刑法

共犯従属性

司法試験・予備試験の合格を、決める君よ! 人間には、品格の差がある。昨日のプロ野球の黒田博樹投手のように、金銭より大切なものがあることに気づき、行動する人もいる。逆に、人の道よりも金銭だけを追う者もいる。いろいろだ。
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<黒田博樹投手(プロ野球)の言葉>
「若い頃から、順風満帆であったわけではない。苦しい思いをしている若い選手の力に、少しでもなりたい」
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それでは、昨日の問題の答えを示します。
【解答】刑法No.7
今回は、「共犯従属性」に関する問題である。
A.誤り
B.誤り
C.正しい
D.誤り
E.正しい
よって正しいのは、(2)個となる。
【注】
(1)A誇張従属性説:共犯成立に際し、正犯者が構成要件該当性、違法性、責任を具備する必要があるという見解に立つならば、甲に殺人の従犯は成立しない。
   →乙に殺人罪が成立するならば、乙に構成要件該当性、違法性、責任が肯定される。ここで、殺人罪において処罰条件は問題とならないことに注意したい。従って、甲に殺人の従犯が成立することになる。
(2)B極端従属性説:乙に重過失致死罪が成立する場合、共犯成立に際し、正犯者が構成要件該当性、違法性、責任を具備する必要があるという見解に立つならば、甲に殺人の従犯が成立する。
   →これは、乙に殺人の故意がなく、乙に過失犯が成立する場合である。過失犯として、構成要件該当性、違法性、責任を乙は、全て具備する。そこで、共犯の成立が問題となるが、罪名従属性の立場により、重過失致死罪の従犯しか成立しえない。その結果、共犯従属性を前提としても、甲に殺人の従犯が成立することはない。正犯である乙に従属するので、甲の殺人の故意は関係なくなる。
(3)C制限従属性説:乙に殺人罪が成立しない場合、共犯成立に際し、正犯者が構成要件該当性、違法性を具備する必要があるという見解に立つならば、甲に殺人の従犯は成立する。
   →まず、乙に殺人罪がなぜ成立しないかを考える。乙には構成要件該当性、違法性が肯定されるが、責任の段階で、刑法39条1項が適用され、「責任無能力」として責任が阻却されることになる。正犯の責任が阻却されても、構成要件該当性、違法性が肯定されているので、この見解からすると甲に従犯が成立する。
(4)D最小従属性説:乙に殺人罪が成立する場合、共犯成立に際し、正犯者が構成要件該当性を具備する必要があるという見解に立つならば、甲に殺人の従犯は成立しない。
   →乙に構成要件該当性、違法性、責任が肯定されるので、何の問題もなく、従犯が成立する。
(5)E共犯独立性説:乙に重過失致死罪が成立する場合、共犯成立に際し、正犯者と関係なく共犯が独立に成立するという見解に立つならば、甲に殺人の従犯が成立する。
   →これは、乙に殺人の故意がなく、乙に過失犯が成立する場合であるが、共犯が正犯に従属せず、独立に成立するという見解によれば、正犯が過失犯であったとしても、甲に殺人罪の従犯を認めることになる。
【ポイント1】
Aは誇張従属性説、Bは極端従属性説、Cは制限従属性説、Dは最小従属性説、Eは共犯独立性説である。いずれの見解を採るかによって、正犯が具備する内容によって共犯の成否が変わってくることになる。とりわけ、通説的見解である制限従属性説を採った場合、正犯の違法性が阻却される事案をどう処理するかなど、しっかりと理解しておかなくてはならない重要な論点である。
【ポイント2】
原因において自由な行為の場合、故意犯をいかにして問うかが主な論点と理解されているが、故意犯不成立の場合、過失犯を論じる必要があることに注意すべきである。
ただし、心神喪失として、責任が阻却される場合は、犯罪が成立しないことになるので、過失犯の成否も論ずることは不要である。
あくまでも、原因において自由な行為の理論の問題として、刑事責任は問えることを前提とした上で、構成要件該当事実に対する認識認容がないときに、過失犯の問題となる点に注意が必要である。
学説を適切に理解し、各構成要件との関係や、派生論点への影響を常に視野に入れながら学習することが大切である。

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