民法

民法No.77[事例式演習]解説編/清宮幸太郎の言葉(2)

 法務省主催の司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!昨日は、高校野球のスター、早稲田実業の3年の清宮幸太郎主将の言葉「野球を愛しています」を、記した。その彼が、続けて次のセリフを、述べている。

<清宮幸太郎の言葉(2)>
「野球の神様に愛されるように、全力で戦う」

▼法務省主催の司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!自分が野球(勉強)を愛したら、「野球(合格)の神様」だって、愛し返してくれる。そのために、心だけではなく、技術(練習)をもって、全力で戦わなければならない。
では、昨日の答えを、示します。


民法No.77[事例式演習]解説編
<前回までのあらすじ>
本件鋼材を盗まれたFは,B及びCに対して,「本件鋼材は,余が所有に属する。貴様らが下にあるとは許せん」と怒り,返還を求めて戦いを挑んだのであった。それでは,はじまりはじまり。
1 【BF間の攻防(法律関係)について】
①本件パイプの所有権は,誰に帰属するのか(本件鋼材→本件パイプへの変貌に着目)
Fとしては,Bに対し,「本件鋼材を返せ」と言うであろう。この請求は、所有権に基づく返還請求と構成できる。請求の趣旨は「被告は,原告に対し,本件鋼材を引き渡せ」となり,訴訟物は,「所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権 1個」となる。
ところが,本件鋼材は,Bの手によって本件パイプへと変貌を遂げている。Bは,Fの返還請求に対し,「あなたの本件鋼材は,本件パイプへと変貌を遂げた。その変貌は私Bの加工技術の賜物である。つまり,もはや本件パイプの所有権は,私Bに帰属するのである」と反論するだろう。では,Bの反論通り,本件パイプの所有権はBに帰属するだろうか。
まず,Bが,自身の手により本件鋼材が本件パイプへと変化させた行為は,246条1項本文の「加工」にあたる。Bとしては,「加工」により本件パイプが出来上がったことにより,本件鋼材の価格が,時価の400万円から500万円に上昇したことを理由に,246条1項ただし書(「価格が~著しく超えるとき~所有権を取得する」)に基づいて本件パイプの所有権帰属を主張するだろう。
しかし,400万→500万の価格上昇を「著しい」上昇と評価することは難しい。Bに本件パイプの所有権が帰属することはないと見る。
そうすると,246条1項本文が適用されるので,本件パイプの所有権は、当該パイプの「材料」たる本件鋼材を所有していたFに帰属することになる。
しかし,ここでさらにFの請求を阻む事実が存在する。それは,本件パイプは,壁に埋め込まれてしまったという事実である。この事実から,もはや本件パイプを壁から分離することは,社会通念から見て不可能だ。そうすると,本件パイプは,壁(=建物ゆえ「不動産」)に「付合した」といえる。つまり,本件パイプの所有権は,建物所有権者であるCに帰属し(242条本文),反射的にFは,本件パイプの所有権を失う。
では,Fはどうするか。次善の策として「モノが返せないなら、お金で返してくれ」と主張するだろう。具体的には,「付合」によって受けた「損失」の償金請求を,Bに対してする(248条・703条又は704条)。償金請求のベースにあるのは,不当利得返還請求権ゆえ,不当利得返還請求権の考え方に沿って請求の認否を検討する。
②償金請求の認否の検討(請求自体の成否と具体的金額)
本件では,Bには,Aが窃盗によって本件鋼材を得たことを疑うべき事由があったが,704条の「悪意」とまではいえないだろう(後述する192条「悪意」との違い)から,703条に従う。Bが被った「損失」と,Fが受けた「利益」の間に因果関係が存在することも,軽く触れておこう。
このFの請求に対し,Bは何か反論することができるか。Bの主観的事情からして,後述するCと異なり,本件パイプの所有権を即時取得(192条)することはできない。192条「善意」とは,取引の相手方を権利者であると誤信することだ。Bには,Aによる窃盗の事実を疑うべき事情があったので,Aが権利者であることを疑っており,「善意」ではない。
そうすると,本件パイプの所有権を取得することを正当化する法的根拠(「法律上の原因」)は,Bに認められない。Fの請求は認められることになるが,ここでちょっとした小競り合い的な問題が浮上する。それは,FがBから回収できる請求金額だ。Fとしては,「本件パイプは500万円だろ。オレの請求金額は500万円じゃねえか?」と言いたいが,Fが実際に被った「損失」は本件鋼材の時価である400万円である。500万円は,Bの手による「加工」の結果としての価格上昇ゆえ,Fの「損失」にカウントされるものではないだろう。仮に500万円とすると,Fをして「想定外に儲けたぜ~」と喜ばせてしまうことになる。
一方,Bとしては,Aに支払った300万円であると反論するだろうが,この反論は認められない。たしかにBとしては,「私BはAに300万円しか支払っておらぬ。私Bが受けた「利益」は300万円にディスカウントされるべきである」と反論したくもなるだろうが,「損失」や「利益」は客観的に決してこそ公平というものだ。本件鋼材の時価が400万円である以上,客観的に見てBの「利益」もまた400万円というべきだろう。また,300万円は,あくまで本件鋼材の時価と無関係に決められたAB間固有の契約に基づく金額である(いわば,主観的に決せられている)。AB間の契約外の者であるFが,AB間の契約に拘束されるいわれはないのだ。
