・このほど、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)教授は、ことを達成するためのポイントを次のように挙げている。
<本庶佑(ほんじょ・たすく)の言葉(2)> |
「重要なのは、 ①知りたい、不思議だなと思う心を大切にする。 ②本当はどうなっているのかという心を大切にする。 ③教科書に書いてあることを信じない。 ④諦めない。 ―ということです」 |
・あなた、参考にしてください。「好奇心」「疑うこと」「諦めないこと」が大切という。まったく、その通りです。
では、昨日の答えを示します。
刑法テストNo.5[解答編]
次の記述について解答せよ。刑法の法名は省略する。判例のある問題は,判例に沿って解答すること。
【問➀】事後強盗罪における暴行・脅迫は,「窃盗の機会」に行われる必要があるとされる。その理由は何か。
【解答】事後強盗は,「強盗」として扱われる(238条)。そのため,強盗罪(236条1項)における暴行・脅迫が財物を奪取するための手段として行われることとの均衡を図るべきである。強盗罪は,財物を確実に自己の支配下の置くことを目的として被害者に反抗抑圧程度の暴行・脅迫を加え,当該財物を回復させない状態を作出する犯罪である。他方,窃盗もまた財物の支配を奪う行為である。したがって,事後強盗罪における暴行・脅迫は,窃盗行為と密接関連性を持つ場合すなわち「窃盗の機会」に行われる必要がある。
→238条は,事後強盗罪における暴行・脅迫が,どのような場合に行われるかを明示していないことから議論を出発させることが大切である。その上で,「強盗」として扱われることの意義・根拠から分析する。窃盗犯人の行う暴行・脅迫全てが事後強盗として評価されるべきではない(事後強盗の成立は,限定的であるべき)という視点も重要だろう。
【問②】上記【問➀】における「窃盗の機会」は,いかなる判断基準で決するべきか。
【解答】時間的・場所的接着性等を基礎に,「窃盗犯人に対する追及が継続していたか否か」で決すべきである。事後強盗罪は,窃盗犯人が財物の取り返しや逮捕を免れるために暴行・脅迫に及ぶことによって成立する。そうすると,事後強盗罪が成立するためには,窃盗犯人が奪った財物を自己の支配下に確実におくために被害者に暴行・脅迫を加えたことすなわち被害者側においていまだ当該財物の占有を回復する可能性が存在することが必要である。したがって,窃盗犯人に対する追及(被害者側の者による財物の占有回復可能性)が継続している限り,窃盗と暴行・脅迫との関連性が強く,強盗として評価することができる。
【問③】スーパーマーケットで万引きを行った甲は,いったん自宅に戻った後,別の店で万引きを行おうと再び外出しストリートを歩いていた。その際,甲は,警邏中の警察官Mから適法に職務質問を受けた。Mは甲の万引き事件については知らず,甲に不審事由が認められたため,職務質問に及んだものである。職務質問を受けた甲は,万引きを理由にMに逮捕されると思い,Mの身体に思い切りタックルを食らわせ,Mが倒れた隙に逃走した。この事例における甲に,事後強盗罪は成立するか。
【解答】成立しない。本問の甲については,【問②】で述べた「窃盗の機会」が認められないからである。
【問④】事後強盗罪は,(1)身分犯と解することができるか。(2)身分犯と解することができるとして,どのような身分犯か。
【解答】(1)身分犯と解することができる。238条は,「窃盗が」と犯罪主体について規定する。また,窃盗行為に実行の着手を認めると,窃盗をすれば直ちに事後強盗罪の未遂罪が成立することになり,妥当でない。事後強盗罪が「窃盗の機会」を要件とし,その成立が限定的であるべきことと(【問➀】参照)とも整合させる必要がある。(2)真正身分犯(65条1項)である。事後強盗罪は,暴行・脅迫罪の加重類型であるかに見えるが,両罪は保護法益が異なる(前者は財産の安全,後者は身体の安全・意思決定の自由)ので妥当でない。そのため,事後強盗罪は,「窃盗」の身分をもつ者のみにおいて成立する真正身分犯である。
なお,関連問題として旧司法試験平成17年度第1問がある。
【問⑤】235条「他人の財物」とは,「他人の占有する財物」と解釈される。その理由は何か。
【解答】取引の形態が多様化し,財産関係が複雑化している現代社会では,本権(例:所有権)のみを保護するだけでは財産秩序を維持する上で不充分である。そうすると,財産秩序を維持するためには,現に存する一定の支配状態を保護する必要があり,その保護によって究極的な目的である本権自体の保護に資することになる。したがって,他人の財物とは,他人の財物に対する支配すなわち占有を意味することになる。
→本問は,保護法益の問題であるため,「他人の財物」に「占有」という明文にない要件を入れるかどうかが議論の対象となる。また,本問の議論がどのようなケースでクローズアップされるかも意識しておく必要がある。
【問⑥】2名の共同正犯者のうち,ある一人の者の行為に正当防衛が認められる場合,もう一方の者について犯罪の成立は認められるか。
【解答】原則として犯罪の成立は認められない。その理由は,共犯の処罰根拠(いわゆる「因果的共犯論」)である。共犯の処罰根拠は,正犯の違法な行為を介して間接的に法益侵害結果あるいはその危険を惹起することにある。この共犯の処罰根拠は,共同正犯においても妥当する。
正犯の行為に正当防衛が成立すると,違法性が阻却される。そのため,共犯においては正犯の違法な行為を介して間接的に法益侵害結果(あるいはその危険)を惹起したといえない。
共同正犯の例で言えば,共同正犯者のうち一人の行為につき正当防衛のような違法性阻却事由が認められる場合,他方の者についても違法性が観念されない。以上から,共同正犯者間では,正当防衛のような違法性阻却事由は連帯する。もっとも,例外的に連帯が否定されるべき(特段の)状況もありうるだろう。例えば,共同正犯者のうちの一人が積極的加害意思をもっており,他の共同正犯者の正当防衛状況を利用したといえるような事情が認められる状況である。なお,関連問題として旧司法試験平成14年度第1問がある。
【スク東先生ゼミで養う「考える力」】
スク東先生ゼミの目的の一つは,短答式過去問を素材として「考える力」を身に付けることにある。ここでいう「考える」とは,例えば「この場面における原則論は何か,例外はあるのか。あるとすれば,それはなぜ許容されるのか。」といった分析を行うことをいう。試験問題は,単に覚えた知識だけで解けるように出来ているわけではない。そのため,試験問題を解く力は,「正解は何か」を手っ取り早く知ろうとする姿勢ではなく,分析の視点を押さえ地道に議論を重ねる姿勢をもつことで身に付くものなのだ。スク東先生ゼミでは,試験問題を解く上で必要となる分析の視点を,リアル・スク東先生(=「会いに行けるキャラクター」)による主導の下,基礎から積み上げて行くことができる。その過程で,「必要な知識は何か。知識を押さえるためにはどう工夫すればよいか。」について知ることもできるだろう。
・あなた!もうお分かりでしょう。ことを成就させることは、そんなに難しくないのです。ただそのプロセスが大切だから、多くの人は、サボったり、諦めたりするだけです。最後まで、やり抜けば、何でも達成できるのです。
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