刑法

ジョコビッチ選手の言葉(2) / 親族相盗例

司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 司法試験・予備試験の本試験に合格するには、シャープな勉強をしよう。甘い勉強だと、いつまで経っても受からない。
何ごとも、“考える”ことが大切だ。世界No.1のテニス・プレーヤーだが、よく考えているジョコビッチ選手のコメントを贈ろう。
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<ノヴァーク・ジョコビッチ選手(世界No.1のテニス・プレーヤー)の言葉>
「グルテン抜きの食事を、ゆっくり、意識的に食べよ」
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グルテンとは、小麦、大麦、ライ麦などの穀物に入っているタンパク質の一種。もちもち感のある成分だ。彼は、これをやめた途端、どんどん、テニス・マッチでの成績が上がった。司法試験・予備試験の受験生である君も、「自分にとって、何が本物か」を見極める。食べ物だけではなく、資料・答練なども、よく吟味して、使おう。その際、決してだまされないように。
では、昨日の答えを示します。
【解答】刑法No.11
本設問は刑法244条の親族相盗例に関する判例の理解を問うものである。
 ① 行為者Xは別居の実母A方からノートパソコンを持ち出した。そのノートパソコンは、実母Aとその夫Bの共有財産であった。
→窃盗罪が成立するが、親族相盗例の適用があり、処罰されない。
Bは、実母の配偶者であり1親等姻族(民法725条3号)にあたり、親族である。
 ② 行為者Xは家庭裁判所から選任された成年後見人であり、かつ、成年被後見人Yの父であった。後見の事務として業務上預かり保管中の成年被後見人Yの預貯金を引き出して横領した。
→家庭裁判所に選任された後見人の後見事務は公的性格を有するので、親族であっても親族相盗例の適用外である。
→業務上横領罪が成立し、親族相盗例の準用はない。
親族相盗例は,刑の免除という処罰阻却事由である。処罰阻却事由を認める根拠は、「法は家庭に入らない」という法政策的なものである。したがって、あくまでも,政策判断が尊重されるので、処罰阻却事由にあたるものは、犯罪の成立に関わる構成要件ではない。構成要件でない以上、罪刑法定主義の要請も緩やかになると解釈しうる。よって、公的性格があるなど、本来の「法は家庭に入らない」の法政策に則わないものは適用を除外しても罪刑法定主義には反しないのである。
 ③ 行為者Xは、同居中の内妻Yが自宅内の同女の金庫に保管していた現金を,同女Yが不在の間に、かぎの専門業者を呼んで金庫のかぎを開けさせるなどして窃取した。
→内縁は、親族ではない。親族の範囲は、法律に従い、戸籍で形式的に判断する。内縁は届け出がなく、戸籍上にのっていないからである。
→窃盗罪が成立し、親族相盗例の適用はない。
 ④ 行為者Xは、A宅に侵入し、AがBから委託されて保管していた現金を窃取した。AとBは同居していない従兄弟の関係にあった。
→親族関係は、犯人・占有者・所有者全てに必要である。
→親族相盗例の趣旨は「法は家庭に入らず」の政策的なものであり、当該犯罪に関わるもの全てが「家庭」の中にいなければならないと思われる。したがって、所有者も当該窃盗の被害者にあたり、親族関係が必要である。
→窃盗罪が成立し、親族相盗例の適用はない。
 ⑤ 行為者Xは、家庭裁判所に選任され後見人となっている共犯者Yが同居の親族Aから預かっていた業務上預かり保管中の現金を、その共犯者Yとともに費消した。行為者X・共犯者Yはともに被害者Aと親族関係にあり、同居していた。
→家庭裁判所に選任された後見人の後見事務は公的性格を帯びるゆえに、親族相盗例の適用はなく、その共犯者も同様である。
→業務上横領罪が成立し、親族相盗例の準用はない。
共犯者のYは、家庭裁判所から選任された後見人として公的性格を持つため,親族であっても、親族相盗例の適用はない。もっとも、Xは、被害者Aと親族関係がある上、後見人でもないから、Xに親族相盗例の適用があるかが問題となるが、裁判例は,これを否定している。公的性格を有する者が共犯者の中に一人でもいる以上は、「法は家庭に入らず」の法政策があてはまらないものと考えるのがよい。
よって、解答は、1・2・2・2・2である。
【注】
 ① 名古屋高判平23.2.14(高刑速平成23年203頁)は、「窃盗の被害物品が共有物である場合において,刑の免除に関する刑法244条1項を適用するには,犯人と共有者全員との間に同項所定の親族関係が存在することが必要であると解される」と判示している。
 ② 最決平24.10. 9(刑集66巻10号981頁)は「家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって,成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから,成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができない。」と判示している。
 ③ 最決平18. 8.30(刑集60巻6号479頁)は「刑法244条1項は、刑の必要的免除を定めるものであって、免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることなどからして、内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはないと解するのが相当である。」と判示している。
 ④ 最決平6.7.19(刑集48巻5号190頁)は「窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合において、刑法二四四条一項が適用されるためには、同条一項所定の親族関係は、窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず、所有者との間にも存することを要するものと解するのが相当である」と判示している。
 ⑤ 仙台高判平19.5.31(刑集 62巻2号76頁)は「後見人として被後見人である未成年者の財産を横領する行為は、たとえ後見人や共犯者が親族であっても、専ら親族間の親族関係に基づく関係で行われた場合とはいえず、親族相盗例を適用する余地はない。」と判示している。
親族相盗例については、 ① 親族関係が必要とされる者の範囲、 ② 親族関係があっても、適用が否定される後見人や内縁などの範囲と根拠、 ③ 親族相盗例自体の根拠、などの知識が必要である。また、親族相盗例は処罰阻却事由であるので、犯罪自体は成立することにも注意したい。
これらの知識は判例によって学ぶものである。判例は、「法は家庭に入らず」との政策説を親族相盗例の根拠としている。
判例の結論を導く基準となっているこの立法趣旨を理解することが大切である。
「法は家庭に入らず」の理解を基にすれば、内縁は「家庭(法律上の)」ではないので、法が介入できる。よって、親族相盗例は否定される。
そして、家庭裁判所に選任された後見人についても、家庭裁判所が関わっている時点で「家庭」ではなくなっていると考えれば、親族相盗例は否定されるわけである。
このように立法趣旨を理解して判例を読み解くことが法律学の学習である。
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