商法

商法ドリルNo.12[解答編]


【設問➀】
単元株制度に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア.発行済株式の総数が20万株である会社の単元株式数は,1000を超えることはできない。
イ.株主は,単元未満株式について,定款に定めがある場合に限り,株主総会において議決権を行使することができる。
ウ.株主は,単元未満株式について,定款に定めがある場合に限り,会社に対してその買取りを請求することができる。
エ.取締役会設置会社でない会社において,単元株式数を減少するには,株主総会の決議が必要である。
オ.種類株式発行会社においては,単元株式数は,株式の種類ごとに定めなければならない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ

【設問②】
単元株に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア. 単元株制度を廃止する旨の定款変更は,株主総会決議によらないで行うことができる。 イ. 株主は,単元未満株式について,議決権を行使することはできないが,株主提案権を行使することはできる。
ウ. 株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対してその買取りを 請求することができる。
エ. 株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対して自己が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式の売渡しを請求することができる。
オ. 種類株式発行会社において単元株制度を採用するときは,各種類株式に係る単元株式数は, 同じ数でなければならない。
1. ア ウ 2. ア エ 3. イ エ 4. イ オ 5. ウ オ

【設問③】
株式会社の資本金に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは, 後記1から5までのうちどれか。
ア.資本金の額は,会社の財産の増減と連動して増減する。
イ.資本金は,貸借対照表において,資産の部に計上される。
ウ.募集株式の発行に際して,株主となる者が会社に対して払込み又は給付をした財産の額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないときは,資本金として計上しない額は,利益準備金として計上しなければならない。
エ.自己株式の処分により,資本金の額は増加しない。
オ.資本金の額の減少は,債権者異議手続が終了していないときは,その効力を生じない。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

【解答】
正しい組合せは2(アオの組み合わせ)である。
どのような視点で正答を導けば行くべきか,一つの方法・視点を述べたい。
(1)アについては「原則として判断回避」
まずアだ。単元株式数について問う記述だが,一見して「よく分からない」というのが素直な印象だろう。
単元株式数については,会社法ではなく法務省令の規定に委ねられている(会社法188条2項)。しかし,法務省令まで知識として正確に押さえている人はほとんどいないであろうし,出題者側も法務省令までカバーすることまで求めていないだろう。
このような「一見して分かり難い」記述がトップに置かれているのは,出題者が受験者の冷静な判断力や記述毎の難易度を相対的に把握する力を試すためなのかも知れない。また,こうした難しい(細かい知識を問う)記述を最初に置くことは本試験問題でしばしば見られるが,「難しい・細かい記述」は,迷わず正誤判断を回避すべきだ。後述するようにアが分からなくとも,イ~オ(特にイウエ)から無理なく解答できる。もちろんイウエを判断するためには,単元株制度について基本的知識を備えていることが前提である。
(2)イについては「単元株」の定義から
イについてはどうか。単元未満株主は,定款に定めがあれば議決権を行使することが可能なのだろうか。一見すると,可能であるかに見える。定款自治の原則からすれば,単元未満株主に自由な権利行使を認めることに問題はなさそうだからだ。
しかし,単元株とは,「一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式」である(会社法2条20号,188条1項)。すなわち「一定の数(一単元)」に満たない株式である「単元未満株」では,そもそも「単元株」の定義に適合しない。たとえ定款自治の原則があるからといって,会社法が定めた定義を定款で自由に変容することはできないだろう。そのため,「単元未満株」については,定款によっても議決権行使を認めることは不可能なのだ。
以上のように,イを正しく判断するためには,「単元株」の定義を押さえていることが必要だ。
(3)ウやエは,「単元株制度と株主の利益の関係」から
ウの内容は,イのフォローともいうべき内容だ。単元株制度は,単元未満株主にとっては,権利行使を制限する制度である。そのため,単元未満株主の不利益を解消するためのフォロー制度として,ウのような買取請求権が認められるべきだろう。
以上については,具体的な条文を知らなくとも無理なく推測できるのではないか。もっとも,推測ができるからといって条文を押さえなくていいというわけではない。日頃から,条文チェックを怠らないことだ。
エについても,同様である。単元株式制度は,株主になろうとする者や単元未満株主にとって障害事由が多いので,できる限り早々に解消してもらいたいものだ。そのため,単元株式数を減少するにあたっては,厳格な株主総会決議ではなく取締役の決定(取締役会設置会社であれば,取締役会決議)によるべきだろう・・と推測できる。もっとも,以上の推測はあくまで雑駁なものだ。厳密には,単元株式数を減少あるいは単元株制度自体を廃止するためには,定款変更の手続が必要なのだ。定款変更については,本来は株主総会特別決議が必要となるが(会社法466条・309条1項11号),単元株式数の減少や単元株制度自体の廃止のための定款変更については取締役の決定(取締役会設置会社であれば取締会決議)で足りる(会社法195条1項)。原則論や正確な手続については,条文を参照しておこう。
(4)オについては「種類株式発行会社」から
オについては,イ~エとやや毛色が異なるが,「種類株式発行会社」(会社法2条13号)であれば,単元株式についても種類株式制度を反映させるべきだろう。
以上,イ~エの正誤判断は難しくない。アの判断を回避しても正解を出すことが可能なのだ。とはいえ,イ~エで述べたように,「単元株」が株主になろうとする者や株主の権利行使にとって好ましくない状況をもたらすことを意識すると,アのいうように単元株数には上限が設けられているだろうと推測できる。
単元株制度について基本的な知識・視点があれば,アの正誤(もちろんイ~オと比較すれば判断の優先順位は下がるが)を判断することも決して不可能ではない。

