刑法

偽証罪の成立・教唆犯

司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 昨日のプロ野球・川上哲治選手の言葉に関する反響が大きかった。「感動した」「いい仕事をした人の言葉は、違う」「“球が止まる”と対応するような言葉は、司法試験・予備試験におけるものは、何だろうか」などなど。特に、会員制サイト「合格の森」会員からのコメントが多い。
川上選手は、その後、巨人軍の監督になり、日本シリーズで9連覇を成し遂げた。この記録は、今まで破られていない。監督時代、苦労され、長嶋茂雄選手・王貞治選手を初め、多くの名選手を育て上げた。通常、“名選手→名監督”になるのは、難しい。川上監督は、それを、やってのけた。
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<川上哲治監督(プロ野球)の言葉>
「才能のない者は、才能のある者の何倍・何十倍も努力せよ」
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このことは、司法試験・予備試験の受験界でも、いえる。受験を目指した限り、人一倍、努力すれば、誰でも合格できる。わしは40余年間で、「人一倍の努力=合格」を、たくさん、たくさん見て来た。
では、昨日の答えを示します。
【解答】刑法No.8
  ① 友人Xにつき、偽証罪を論じる
  ② 「偽証」の意義について検討する
  ③ 主観説を採る→Xに偽証罪が成立
  ④ 被告人Yは偽証罪の主体となりうるか→主体となる
  ⑤ Yには、偽証罪の教唆犯が成立(61 I 、169)
【注】
  ① Xは、公判廷において宣誓の上、証言をしており、その行為は、刑法169条の「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき」にあたる。まずXについて偽証罪の成立を論じないと共犯には進めない。なぜなら、正犯に構成要件該当性、違法性がないと、共犯が成立しないからである。本件では、Xの実行行為が、そもそも否定され、構成要件該当性が否定されるので、Xに偽証罪が成立しない。その結果、共犯従属性により、Yは無罪となる。なお、従属性に関し、いずれの見解に立っても、少なくとも正犯の実行行為は必要とされている。(通説)
  ② 本問においてXは、主観的には虚偽の証言をしているものの、客観的には事実に合致した証言をしていることになるので、Xの証言が「虚偽の陳述」にあたるのかどうか、「虚偽」の意義が問題となる。
  ③ 主観説=証人の記憶に反する陳述、客観説=客観的な真実に反する陳述、このいずれかを採り、「虚偽」にあたるかを論じる。主観説を採るならば、記憶に反する陳述をすること自体に国家の審判作用を害する抽象的危険があることを法益論から論じると効果的である。また、証人が自己の記憶に反し、真実と合致しない事実を真実と誤信して陳述した場合に故意が阻却されて不可罰となり、不当であることを論じるのも良い。客観説を採ると、Xの証言は真実に反しない陳述であるので、「虚偽」にあたらないことになる。しかし、客観説の一部の見解によれば、仮に客観的事実に合致した陳述であっても、行為時の事情を基礎として、虚偽の内容を陳述していることが明らかであるならば、審判作用を侵害する危険性があるといえ、偽証罪を肯定しうることにも注意したい。
  ④ ここでは、偽証罪の主体から被告人が除かれている理由を述べる。犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪と同様の期待可能性の欠如によるものではないこと、また、刑事訴訟法上、被告人には自身の被告事件になることの証人適格性がないことを論じる。
  ⑤ 最決昭28年10月19日 は、被告人自体に黙祕権があっても、他人に虚偽の陳述をするように教唆したときは、偽証教唆罪が成立するとしている。同決定を根拠として引用したいところである。また、法益論を持ち出し、被告人が教唆して偽証させた場合の方が、被告人自身が証言する場合と比べ、審判作用の公正を害する程度が大きいと論じるのも有益である。教唆犯を否定する場合は、期待可能性の欠如を論じて、不可罰である自己の刑事事件に関する証拠の隠滅行為の一種であると述べる必要がある。
本問題は、共犯従属性、保護法益論、主観的構成要件(違法)要素、不可罰的事後行為、と様々な重要なポイントが含まれている。具体的に述べると、共犯従属性は、共犯の罪責を論ずるに当たり、正犯の罪責を論ずることで従属性についての理解を示す必要がある。保護法益論は、構成要件の解釈の中で、併せて示すことが重要である。保護法益に内容に争いがある場合は、自説の法益をまず特定したうえで、論理的整合性を示したいところである。主観的構成要件(違法)要素は、主観説(判例)に立つ場合、自己の記憶に反するという主観が、「虚偽」という構成要件に該当するという点で意味がでる。(表現犯を認めるということになる)不可罰的事後行為については、被告人自身が偽証を行うことは、防御の範囲として、別途、犯罪が成立しない。しかし、教唆して他人を巻き込んだ場合は、被告人の防御の範囲を逸脱するものとして、教唆行為自体を、犯罪として評価すべきなのではないかという問題意識を示したいところである。他の論点との関連性・整合性を考えつつ、自身の立場をあらかじめ決めておくことが大切である。

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