民法

【事例式演習②】解答編/環昌一の言葉(2)


 司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!社会には、いわゆる強者と弱者がいる。しかし、強者だけではこの社会で生きていけない。弱者だけでも同じことがいえる。人びとが、うまく調和してこそこの世界がうまくいく。日本も同じことだ。この点に関係して、環昌一元最高裁判事は、コメントしている。

<環昌一の言葉(2)>
「日本社会は、能力者や強者だけで、成り立っているのではない。建築作業員、宅配のお兄ちゃんやスーパー・レジのおばさんたちほか、現場の人たちによって、支えられている」

▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!環最高裁判事は、津地鎮祭事件では、反対意見、チャタレイ事件では弁護人などで活躍した。物事の本質をさぐり、筋を通す法曹であった。世の中は、強い者、多数者だけでは、動かないところがある。若い人は、その辺のところをよく考慮してもらいたい。
 では、昨日の答えを示します。


民法No.60【事例式演習②】解答編
1 RのKに対する甲小説(以下、甲とする)を取り戻すための主張は、所有権(206条)に基づく返還請求権としての甲引渡請求権(202条1項・200条1項)と構成できる。この構成の根拠は、GがKとの間で締結した売買契約(555条)は無効なので、Kに甲の所有権が移転する(176条)ことはないことによる。
Rは、Gとの間で甲をKに売却するという「法律行為」を委任する契約を締結した(643条)。後にRは、甲を売るのをやめ、この委任契約を解除した。委任契約は、特段の理由なく解除可能なので、翻意による解除も可能である(651条1項)。
この解除により、GR間の委任契約は消滅するので、これに伴いGに付与されたRを本人とする甲売却の代理権も消滅する(111条2項)。そのため、GがKと締結した甲売買契約は、「代理権を有しない」Gによる「契約」である。「本人」Rによる追認はないので、同契約は、Rに「効力を生じない」(113条1項)。
しかし、Kとしては、Gの「代理権の消滅」について「善意」かつ無「過失」であることを根拠に、Rの主張はKに「対抗できない」(112条本文)と反論する。
委任状はGの手元に残存したままであり、R自らこれを破棄するなどして有効な代理権が存在しているかの外見を除去しなかった。さらに、Kは旧知のRとこれまで何度か書籍の取引をしているので、今回も有効な取引であると信ずることに無理はない。
したがって、Kは、Aの「代理権の消滅」について「善意」かつ無「過失」であった。
よって、Rは委任契約を解除したことを根拠に、Kに対し甲の引渡を請求することができない。
2 以上のように、Rは、Kに対し、Gの「代理権の消滅」を対抗できない。そのため、Gは、Rから授与された代理権に基づき、RのためにKに対して甲を売却する意思表示(99条1項)をしたことになる。
そこで、Rは、真実はゲームの購入資金獲得を目論んでいたGに、借金返済のための金が必要であると「詐欺」されたことにより、Kへの甲売却の「意思表示」をしたとして(96条1項)、Kとの甲売買契約を取り消す意思表示を、Kを「相手方」として行う(120条2項、123条)。これにより、同売買契約は遡及的に効力を失うことを理由に(121条本文)、Kに対し甲の引渡しを請求する。
 しかし、このRの請求は認められない。
RによるKを「相手方」とする甲売却の「意思表示」は、KR間で効力を生ずる甲売買契約にとって「第三者」である代理人GがRに「詐欺を行った」ことにより誘発された。しかし、Kは、AB間の詐欺の「事実」を「知っていた」とはいえない。GK親子間の事情は、家庭の内部事情ゆえ、家庭外のKにとって極めて可視性に乏しいからである。
そのため、96条2項により、RはKに対する意思表示を取り消すことができない。 
3 以上から、RのKに対する甲引渡請求は認められないので、RはKから甲を取り戻すことができない。(以上、1180文字)
[留意事項] 
Rは、Kに対し、委任契約の撤回(解除)を、「対抗」することができないとすると、GのKに対するRのためにする意思表示は一応有効にRに帰属する。そこで、Rとしては詐欺による取消しを主張し、効力帰属を否定するため、上記「解答編」では、詐欺取消の可否を検討している。
詐欺取消の構成を採る場合、96条3項により、Kを保護する構成もある。また、109条類推適用による構成もある。ただ、この構成を取ると、先に述べた表見代理の構成と同じになり、議論の実益が乏しいので、上記「解答編」では、96条2項構成を採用した。
【合格の道標】No.28
 短答式試験において、合格点を獲得するためには、その問題において該当する条文やその文言に関する知識が必要である。問題を見たときに、該当する条文や文言を瞬時に想起できるよう、条文に強くなるべきだろう。そのためには、日頃の過去問演習の時から、常に条文を座右に置いて検索・参照し、条文を活用しながら問題を解く習慣を身に付けることが大切だ。こうした習慣をきちんと身に付けておけば、論文式試験でも役に立つだろう。論文式試験では、しばしば条文操作が求められる問題が出題される。条文を確実に検索できる力を付けておけば、出題者側が求める条文を、的確に指摘することが可能となる。
 また、条文を参照する際、ただ条文やその文言を機械的に覚えるのではなく、条文の趣旨や具体例を考えてみることも大切だ。こうすることで、条文に関する知識も定着しやすくなるからである。また、条文知識を強化する目的は、具体的な事案を解決するためのツールを獲得することにあるのだから、目の前の(過去問等の)問題の事例から離れず、条文のどの文言が問題となり、どう解決・活用するのかを学ぶことも重点的に行おう。


▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!別の高名な裁判官とわしの合作の言葉にこういうものがある。「受験中は、通説に従い、合格後は通説を疑う」。この点は、環先生とよく似た考え方である。
▼司法試験・予備試験の合格を、決める君よ!大に惑わされず、力におもねない。そんな君も、立派な人間だ。さあ!今日も“スコーン”と“爆勉”しよう!行け!絶対合格!!
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