以上から,FがBに対して請求できる金額は400万円となる。
2【CF間の攻防(法律関係)について】
①Fとしては,BのみならずCに対しても同じように請求を主張するだろう。「Bに対する請求が認められるのに,なぜCに対しても請求するのだ。セコいにもほどがある。Fは何と野心家で強欲な人間なのか」などと思ってはいけない。今回のケースでは,Fの請求権を確保する手段は出来る限り広く検討する必要があるからだ。また,仮にBに対する上記請求が認められれば,Fとしては目的が達成できるので,それ以上の請求は認められず,Cは,Bとの関係で請求を免れることになろう(BC間という“ヨコのつながり”は,不真正連帯債務というユルい紐帯に類似)。以下,FのCに対する請求の認否を,Cの反論も想定しつつ検討する。
 Fの請求は,Bに対するケースと同様,不当利得返還請求権である。
 一方,Bに対するケースと異なるのは,Cには天然の反撃材料が豊富に揃っているということだ。問題文の事情から,Cが本件パイプの所有権を即時取得できることに問題はないだろう。Cは,この所有権の即時取得をもって,「法律上の原因がある」と反論する。即時取得の趣旨は,前主の権利を信頼して当該動産の占有を開始した者に,終局的かつ原始的に,取引対象たる権利を取得させることで,もって取引の安全を保護することにある。そうすると,即時取得制度による所有権取得には,法律に基づく正当化根拠すなわち「法律上の原因」がある。
 ②Cに即時取得による所有権取得の反論を受けたFは,もはや打つ手がないか・・というと,まだある。本件鋼材が盗品であることに着目すると,即時取得に対抗する手段としての193条が浮上する。ただ,前述の通り,本件鋼材→本件パイプ→不動産に「付合」という変化が認められるので,本件鋼材そのものの返還は無理である。そこで,193条を根拠に,Fは,Cに対して本件パイプという「物の回復」に代えて本件鋼材の時価相当額400万円の返還を求めることになるだろう。
 しかし・・それでもなお,FはCに反論されてしまう(Cは天然の反撃材料をもっているがゆえ,かなりしぶといのだ)。Cは,本件パイプを無償で手に入れたわけではない。専門業者Bとの市場取引により,対価を支払って手に入れたのだ。問題文によれば,CはBに600万円を支払っているが,このうち本件パイプの価格は500万円である。Cとしては,Fに対し,「本件鋼材の代金を貴様に支払ってやってもいいが,その代わり貴様は,余がBに支払った本件パイプの価格500万円を返し給え」と194条を根拠に反論するだろう。Fとしては,「黙れ小童(こわっぱ),本件鋼材は400万円だ」と言いたいところだが,Cは,本件鋼材ではなく,あくまで本件パイプを取引対象とし,これに対価を支払っているので,Fが返還すべき金額は500万円である(なお,本稿では触れていないが,設問1で検討する事項がここで活用できる。取付工事代金の内訳を見ると,外形的には請負契約だが,実質的には,内訳の8割強を占める本件パイプ自体の価値移転すなわち本件パイプを目的物とする売買契約と評価できる点である)。
 そうなると,Fとしては,Cに請求することでかえってCに余計に100万円を支払わねばならないから,事実上Cに対する本件鋼材の時価400万円の回復請求を断念せざるをえないだろう。Fは,Cの前では退却を余儀なくされる。
以上から,FのCに対する請求は認められないことになる。
 本問で登場する論点自体はごくスタンダードなものばかりである。しかし,これらが複合的に絡み合っているので,一つ一つ地道に戦況を整理し分析することが求められる。また,金額が動産の形態に応じ,細かく区分された形で登場するので,これらに着目しながら請求金額を決定することも大切である。 
 なお,本件パイプの金額(500万円)に関し,Fは500万円を請求することができない一方,Cは500万円を請求することができる。この両者の違いは何を根拠とするのだろうか。本問で問われている事項ではないが,CとFの対比という観点から考えてみるのも面白いだろう。こうした本試験問題固有の対比構造の妙や面白さを知ることも大切だ。「論文の過去問まではまだちょっと・・」という方も,少しずつで充分なので,ぜひ実際の本試験問題(特に論文式試験問題である)を試行錯誤しながら検討し,その面白さを体感していただきたい。ちなみに平成27年度司法試験論文式試験民事系第1問(民法)で,本問と類似する問題が出題されている。


▼法務省主催の司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!今日の話は、野球だけではない。司法試験・予備試験だって、同じだ。それについて、考え方は示そう。
(1)受験(法学)を愛する。
(2)「合格の神様」に愛されよう。
(3)そのために、
①一生懸命、勉強する。
②社会貢献(小リッチを含む)をしよう。
③関係者に、感謝する。
この3点を実行すれば、スムーズに合格ロードを突き進むことができよう。
さあ!暑さが、増してきた。猛暑に負けない。面白い心をもって、“爆勉”しよう!行け!絶対合格!!
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