【設問②】
単元株に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
ア. 単元株制度を廃止する旨の定款変更は,株主総会決議によらないで行うことができる。 イ. 株主は,単元未満株式について,議決権を行使することはできないが,株主提案権を行使することはできる。
ウ. 株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対してその買取りを 請求することができる。
エ. 株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対して自己が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式の売渡しを請求することができる。
オ. 種類株式発行会社において単元株制度を採用するときは,各種類株式に係る単元株式数は, 同じ数でなければならない。
1. ア ウ 2. ア エ 3. イ エ 4. イ オ 5. ウ オ

【解答】
正しい組み合わせは,2である。
正解を導くために必要な知識や視点は,【設問➀】で述べたことと同様である。イで「株主定款権の許否」が問われているが,単元未満株主には議決権行使が認められないことからすれば,議決権行使の前提である株主提案権(会社法303条1項)が認められないことが分かる。
ただ,本問では【設問➀】で触れなかった単元未満株主の売渡請求(記述ウ)が登場しているので,単元未満株主の買取請求と比較する形で押さえておこう。
例えば,請求権者の違いである。単元未満株主の買取請求(会社法192条1項)は,「単元未満株主が株式会社に対して行う請求」である。これに対して単元未満株主の売渡請求(会社法194条1項)は,「株式会社が単元未満株主に対して行う請求」である。
また,請求における定款の要否も異なる。単元未満株主の買取請求においては,それが可能な旨の定款は不要である。これに対して単元未満株主の売渡請求においては,それが可能な旨を定款で定める必要がある(会社法194条1項)。
なお,単元未満株主の売渡請求の手続については,単元未満株主の買取請求に関する手続が準用されているため(会社法194条4項),両者はその手続において共通する点もある。

【設問③】
株式会社の資本金に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは, 後記1から5までのうちどれか。
ア.資本金の額は,会社の財産の増減と連動して増減する。
イ.資本金は,貸借対照表において,資産の部に計上される。
ウ.募集株式の発行に際して,株主となる者が会社に対して払込み又は給付をした財産の額の2分の1を超えない額を資本金として計上しないときは,資本金として計上しない額は,利益準備金として計上しなければならない。
エ.自己株式の処分により,資本金の額は増加しない。
オ.資本金の額の減少は,債権者異議手続が終了していないときは,その効力を生じない。 1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

【解答】
正しい組み合わせは,5(エオ)である。
アについては,「資本金の額」の定義である「会社財産を確保するための一定の計算上の数額」(会社法445条1項によれば,「別段の定めがある場合を除き,設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額」である。)からすれば,資本金の額が「会社財産の増減と連動する」とはいえないことが分かる。
イについては,細かいのでパス。
ウについては,やや難しいが会社法445条3項と4項の区別が出来れば判断可能だ。
ウは,「資本金として計上しない額」を「利益準備金として計上しなければならない」とあるが,正確には「資本準備金として計上しなければならない」のである。具体的には以下の通りだ。
会社の設立又は株式発行に際して行われる「払込み又は給付に係る額」のうち「二分の一を超えない額」については,「資本金として計上しないことができる」(445条2項)。さらに「資本金として計上しないこととした額」については,「資本準備金として計上しなければならない」のである(445条3項)。
これに対して,「利益準備金(又は資本準備金)として計上しなければならない」のは,「剰余金の配当をする場合」である(445条4項)。
以上のように,「資本準備金として計上しなければならない」場合と「利益準備金(又は資本準備金)として計上しなければならない」場合とをきちんと区別して押さえておこう。
エについては,上述のアの知識を使えば充分判断可能だ。ここでも資本金の定義が重要ということだ。
オにおける「資本金減少」は,債権者の債権回収に支障を来す等の状況が生じうることを考えると,「債権者意義手続が終了するまで効力を生じない」というべきだろう。

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