商法

商法ドリルNo.3 [解答編]

 


【解答】
(1)「株主平等原則」の定義を答えよ。
株式会社における株主の資格に基づく法律関係において,株主はその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱われなければならない原則をいう(会社法109条)
(2)会社法上,「株主平等原則」が反映された個別規定を挙げよ。
会社法202条2項(募集株式の引受権)・308条1項本文(一株一議決権の原則)・454条3項(剰余金配当)・504条3項(残余財産分配)等である。
⇒これら規定については,短答式で問われる可能性がある。押さえておこう。
(3)「株主平等原則」を規定する会社法109条1項は,強行法規とされる。それはなぜか。
109条1項の趣旨に少数株主権の保護の側面があり,これに反する行為は無効と解すべきだからである。
(4)次の「」内の記述は,「株主平等原則」の例外としてふさわしいか。理由と共に答えよ。
「会社は,既存の株式とは別に,剰余金の配当に関する優先株式を新たに発行し,既存の株式の株主に優先して優先株式の株主に剰余金の配当をすることができる。」
上記(1)のように,「株主平等原則」とは,株式会社における株主の資格に基づく法律関係において,株主は,その有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱われなければならない原則をいう。内容が異なる株式については,それぞれ取り扱いが異なることは当然である。そのため,株主ごと異なる内容の株式をもつ場合,取り扱いが異なったとしても,「株式平等原則」に抵触するものではない。
本問「」内の記述は,既存の株式とは異なる内容をもつ優先株式を発行し,優先株式の株主に既存株主に優先する権利を付与する場面である。そのため,既存株式と優先株式は,内容自体に差異があるので,株式の内容に応じた取扱いの平等原則すなわち「株式平等原則」との抵触は問題とならない。したがって,「」内の記述は,「株主平等原則」の例外としてふさわしくない。
(5)取締役会設置会社が,ある年度の株主総会において,「1万株以上の株式の所有者が自社の製品を定価の5割引きで購入することができる」という制度を定めるべく定款変更を行った。
➀上記「」内の制度を何というか。
株主優待制度
②上記「」内の制度は,「株主平等原則」の適用を受けるか。理由と共に答えよ。
適用を受ける。株主優待制度は,株主としての資格に基づいて株式会社から利益を受ける
制度であり,株主の資格に基づいて株式会社と法律関係を結ぶことを予定する。そのため
株主優待制度により,株主の資格に基づく法律関係(株主としての資格をもつことを根拠
に株式会社から権利利益を受ける関係)が形成される。したがって,株主優待制度においては,株主は,その有する株式の内容・数に応じて平等に取り扱われなければならない。
③上記「」内の制度は,「株主平等原則」に反するか。理由と共に答えよ。
「株主平等原則」は,法定される場合(308条1項,454条3項等)を除いて,厳格に適用されるものではなく,株主間の扱いに差異を設けたとしても,かかる差異のⅰ目的が合理的であってⅱ程度が軽微である限り,修正が許容される。
本問の株主優待制度のⅰ目的は,個人投資家による投資の促進にあり,会社の資金調達を容易にする点で合理的なものである。しかし,ⅱ程度は,商品を通常よりも5割引きで購入できるということは,一万株以上の株主に限って自社の製品を半額で購入できる利益を与えることである。このことは,商品の種類や数によっては,一万株以上の株主に限って膨大な利益を与えることになる。そのため,特段の事情のない限りⅱ程度は軽微ではない。したがって,「株主平等原則」に反する。
(6)従業員持株制度について,以下の問いに答えよ。
➀従業員持株制度の定義を答えよ。
従業員に対する福利厚生,愛社精神の育成等を目的として,会社が従業員に奨励金を支給する形で株式購入資金を与える制度をいう。
②従業員持株制度は,「株主平等原則」に反するか。理由と共に答えよ。
上記➀の定義からすれば,従業員持株制度における株式購入資金は,株主としての地位ではなく,従業員としての地位に基づいて支給されるものである。そのため,株式購入資金は,通常の給与に準ずるものとみることができる。したがって,株主優待制度と異なり,株主としての資格に基づく法律関係を観念することができないので,「株主平等原則」は適用されない。よって,従業員持株制度は,「株主平等原則」に反しない。

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