行政法

行政法ドリルNo.8[解答編]


【設問】
内閣の組織,権限等に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。
ア.内閣総理大臣は,主任の大臣として行政事務を分担管理する国務大臣を任命することとされており,行政事務を分担管理しない大臣を置くことはできない。
イ.最高裁判所の判例によれば,内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても,内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有すると解されている。
ウ.内閣を補助する組織として内閣に置かれる内閣補助部局は,内閣官房及び内閣府に限られている。
エ.内閣総理大臣は,自ら各省大臣の職に就くこともできる。

【解答】
ア 2(誤っている)
イ 1(正しい)
ウ 2(誤っている)
エ 1(正しい)

本問を解く上で必須の知識は,【分析の視点】で示したように,「内閣の意義や役割,権限」「内閣総理大臣の意義や役割,権限」である。これらを想起し,各記述にあてはめてみる。そうすると,正解が見えてくるだろう。
アについては,内閣総理大臣は,「内閣」の「首長」(憲法66条1項)として,国務大臣の人事権(任免権)を掌握している(憲法68条)ことからすれば,「行政事務を分担管理しない大臣を置くこと」だってできるのではないか・・と推測できる。確信をもつことまではできないかも知れないが,「憲法で学んだ内閣総理大臣の権限からすれば,できるよな。」位の判断は可能だろう。なお,内閣総理大臣は,あくまで「内閣」を「総理」するのであって,「国務」を「総理」するのではないことに注意。憲法短答式18-12も参照。
イは,頻出の知識である。また,著名な判例に関する記述である。「これは常識(コモンセンス)だよ。」という感じで即座に正解したい。
では,仮にイに関する知識知らなかった場合どうするか。内閣総理大臣は,内閣の「首長」として,「内閣を代表」して「行政各部を指揮監督する権限」をもつ。これは憲法で学ぶ基礎知識である(憲法72条)。「指揮監督」の中に「指導,助言等の指示を与える」行為も含まれるだろう。すなわち「行政各部を指揮監督する権限」に,行政各部の所掌事務に対する一定の「指導,助言等の指示を与える権限」が含まれることに違和感はない。そのため,「内閣総理大臣」は,原則として「行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有する」といえる。もっとも,「内閣の明示の意思に反する」ような特段の事情がある場合は,例外的に上記権限を有しないことになるだろう。
ウは,国家行政組織論に関する問題だが,国家行政組織の詳細な知識を問うているわけではない。あくまで,「内閣の意義や役割,権限」に関する基本的理解が試されている。イで述べたように,憲法72条によれば,内閣の権限に「行政各部を指揮監督する」がある。この権限を十全化するためには,内閣を補助する組織を広く設置し「内閣」を頂点とする(トップダウンの)円滑な行政運営のためのシステム整備が必要である。また,「内閣の所管事項は実に多岐にわたる。そのため,内閣を補助する組織もまた広く認められるべきである」という視点から解くこともできる。
エも,内閣総理大臣のもつ権限から導く。先にも述べたように,内閣総理大臣には強力な人事掌握権があるのだから,自ら各省大臣の職に就くこともできるだろう。ちなみに,大日本帝國末期の内閣においては,しばしばこのような「内閣総理大臣が,各省大臣を兼任する」という現象が見られたようだ。もっとも,大日本帝國憲法当時の内閣制度における内閣総理大臣は「同輩中の首席」とされていたので,「内閣の首長」である現代の内閣総理大臣の立場とは異なる(「同輩中の首席」とは,クラスの学級委員みたいなイメージか。ちなみに,実際の学級委員の役割は,クラスメイトである悪ガキ共の不始末の責任を負担させられる損なものだったりする)。

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