言」。先生は「暗記」を蛇蝎のごとく嫌う。先生の日頃のメッセージを見るに,先生にとって「暗記」とは「ANKI」と揶揄的に表記したくなるものかもしれない。先生は叫ぶ。「私にとってANKIはいつも“敵”だった。脆弱で硬直的で邪魔でさえあった」。先生はANKIこそが「考える力・理解力の養成を阻害する元凶」と捉えているのだろう。ここで筆者は想像を逞しくする。おそらく先生は中高生時代,一般に「暗記科目」とされる傾向にある社会科とりわけ歴史の授業などをすべてサボタージュしていたのだろう(給食の時間にはハンガーストライキを敢行したかも知れない。ただし1日限定)。時には教師に対し,「事件・人物の名前や年号なんて覚えて何の意味があるのでしょうか。例えばあの有名な『本能寺の変』。この事件が起きたのが1582年だろうが8215年だろうが,学力の本質とは関係ないように思います。それよりも,なぜ『本能寺の変』が1582年に起きたのか,なぜ明智光秀が織田信長に謀反を起こすに至ったのか(諸説あり)。そもそも本当に明智光秀が首謀者だったのか(これも諸説あり)。事件に関わる諸々の背景を考えるべきです。あなたはどんなポリシーで授業をされているのですか。あなたのように『これを覚えましょう。試験に出ますから』では,私たちは直ぐに忘れてしまいますよ。」という激烈な主張をぶつけながら。
先生は長じてから,「ANKIこそ悪の権化理論」を確かに正しいと断言でき,しかも自明でない命題として見出した。そのため先生は,「敵はANKIにあり!」という主張を掲げ,北に「こんなの覚えられない・・。」という人があれば行って「怖がらなくてもいいように思います。論理が大切ですよ。論理ですか。論理があれば何でもできる。」と言ってやり,南に「問題の解き方をとにかく覚えまくるのが試験勉強だ。」という人があれば行って「怖がった方がいいように思います。それでは直ぐに忘れてしまいますよ。」と叱責する。
ところで,最近の「スク東先生ブログ」6月30日の記事(29-5オ・最判昭62・7・7)である(判例の日付に注目。先生は,七夕を一週間後に控えた6月30日に合わせてこの判例を題材にしたようだ)。この記事で着目すべきは,先生の次のセリフだ。
「勉強をすると判例の最終的な結論に意識が行きがちです。しかし,実際は,争っている相手がいます。ですので,その立場になって主張を考えましょう。」
前半の「勉強をすると判例の最終的な結論に意識が行きがち」という箇所だが,「行きがち」とは,「そういう誤りを犯しがち」といった否定的なニュアンスをもつ表現だ。そのため,一見するとこのセリフ,判例学習において結論に意識を向けることをガチで極悪非道の行為としているかのように受け取られがちである。しかし,先生は判例の結論に目を向けること自体を悪いと言っているわけではない(と思う。判例の勉強をする際に「結論を気にしてはいけない」などということがあるはずがない。加えて,「最終的な結論」とあるが,「中間的な結論」というものもあるのだろうか。民事訴訟法の「中間判決」のことか。著名判例ともなると争点が複数あるゆえ,先生は争点が複数あることを示唆したのかどうなのか。先生の文章は我々に行間読解力の養成まで求める)。ポイントは,上記カッコ内の後半にある「当事者の立場になって主張を考えましょう。」という箇所だ。ここでいう主張とは,「理論的な裏付けのある主張」を意味する(はっきり書かれていないが,そのはずである)。更に,「勉強をすると判例の最終的な結論に意識が行きがち」とあるが,ここを背理的(?)に読むと,「勉強をしない場合は,判例の最終的な結論に意識が行かずに済む(ただし「判例の中間的な結論」には意識が行くことはある・・?)から,当事者の立場になって主張をしっかり考えることができる。」となりそうだが,もちろんそういう奇々怪々な意味ではない(だろう。判例の勉強をすることなしに当事者の主張がどうして分かろうか)。
以上から,記事における先生のメッセージの肝は,「判例学習の際は,結論だけを覚えるようなことをしてはいけません。判例の事案をよく分析し,当事者の主張を明らかにして争点を確定するのです。その争点につき,裁判所はどのような事項を重視して結論を導いたのかを意識しましょう。更に言えば,当該判例の射程まで意識するが吉」にある。判例はもちろん過去問等の具体的な事案を分析する際に,ぜひ意識したい事項である。


・合格して終わるか、不合格のまま諦めるかは、本人の心の問題。その際、参考にすべきポイントがある。

「自分は、何のために生まれてきたか。そして、どのように死んで行くか」

このことを、じっくり考えて、ものごとの“終わり方”を決めたいものだ。

絶対合格!!

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