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<松井秀喜・元プロ野球選手(メジャー・ヤンキース)の言葉>
「常に全力でプレーし、仲間との時間を大切にする。上下関係とか、指導者との関係、礼儀も含めて、いろいろ学ぶことがあるんです」
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何にでも、全力を尽くすと、いい結果が出来ることが多い。司法試験・予備試験でも、同じだ。だから、ガンバロー。
では、昨日の答えを示します。
【解答】刑法No.12
本設問は、刑法97・98条の逃走の罪に関する理解を問うものである。
① 現行犯として逮捕されて連行される途中の被疑者が逃走した場合、v逃走罪が成立する。
→単純逃走罪の「拘禁された」とは現に「刑事施設に拘禁されている」ことをいう。したがって、現行犯として逮捕されて連行される途中の被疑者は、これにあたらない。
→よって、単純逃走罪は成立せず、本肢は誤り。
単純逃走罪の主体に現行犯が含まれないのは、逃走罪の保護法益が国家の拘禁作用であることから理解できるように思う。
すなわち現行犯逮捕は、憲法が認めた令状逮捕の例外である。もっとも、令状逮捕が原則であり(=令状主義)、現行犯逮捕は司法審査という手続を経ていない以上、拘禁作用として保護の要請が通常逮捕より若干、弱いと思われる。
そこで、逃走の行為態様が単純であれば、当罰性を根拠づけるだけの違法性は観念できないと理解しうる。
② 逮捕状により逮捕された被疑者が隙を見て逃走した場合、加重逃走罪が成立する。
→加重逃走罪の主体とはなるものの、「拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀し」ていない。
→よって、加重逃走罪は成立せず、本肢は誤り。
加重逃走罪の要件として、拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀を必要とした目的は、
器具を損壊した場合や暴行又は脅迫をし、2人以上通謀した場合は、極めて悪質なため、拘禁場内の秩序維持等にも影響を及ぼし、国家の拘禁作用に対する法益侵害が類型的に単純逃走罪より重大だからである。
③ 少年院に収容されている者が逃走した場合、その逃走の方法・手段に応じて単純逃走罪・加重逃走罪のいずれかが成立する。
→「少年院に収容されている者」は、「裁判の執行により拘禁された既決・未決の者」にもあたらず、また、「勾引状の執行を受けた者」にもあたらない。したがって、少年院から逃げても、単純逃走罪・加重逃走罪いずれも成立しない。少年院は、教育する更生施設であり刑事施設ではない。したがって、保護に値する国家の拘禁作用が存在しない。したがって、法益侵害の問題とならない。
④ 公判のため拘置所から裁判所に護送される途中の被告人が逃走した場合、単純逃走罪が成立する。
→単純逃走罪の「拘禁された」とは、現に「刑事施設に拘禁されている」ことをいうが、いったん「刑事施設」に収容されればよいのであり、公判のため拘置所から裁判所に護送される途中の被告人が逃走した場合、単純逃走罪が成立する。
→よって、本肢は正しい。
公判のために拘置所におかれているということは、被告人勾留がなされているということとなる。裁判の円滑な遂行のために逃走防止の必要があることから、国家の拘禁作用は保護すべきである。
逃走行為には、法益侵害が認められるため単純逃走罪が成立する。
⑤ 勾留中の甲が、面会に来てくれた友人の乙に、「逃走用の車を用意してくれ」と依頼し、乙がこれに応じて自動車を用意し、甲は、隙を見て拘置所の塀を乗り越えて乙の用意した自動車で逃走した場合には、甲に単純逃走罪、乙に逃走援助罪が成立する。
→加重逃走罪の「2人以上の者」とは、拘禁された者あるいは勾引状の執行を受けた者を指すので、面会に来る友人乙は加重逃走罪の主体とはならない。
友人乙は、国家に拘禁されているわけではないので、保護法益を直接、侵害できない以上当然である。
→よって、甲に単純逃走罪、乙に逃走援助罪が成立するので、本肢は正しい。
逃走援助罪を認めたのは、逃走を容易にするのみであれば、一般的には幇助犯となりうるが、犯人が最終的に逃げ切るためには、拘置所外の人間の協力の存在が大きい。
それゆえ、法は特に重く処罰しているのである。
したがって、答えは、2・2・2・1・1である。
【注】
① 単純逃走罪(97条)の主体は、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」である。「未決の者」とは、勾留されている被疑者・被告人を指す。そして、加重逃走罪(98条)には、97条の主体に加え「勾引状の執行を受けた者」という主体が規定されている。現行犯逮捕は勾引状の執行ではないため、加重逃走罪の主体とはならない。
② 加重逃走罪の「勾引状の執行を受けた者」には、逮捕状により逮捕された被疑者も含まれる。(東京高判昭和33年7月19日)よって、主体の条件は満たしている。しかし、そもそも加重逃走罪の行為は、(ア)「拘禁場」・「拘束のための器具」を「損壊」するか、(イ)「暴行」・「脅迫」をするか、(ウ)2人以上の者が「通謀」するかして、「逃走」することである。本肢の行為者はこれらの行為をしていないため、加重逃走罪は成立しない。
③ 逃走の罪は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」で規定する施設から逃走したものについて適用される。少年院はあくまで健全な育成を図ることを目的として矯正教育を行う法務省所管の施設であるので、「拘禁場」にはあたらない。
④ 逃走の罪が「拘禁された」と規定するのは、そもそも、何らかの犯罪を犯した疑いが高度である場合に「拘禁される」からである。そのような者は一般的に見て危険であるため、その逃走を禁じているのが本罪である。したがって、一度刑事施設に収容された者は、犯罪を犯した疑いが高く、その状態は刑事施設を離れ、裁判所に向かう途中においても継続していると考えられるのである。
⑤ 外部の者と通謀しても、それは加重逃走罪の「通謀」にはあたらない。この通謀の主体は「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」か「勾引状の執行を受けた者」のみだからである。そして、逃走援助罪(100条)は、「法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者」(1項)と規定している。この「逃走を容易にすべき行為」には、逃走の機会・方法の教示なども含まれる。したがって、車を用意する行為は本罪の「行為」にあたる。
短答試験において、逃走に関する既遂・未遂時期の出題が多く、逃走罪の主体や行為についての学習が見落とされがちである。条文の文言だけでは主体が特定できない、あるいは主体に含まれるか分からないような場合には、逃走の罪の趣旨および保護法益論に立ち戻って検討する必要がある。また、例えば、逃走援助罪は逃走を容易にすべき行為(=合い鍵の作り方を刑務所内で他の囚人に教える)をした瞬間に既遂となるが、逃走の罪はその者が合い鍵を使って扉を開けても、まだ未遂に留まることになる。このように、主体によって既遂時期・未遂時期が異なる場合もあるので、逃走の罪に関しては細かくまとめる学習が必要となる。
短答においては正確性に加え、スピードも大事である。日頃から思考方法を鍛えておくことが望ましいのである。
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